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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第一章 フォーミル  オアシス編
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第三十四話 イールグ

「うぉおおおおおおおお!くらえええええええええ!」


俺の手の平から風が荒れ狂う。

俺が、あいつに教わった最初の呪文・・・イールグ。

風を手に纏い、そして、放出。

その威力は、ノエルの出したイールグの数倍の規模だった。


「くっ・・・」


俺は、左腕に右手を置いて、安定させる。

威力がデカすぎて、制御できない。


「ロシル!シェイノは確保した!」


後ろから、シフォンの声が聞こえる。

正面には、ガリッツ・・・。

確かに、あいつの姿は見える・・・。

だけど、なんだ・・・この違和感・・・。


「獅子は、子を先人の谷に突き落とす・・・か、あんたの教えだったよな・・・エドワード」


「!?」


カーン・・・。

カーン・・・カーン・・・。


俺は、イールグを放っていた・・・はずだ。

だが、今・・・一瞬目の前にノイズが走って、鐘の音が鳴ったかと思えば、妙な場所にたどり着いていた。


気がつくと、そこには俺一人。

長々と続くヴァージンロード・・・。

そして、奥には、教会で見るような・・・祭壇。

それに、両サイドにある長イス。

ここは・・・教会・・・?

ステンドガラスからは、月光が降り注ぎ、ヴァージンロードを照らしている。

そして、その照らす先に・・・何か・・・ある。


「・・・行ってみるか」


と、俺は一歩一歩、歩んで行く。

そして、その歩ごとに、声が聞こえてくる。


”お前がいるから!少しはあいつを見習ったらどうだ!”


”クズは、何時まで経ってもクズだよなぁ~?”


”ククク、アッハハハ!バァーカ!お前なんて、誰にも相手にされるかよぉ?”


「クソムカつく言葉ばっかだな・・・罵声しか聞こえてこねぇ・・・」


”ねぇ、君は・・・生きてるんだよ?どうして、死のうとするの?”


”素直になりなよ、スフィアは裏切らない”


「・・・ここは、女性の声がするだけ・・・か」


”王都は、お前に預けてやる、しかし、ここ・・・アビスパラだけは・・・”


”ここは、アルフェグラの領土だ、だが・・・そうだな、お前が望むなら、そうしてやらないでもない”


”な、なら・・・!!!”


「・・・」


俺は、なんとも言えなくなった。

その展開は、どこか予想されたものがあったからだ。

・・・条件要求・・・。

・・・ん、ならここは・・・あのガリッツの記憶の中・・・?


「どうなってやがるんだ・・・この場所は・・・」


「共鳴の地・・・だよ、ロシル」


俺が、疑問に思った事を、誰かが返した。

いや・・・誰か、にしては聞き覚えがある声だった。

・・・そうその声・・・。


「いや、こういうべきかな?僕自身」


「俺!?」


俺は、後ろを振り向く。

そこにいたのは、俺の姿をした・・・男だった。

声も一緒、見た目は、顔は同じで、向こうはボロの布をまとって、中には貴族の服を着込んでいる。

品のある金色のラインが目立つ青の軍服と言っていいだろう。


「おおっと、聞きたいことはあるだろうけど・・・僕には時間がない・・・僕は、君を大急ぎで始末しないといけないからね」


「なんだってん・・・」


俺が言いかけた瞬間、俺の喉元に、10歩程離れていたはずの男が、手を置いて、握っていた。

そして、そのまま持ち上げられる。


「ぐっ・・・ぁ・・・うぅ・・・」


「このまま、握りつぶすよ」


苦しい・・・。

な、なんだ・・・こいつ・・・。

ありえない力・・・持ってやがる・・・。


「くっ・・・そがぁああ!」


「なに!?」


俺は、自分の首を曲げて、こいつの頭に頭突きした。

それにより、ふらついた後、俺は拳を向ける。


「も、もう・・・目覚めつつあるのか・・・こりゃあ・・・ささっと終わらせないと・・・」


「目覚める・・・!?」


カーン・・・。

カーン、カーン・・・。


ドクン・・・。ドクン・・・。


響く・・・。

中から、体内から、何か、響いて・・・直接聞こえる・・・。

心拍音・・・。


「ち、時間か・・・次あったら、お前を・・・倒す」


カーン・・・。


「はっ・・・」


俺は、目覚めた。

そこは、元いた場所・・・アビスパラだった。

それに、イールグが止まり、そして、目の前には誰ひとりとしていない。

いや・・・違う。

ここは、アビスパラじゃない・・・。

俺の知ってるアビスパラは・・・こんなに、栄えてない!


「どこなんだ・・・ここは・・・!」


崩壊した王都・・・。

それが、こんなにも立派に栄えている都市だとすると・・・。


「まさか・・・ここは、過去のアビスパラ・・・なのか・・・?」


「おい、お前!どうしてここにいる!」


不意に俺に対してかどうか知らないが、声がして、俺はそちらを見る。


「・・・?」


俺は、その顔に見覚えがあった。

ガリッツ・・・。

しかし、左腕にあったあの黒い腕はない。

・・・やっぱり・・・ここは・・・。


「アルフェグラ軍・・・総大将・・・エドワード=フォート・・・!!!」


「はっ!?」


俺は、ガリッツに、そう言われた。

・・・え?エドワード・・・フォート・・・?

お、おいおいおい!間違えられてんぞ!?

過去の世界?それとも、別世界?

突如としてまったく別のアビスパラに来てしまったロシル。

エドワードと間違えられてしまった彼の末路は!?


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