第五十六話 オーヴィル
「蛇が虎に勝てると思ったのか…残念だったな」
「く…そ…」
虎と名乗る一人の少女…。
蛇は…その少女一人に倒された。
力及ばず、嘆きも響くことなく…。
蛇にとっては、虎はその腕力が恐ろしくみえたのだろう。
そう…その少女は…
目には、紅き輝きが見られた。
---ヴィアーチェ---
さて…と、そろそろそろったか…
「いよいよ…だな」
「ああ…これで、すべてがそろった…今より、我が国ヴィアーチェはミシェールと改名し…世界を敵にする!」
「おおおおお!」
そこにいたのは、男ではない。
女たちだ。
男は一切なく、そこには女だけが住み着いていた。
ヴィアーチェという国には、元々女性が多かったが、その分男性の負担が多く、
男性はすぐにどこかへ逃げた。
…そう、ヴィアーチェは元々から女尊男卑の国だったのだ。
今、そこにいて、支持を受けている女性は、大いに喜び、そして歓声に胸を大きく揺らした。
そう、戦いは…まだ、始まったにすぎない。
今、ここに第二次四か島戦争が始まろうとしている。
それは、誰もが思っていた事。
エドワードが消え、そして全てのバランスが崩れ…。
結果として、エドワードについていた者たちとそうでない者たちで別れ、
結果として…結果として、生まれた世界なのだ。
「エド、私は…あなたを継ぐ者となる…全てを…この手に、あなたに捧げましょう」
決意したその女性は大きく右手を掲げた。
---ガレー---
そこには、準備を終えた俺とガリッツがいた。
チョッキを着てから、俺は…
「そこに隠れてるのはわかってる…誰だ」
俺は背後に気配を感じ、そう言い放った。
最初は無言だったが、相手が観念したらしく、姿を現した。
「いやぁ…隠れておこうと思ったんだがねぇ…流石にばれたかぁ…」
その声…そのしぐさ…それを俺は知っている…。
「…なぁ、ロシル…ここに俺がいるって事がどういう事か、もう…わかるよな?」
そこにいたのは…記憶の中にいた、オーヴィルという人物だった。
そいつは俺に加担し、そして後々に裏切る人物だ…。
なんだ…?あいつも俺の事を知っているのか…?
俺自身と出会ったのは、俺ともう一人の俺が融合してからないはずだ。
だとしたら…
「お前…まさか…」
「御名答…未来人だ」