裏第三話 機甲隊
------ツィツェル-------
「我が軍に宣戦布告との連絡が入ったそうだな」
「ええ、どうやら…アルフェグラが動いたようです」
そこには、研究員がいる。
人造人間に命令を下す者もいれば、それを作る者もいると言っていいだろう。
彼らは、ここで生まれたわけではない。
元を辿れば、拉致してきた子供たちだ。
それが、今の代まで引き継がれると、やがて子供たちは研究員、あるいは人造人間として肉体改造を施されては戦線へと出される。
人造人間とは、人の情を捨てさせたロボット人間のようなものだ。
普通、人間は本来の力を発揮できてはいない。
その力を発揮させるためには、彼らを…改造し、機械化するのだ。
そして、戦線に出た彼らに付けられた名前は…
「機甲隊を用意しろ」
「ハッ!」
機械型甲殻部隊、略称機甲隊。
そう名付けられた時、初めに肉体改造される以前に拒絶を始める。
なぜなら…人として"死ぬ"のだ。
転生…と言えばよいか、その類である。
転生を終えた者たちは次々と戦線へ出る。
戦線へ出た結果、中には滅ぶものもいる。
機械ならば、修理せねばなるまい。
しかし、機甲隊は違う。機甲隊は、その肉体の心臓部に埋め込められたマイクロチップを抜かれて焼却炉へ流される。
つまりは、処分されるのだ。
滅んだ肉体を直さず、肉体改造時に行うDNA採取によって、子を母体に孕ませる。
そして生まれた子は、血を抜かれ、DNAの検査をされ、また知能を図られる。
この時、子には二つの道が選ばれる。
一つは研究員という道。
一つは機甲隊という道。
これらに戦線に出ないという選択はなく、研究員であろうとも、戦線の中に放り込まれる事も多々あるため、戦場では戦闘員である機甲隊の方が、身の安全を確保できるといえよう。
つまり、ここでは人とはほとんどが無意味に近いのだ。
「ああ、そういえば…だ、あの親子はどうなっている?」
緑のフードを被った若者はそういった。
「…トライアングルアイズの子…ですか」
対して、黒いフードを被った若者がそう返した。
「ええ、順調に育っているそうですよ、ただ…調整は難しいかと」
「そうか」
黒いフードの若者は、少し戸惑う。
何故か…それは…
黒いフードの若者は急ぎ足で一番奥にある隔離施設…養護園へと足を踏み出した。
そして、透明な防弾ガラス越しに、彼女を眺める。
「…やぁ…元気かい…?パパだよ…今日も、成長の記録を取るからね」
赤子の彼女は、あやしてほしいのか、こちらに手を伸ばしてくる。
…研究員の書いたメモには、
番号:19932 名前:シェイノ=チャル
成長メモ:
目の中に、三角の模様が段々と浮かび上がってきた。
…頭の毛が濃い青色になりつつある。
元気だ。