第五十九話 リーン
俺と手を組む・・・か。
「残念だが、それには及ばない」
俺は手をかざす。
自分についた花を千切る。
「俺に、幻惑で勝とうなんて、思わないことだ」
俺は睨む。
すると、固有結界にひびが入る。
「なに・・・!?」
「次元蛇穴は、相手の魔力を奪う・・・そして、次元琥牢は、固有結界を無効化にする・・・お前の魔力は、気づかぬ内に0に近づいているんだ」
その場に、オーヴィルは膝をついて倒れる。
魔力の限界は、体の限界だ。
「終わりだ」
パリリン・・・
寂しく響く固有結界の破れる音。
そして、オーヴィルの体には黒蛇が。
ロシルの横に白虎がいた。
「くっ…一体…何が・・・」
そこに、倒れていたシフォンが体を起こす。
「…お前…エドワード…?」
「え?」
シフォンは、目を疑っていた。
圧倒的存在感。
白い靄と黒い靄があり、
その靄が虎と蛇の形をしていた覚えがある…。
シフォンはバルディッシュを構える。
「構えろ…エドワード…リーンの敵討ちに付き合ってもらう」
シフォンは速度をあげて、走る。
それを、ロシルはグラムを振るってバルディッシュを弾くが、
シフォンの見えない武器によって、自身の頬に傷を負う。
「おい、シフォン、やめろ!」
「うるさい!お前が…お前があの時、リーンを見捨てなかったら…!」
見えない武器が、どんどんロシルの体を傷つけていく。
ロシルは、呪文を自分にかける。
「シフォン、もう…やめてくれ」
「黙れ!この…人殺し野郎がぁあああああぁああああぁぁあああ!」
シフォンの顔には、水滴が散らばっていた。
自分にかけた呪文は、"ペーグ"という相手の攻撃動作を読み取って強制的に回避動作を取る呪文。
シフォンを傷つけたくはない。
「俺は、エドワードじゃない」
そういうが、シフォンは聞かず、見えない武器を振るう。
俺は”ペーグ”の影響を受けて全てかわす。
「うそだ!性懲りもなく、同じ言葉を繰り返すのか!」
シフォンの攻撃は止まない。
俺は次の攻撃動作を予測し、”ペーグ”を解き、そして攻撃を受けた。
「いい加減にしろ…シフォン!俺は、俺はロシルだ!」
「ロ…シル…?…ハッ」
シフォンは俺から離れる。
距離を取る様にして、俺をじっと見ると、すぐに謝ってきた。
「…すまない」
「いいさ」
俺は、シフォンのいうリーン…リーン=ノイスクランチを知っている。
シフォンの姉だ。
そして、エドワードが見捨てたという話…。
それは、今から数年前…ノエルが投影武装を奪われた時の話…
エドワード、ノエル、シフォンが最初にして最後のミッションをしていたときのことだ。