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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第三章 ミシェール
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第六十話 翼を抜かれた鳥

そこには、奴がいた。

憎むべき相手。

愛すべき人質。

俺は手を伸ばす…が、今ひとつのところで手が届かない。

離れていく二人…。


「まってくれ・・・ノエル・・・ノエル!」


俺は絶望する。

闇に飲まれた二人を…俺は…止められなかったのだから。


「くそぉおおおお!」


俺は、起き上がる。

そこは…薄暗い場所であった。

まだ目が慣れてないのか、見えるものは窓辺と思える所から月光が部屋を照らしているぐらいか。


「俺は…何を・・・」


そうだ…俺は…。

ゆっくりと思考する。

考えた…考え、考え抜いて…そして、わかった。


「俺は…負けたんだよな…」


そして、ノエルと同じく力を失った…。

シフォンたちともはぐれ…。


一人、ここへと連れてこられた。


「気がついたのね、旅人さん」


そこへ、扉を開けてこの部屋に入ってきた人影。

声からして女性のようだが


「…あんたが、俺をここへ?なんでだ」


ここは敵地。

敵である俺は歓迎される事はないはずなんだ。

骸の翼を背中に、マントを羽織ったその人は、月明かりに照らされ、

窓辺から入る風で髪を揺らしているようだ。

そして、じょじょに窓に近づいていき、


「気まぐれ…といえばうそになるけど…あんた、フォーミルからきたんでしょ?なら、味方ね」


「は?何言って…」


俺は、そこで気がつく…。


「私の名前は、クリス・チャル…あなたの所にいるシェイノの従姉妹よ」


手首に巻かれた重そうな鎖。

未だ錆を知らぬそれは、月明かりで不気味に輝いている。


「…じゃあ、ここは…」


「ええ、シェイノの実家と言えるかしら?」



--- 数時間前 ---


俺たちはガレーを出た。

そう、ヴィアーチェを目指すためだ。

俺たちが丁度ガレーを出た頃には、既にミシェールと改名していた事、

それと戦線準備をしていると気がつかぬままだった。


俺たちは海路に出る。

船を用意し、それに乗り込み、海の先…ヴィアーチェを目指した。


「なあ、ロシル…お前、確か3年分強くなったんだよな?3年経った時…お前は魔術師になったのか?」


シフォンはたずねる。

…魔術師の後継という事は、その師であるノエルは絶命したという事となるわけだ。

それが、魔術師の後を継ぐという事である。

だからこそ、魔術師は二人も存在しない。


それが不安なんだろう…けど


「俺は、魔術師になれなかった…3年後、俺はノエルからの継承を得ることなく、術者となった…

現実、俺の力は魔術師に及ばぬ魔術師だ」


俺はそう言う。

すると、シフォンは俯きつつ、だが、うれしそうに

「そうか…」と呟いた。

安堵のため息すらこぼれているのだから、次の言葉が見つからない。


「とりあえず、俺たちはヴィアーチェを目指すんだよな?それなら、提案がある」


そこに、ガリッツが入ってくる。

船の大きさは全長150mぐらいの大きさで、運転手はガレーのロボだ。

自動運転オートマチックらしい。

座席が10席ほどある部屋の中に、俺たちはいた。

もう少し広い部屋もあったのだが、シェイノの希望で、こうなった。

そして、シェイノ、俺、シフォン、ガリッツがここに。

イユ、サユ、ムユは外にいた。

敵からの攻撃に備えるために交代での警戒だった。

未開の地とはいえ、こちらは招かれざる客人に他ならない。

ならば、俺たちは敵として認識されてもおかしくはない。


…ガレーの時は、何故か突撃してしまったわけだが。


「観光に来るのには、いい場所かもしれない…けれど、それだけじゃない 確かに軍事力、知名度は戦争を起こすには足りないものもある…けれど、彼らは団結力があるの…統括する王が大層立派だそうよ」


シェイノはガリッツの言葉を遮る様に言った。

彼ら…というのは、おそらく俺たちが行く先の場所の話だろう。

ヴィアーチェ王は、その統括力を生かし、ヴィアーチェを活気ある国として導かせたのだという。

今のフォーミルは、そんなヴィアーチェを見習ってできたそうだ。


「つまり、シェイノが言いたいのはこうだろう?迂闊に手を出すな、と」


ガリッツはそう答えた。

シェイノはそれを聞き、


「それなら何故…?」


おそらくシェイノはガリッツの提案を知っているのだろう。

そして、それをとめようとしている。

俺たち…いや、俺は少なくともわからなかった。

…が、目の前に見たことのあるような光景が…まるで走馬灯のように流れた。


「…シェイノ、俺はガリッツに賛成をする」


シフォンは、そう答える。

シフォンはガリッツを信頼しているようだが…。

そうか、そうだよな


「なら、俺はシェイノに従おう」


俺はシェイノの肩を叩き、そういう。

4人全員で行動すれば…全員敗北する。

なら…という提案だ。


元々シフォンは強襲タイプだ。

そしてガリッツは、参謀に近いだろう。

俺は、強襲タイプとして、

シェイノは奇襲タイプだ。


…それぞれのバランスは十分だった。

もしもの場合の対処に、俺の所にムユを加えれば十分だろう。


「…わかった…それじゃあ、それでいこう」


提案を中止され、少し不機嫌な様子のガリッツ。

そして俺はグラムを取り出す。

シフォンも同じく、バルディッシュを構える。


「来たか…歓迎会でもおっぱじめるのかね!」


「誰の歓迎だよ、さあ行くぞ!」


そして、二人は外へ歩んだ。

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