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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第三章 ミシェール
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第五十八話 未熟な魔術師

ここは…牢屋…?

私は何を…


カチャリ。


「!?」


私は…拘束されていた…。

手首に巻かれた手錠が、私を壁に縛り付けているようだ。


「…あ…っ…」


口を開き、言葉を出そうとするが、喉元にひどい激痛が走り、声が出なかった。

どうやら、ひどく喉元をやられたらしい…。

記憶の損失が激しい。

特に思い出すべき事が思い出せない…。

どうして、ここにいる?

そして…私は…何故、こんなに拘束を受けている?


そんな時、暗闇からポタンポタンという水音が響いた。

…どうやら、外からのようだ。

水漏れ…?いや、そう考えるか、貯水槽が近くにあるか…。

貯水槽があるのなら、ここには誰かが住んでいるのか。

それも、何かの施設?

考えろ…考えるんだ…。

何も考えないよりかは、こうやって連鎖して呟いていき、閃くしか、できる事がないんだ。


『どうだ、調子は』


突然、響く声。

どうやら、スピーカーから流れたものらしい。


「…ぁ…く…」


最悪だわ。

そう、言おうとした。

ここは、どこ?

とも言おうとしたが、声が出ない。


『…そうか、まだ声が出ないか…だとしたら、こちらとしては好都合だ、ノエル=フォート…お前を、我が国、ニホン国へ招待する』


ニホン国…?

…聞いたことがないわ。


『何れにせよ、君に決定権はない、全ては俺に委ねてもらおう…さもなくば、ロシル=フォートを殺すまでだ』


ロ・・・シ・・ル・・・?

ロシル…ロ・・・シ・・・ル!


「ッ!め…てぇぇ!」


枯れた声が漏れる。

もはや、言葉にすらなっていない。


『慌てるな、君が俺に従えばいいだけの事だ』


…私は皮肉に思った。

自分の魔術師という仕事柄、こういう雇われ業しかできない事を。

辛く思った事はなかった、が…悲しみがにじみ出ていた。


『では、また』


そういうと、プツという小さな音を立てて、スピーカーから音が消えた。

そして、まだ静寂が訪れた。

水の音。

しずく…。

…今なら、呪文を使って抜け出せる…。

水があれば、水の呪文でどうにかできる…。

ただ、そうすればロシルが…。

私は、体を動かすのを、自らやめた。


私は…甘い…。

まだまだ…未熟だわ…。

未熟な…魔術師だわ…。



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