第三話 呪文
勝手に命名された名前…ロシル、ロシル=フォート…。
なんでも、英雄の名前らしい。
って、なんか俺勇者フラグ立ってないか?
「俺は、ソイル=ネードだ、んでこっちは本屋ノブ子」
「…とりあえず、ロシルでいい、ノエル…それで、魔術師ってのは…何するんだ?」
俺は、そこが疑問だった。
特に注目するべき点。
「お嬢、もしかして…」
「フフ、そうよ彼は見習い…。ロシル、あなたがその魔術師を疑問に思うのも無理はないわ…」
いや、無理ないってか、ほぼ無理やりだったわけだが…。
「とりあえず、あなたは今後からここにいること」
「なんでだ」
「魔術師は、危ないのよ」
「魔術師というのは、この世にあるという100の呪文を、全て得たものをいうの、まず第一に、魔術師は、誰にでもなれる」
「誰にでも?」
「ええ、私がなれないこともないわ」
と、本屋さんが言う。
グルグルメガネが目立つ。
「魔術師は、基礎である呪文を意のままに操る事ができるために、呪文を言葉にできないとダメなの」
「というと?さっきの奴か、ノエル」
「ええ、まあ…あれは手の平で作り上げた風を方向を示して突風にする呪文ね、あれは言葉として成り立たない」
「言葉として成り立たない…?」
「ええ、そうよ」
これから、少し話が長く続いたので、要約する。
魔術師は、`呪文`というものを、自分に取り入れる事で、一つの呪文を扱うことができる。
そして、それらは、また100個あり、それらすべてを集めた者を魔術師とすることが、国家で決められている。
らしい。
まあ、それはそれでいいとして、世界の構成についても、詳しくといた。
それについては、地図を見せられて説明された。
…知っているはずの島はない。
四つの島がその地図にはあった。
そして、それら四つの島の二番目ぐらいに大きな島をノエルは指をさして
これが、私たちのいる、フォーミル島よ
といった。
…なるほど、これが…。
F.M.islandと書かれたその島。
それから…魔術回路についても教えられた。
魔術回路とは、呪文を使う回数。
それがなくなると…死ぬ。
「なるほどなぁ、大体わかった」
「あ、それとお水を頂戴、ノブ子」
「ええ、はいロシルくん」
と言って、ノエルは、玉座に座り、俺はそこら辺のイスに座り、
手渡されたグラスを受け取る。
ノエルもまた同じようなグラスを渡される。
「ごくっごくっ…ぷはっ…フフ、それで…ロシル、魔術師の弟子になる気はある?」
「ごくっ…ふぅ、またその話か…もう、あれだけ話されたんだ、それは呑むよ」
互いに向き合い、そして俺はそれを了承した。
無論、断ってもよかった。
だが、もう空気の流れが、俺に同意を求めていたのだ。
まあ、別によかった。
部屋を見渡す。
銃の整理をしているソイル。
ノエルから飲み干したから、もう一杯と言われ、はいはいと言ってそのグラスを受け取る本屋さん。
そして、天井につるされたシャンデリアが、キラキラとして綺麗だ。
だが、明かりはそれだけしかなく、周りを見ると、端は少し薄暗い。
…でも、どうしてだろうか、この光から、少し…不穏な物を感じた。
「そう、じゃあ右手を出して」
「こう…か?」
俺は、頬に片手を置いてバランスを取る彼女に、右を差しだした。
「そうそう、じゃあ、やるね」
そういって、彼女は、頬をついてた方とは別の手を俺の右手のすぐ上に出して、文字通りパーで、俺の手に重ねた。
すると、急に火でもついたかのように、俺は焼けるほどの痛みというよりも、刺激に近い物を感じた。
「ぁつっ」
「だめ、手を離したら、魔術回路が壊れちゃう」
「な、何をしている…んだ?」
俺は、熱さに耐えつつ、彼女の柔らかい肌の感触を味わう事もなく、そう尋ねた。
すると、彼女は、こう答えた。
「魔術回路を、開くの」
それが…こんな…。手のひらから感じていた熱が、やがて体に蔓延してきていた。
俺は、段々とその熱さに耐えつつあった。
どうやら、少し慣れてきたらしい。
「…おし、そろそろいいかな」
「もう、大丈夫…なのか?」
「ええ、手を離して…そして、こう唱えて‘ノス‘と」
…‘ノス‘