第五十二話 ルビア
体全身に痛みが走る。
この技自体、そんなに多用できるもんでもない。
諸刃の剣とも言ってもいいけれど
「止めた！」
「「こいつ…！俺たちの召喚投影を…！」」
「さぁてぇ…終止だ」
俺の横で、準備をしていたかのような少女二人が、立ち上がり
「炎と風が混じれば」
「時として、炎は風によって大きく舞う」
「我が炎は」
「我が風は」
「「炎神の神風なり！」」
二人の姿が段々と変わってゆく。
いいや…見ている世界が、というべきだろうか。
「固有…」
「結界！」
固有結界『ルビア』
二重固有結界とも言えるそれは、干渉を避けるために、本来の固有結界の上に固有結界を覆うようにつけ、効果を二倍に得るというもの。
この二人の場合、灼熱の業火と風神の暴風を合わせたものだ。
イユちゃんの姿はもうない。
何故なら、ウードの弟の方に攻撃を仕掛けていたからだ。
回転蹴り。
その単調な動きを、イユちゃんがウードの弟の方に行うと
ウードの弟の方はそれを両手をクロスして受ける。
だが、あまりの衝撃なのか、体を少し落として、衝撃を少なくさせようとする。
そこに、スライディングしてかかるイユちゃん。
あの動きは、”目”の効果があるからだろう。
「このウード…負けるわけにはいかない…」
「残念だけど、これで終わりだよ」
スライディングに成功し、ウードの体勢が崩れた所で次の攻撃の動作を行う。
それが
「”左目の風”」
だった。
風の力は、彼女自身に速さを与えた。
そして、加速。
「今、追いつけられる者なんて、いないよ」
超高速で動く彼女に圧倒されるウード。
攻撃動作すらも見切れず、１秒間に１０回以上の打撃を与えられ、
そのスピードによって、通常の倍のダメージが入る打撃ほど恐ろしいものはない。
「ぐは…、兄ぃ…」
「情けない、それでもメリュジーヌの血を継ぐ者か」
そして次に俺の隣で炎を纏った少女が突撃を開始する。
その先には、ウードの兄の方が。
「固有結界内にいる対象は、自分の自由には動けない、さらに言うと、今のあなたたちは、召喚投影によって、かなりの魔力を消費している」
確実に、この勝負…あったな。
「敗因はたった一つ、あんたらは俺らをなめすぎた」
俺たちは…ウードを倒した。
この力があれば…ノエルを…救える。
そう、確信づけてもくれた。
俺はこの力を…
【大いなる情景】と呼ぶこととした。
