第二十九話 ガリッツ
「ボクも行く」
彼女、シェイノは、そういい、左目の黄金の輝きを、持っていた包帯で隠した。
そう、戦闘中に気がつかなかったのだが、彼女はオッドアイという分類だ。
片目が別の色…彼女の場合、右目は赤く、左目が黄色い。
垂れた濃い青色の前髪を手で払い、俺たちにちかづ・・・かない。
その場に動こうとして止まり、少し身を自分の手で守っているように見える体勢に変える。
…威嚇するぐらいなら、そんな事言わなくてもいいのにな
「…しかし、だな…」
というか、意図はなんだ。
俺たちのこんな旅に付き合うと言い出した彼女は、ラグナが言っていたが罪人らしい。
そんな人物が…こんなもんに付き合うとしたら…。
「待て、これは王の指示か」
先に口を開いたのは、シフォンの方だった。
彼は、持ち前のオールバックを整えると、シェイノに向け、目を細めた。
「…ラグナには借りがある、けれど、これは暇つぶしなだけだ」
暇つぶし…ねぇ…。
まあ、確かに罪人シェイノを野放しにしていれば、多少民衆からの目が怪しくもなるだろう。
そう考えると、街から出た方がいいのかもしれない。
俺は、そう考えて、もらったベレッタをもう一度確認し、そしてこういった。
「…なら、行こう いざオアシスへ」
城下町の裏通りから出て、俺たち三人は、砂漠のある、アビスパラというフォーミル島西部へと目指した。
アビスパラは、フォーミル島唯一と言っていいほどの熱帯だ。
…その理由は、魔物が草地を滅ぼしたということかららしい…。
「昔な、この辺には…ガリッツっていう化け物がいてな…そいつは恐ろしく強くて、誰にも手に負えなかった…そんな時だ、ここにエドワードっていう今にいう英雄さまが、その化け物を倒した…とされている」
…昔話っていう感じじゃないな…。
エドワードっていう名前は、いつもどこでも出てくるせいで、聞きなれてしまったが、その正体は魔術師だったり、魔導師だったり…そして、それらは全ての上を行くという。
「ほんと、何もんなんだよ…その英雄さまは…」
「エドワード伝説…か、エドワードがそう思われたのは、つい最近のことだよ」
シェイノが口を開いた。
てか、見た目は可憐なか弱い女の子を気取っているくせして、しゃべり方は、上から目線って…。
ギャップ差感じるなぁ…。
「最近のこと・・・?」
俺は、疑問に思ったことをそのまま口にする。
…というか、このシェイノという少女のこの外見と口調以外、ほとんど詳しくない俺は、こいつを信頼しきっているわけではないが、旅に同行させているわけで…。
「うん、エドワード=フォート…彼は、その名を英雄の名としたのはのちの事…それまでは、あいつは身を案じて魔術師並びに、王都の使者と呼ばれた…厭離穢土の思考を持った正義を貫こうとする無謀な輩でもあった…」
「エドワードについて、詳しくは知らないが、今までに聞くエドワードの印象とはまったく違うものだな…して、エドワードって奴は、ノエルに呪文を渡して、今どうしているんだよ」
そうだ、そういえば…エドワードについて…あいつはどこにいるんだよ。
「あいつは…冥府だ」
その一言を発した後、俺たちは…その冥府へ行った英雄…エドワードが、名を遺した場所の一つ、アビスパラに辿りついた。
…続く。