第二十六話 フリーラン
いよいよ第二章突入!さてさて…つか、説明的な話になってしまってます…orz
俺は、自室(借)で横になっていた。
あの戦いの後、フォーミル城の城下町に泊まる事となった。
んで…なんでかその部屋にあの子が来ていた。
「な…なあ…一つ聞いて…いい…か…?」
「なあに?ロシル先生」
「なんで君がここにいるんだ…イユちゃん…」
そう…イユード=アルテミス=チャル…ちゃんだ。
なんか…花柄のパジャマを着ているのだが…。
そして、彼女の黄色の髪から妙に薔薇の香水の匂いがする…。
どうしてだろう…?
「ぼく、ロシル先生の隣の部屋なんだよ!貸家にいるのがロシル先生だと気が付いたので、寝間着のまま来てしまったよ!どうして…くれるんですかっ!いえ、どうしてもいいですがっ!いや、してください!是非!今!」
な、何故かかなり興奮しているご様子…つか、あのイユちゃん…?なんでそんな目を…ギンギンに赤くなって…あれ?この人トライアングルアイ発動させて・・・ね?
と、思った瞬間俺の背後に疾風のごとき速さで彼女が忍び寄った。
「さあ、今すぐベェェェットゥゥイイイイイ」
「ロシルさん、ムユですけど、イユ来ていませんか?」
と、イユに背中をどーんっと押されベッドに倒される横で、
部屋の扉を平然と開けてくるムユゼトール=バールペル=チャルだ。
綺麗な赤い髪が頭の所でお団子に二つ結ばれている。
私服なのか、黒い紳士服を着ている。
そしてこの光景を見たとたん、無表情で失礼しました。と言い残して扉をゆっくりとしめた。
「おいいいいいぃいいい待ってくれえええええ!」
「レエエエエエツ、ショオオオタアアアアアアアイム!」
と、叫ぶ中、次に扉をムユとは違う人物が開けた。
…白いスポーツシャツに、赤の短パン。
その服を着て、そこに現れたのは、黒髪のギャル気のある少女、サユリンド=テトラス=チャルだ。
「はいはい、そこまでねー」
そういって、サユはトライアングルアイズでイユの次の動きを逆転させて俺の反対方向へと飛んでいく…。
そしてそのままベッドから落ちて床に後頭部をぶつけて、悶えているイユを見て、
俺はただ「大丈夫か…?」とだけ言っておいた。
何故敵である彼女たちとこんなに接しているのかというと…
闘いの後、敗れた俺たちはメリュジーヌの呪いが掛かっていたのだというラグナが、俺たちに対して感謝するという事で、ここにいる。
…ラグナ…フォーミル…。
---12時間前---
崩れた瓦礫の中で俺は去っていくメリュジーヌと不快な笑みを浮かべて起き上がるエイピロを見上げていた。
既に体は瓦礫に埋もれてしまい、動けない状態だった俺を、シフォンが瓦礫を崩して起こしてくれた。
「エイピロ…てめぇにゃあ借りができたな」
そういうシフォンに、エイピロはゴーグル越しに目を不審に思わせているのか、眉を少し動かした。
「何のことだシフォン」
エイピロはその言葉に対して問いで返す。
何の事だかわからないと言った感じだな。
「いやいや、忘れられちゃあ困る…お前が、俺にメリュジーヌの事を教えてくれたからこそ、ここにいることができるんだ…そして、ラグナがメリュジーヌの催眠術で操られていることも…な」
シフォンはそんな様子のエイピロに対して、そのような事を言った。
…どういう事だ、あいつは…エイピロはメリュジーヌの配下で…。
忠実でないということか…?
「フフ、ああ…そのことか…別に、より戦を楽しもうという彼女の配慮だよ」
しかし、エイピロは以外にもメリュジーヌの指図だという。
…意味がわからない。
わざわざ自分を不利にする必要が…要するにマジシャンが事前に客席の一人にネタを教えるって事だ。
そんな真似をして…何の得もないはず。
戦を楽しむというのは、エイピロがメリュジーヌに合わせた口だろう。
「そうか、まあいい…エイピロ、メリュジーヌが狙っているのは…終末…なのか…?」
その言葉に、エイピロは顔をしかめる。
次にエイピロは答えず、シフォンを背に、こういった。
「これだけは言っておく…彼女の狙いは、終末ではない…輪廻だ」
そう言い残して…エイピロは去った。
そして、残された俺たち…。
ノエルは落ちる瓦礫の中、どうにか助かっていたらしい…呪文の‘エアル‘で、ラグナとシェイノを救出して、外へ逃げていたのだ。
…その後、瓦礫の中俺はシフォンに問う。
「…お前、これからどうすんだ」
その問いに、愚問だな…と前置きをしてから
「お前らと一緒にメリュジーヌを叩く…元よりそのつもりだ」
そういって、ニッと歯を見せた。
それに対して俺もニッと歯を見せる。
…そう、これはまだ…始まりに過ぎなかったんだ…。
そして、近くの噴水公園で俺たちは身を休めた。
ラグナ、シェイノが目が覚めるのを待つためだ。
目だった外傷はないようだし…傷の手当て必要なさそうだな。
しかし…この国王の口調はいつ聞いても気に食わないだろうし…この際、幽閉してもいいだろうに、ノエルはどうして…?
シフォンはそんな疑問を思い描く俺に対して教えてくれた。
「ノエルは、この王ラグナ=フォーミルに元々は恋してた…でも、求婚にしたって、王族からすれば嫌な役者でもあった…王族と魔術使いは仲が悪いというより、主従関係を結んでいるような関係柄だからな、それでも、ノエルは諦めなかった…ノエルが最初、魔導師になろうとしたのは、それがキッカケだった…それからというもの、ノエルは毎日修行を積んで、魔導師…それも、王族側近部隊(K・I・U)にな…」
魔導師であるシフォンは、ノエルの師匠でもあるらしい。
シフォンは、弟子のノエルがかわいくてかわいくて仕方がなく、いつも王からの依頼を受ける時は、共にこなしていたそうだ。
そして、そんな中…シフォンは、ノエルにこういったらしい。
”ノエルは、自分の夢持ってるか?”
その問いに、ノエルはこう答えた。
”このフォーミルを…平和の国に…争いのない国にしたいの…お父さんが、
そう望んでいたように、私もそう望んでいたいの”
お父さん?とシフォンが問うと、ノエルはエドワードさんの事よ、と答えた。
次にシフォンは、少し表情を柔らかくしてから
”俺が、いや…俺とお前がこの国を平和へ導いてみよう、どうにかなるだろ!だから、
お前も…頑張れよ”
と、シフォンがそういうと、ノエルがうん!と元気よく笑顔で返した。
シフォンはそんなノエルの表情に続いて笑顔になった…。
だが
「あいつが…メリュジーヌが現れてからは…不穏が続いた、かつて愛したラグナは変わってしまった…そう、ラグナが本当に好きだったのは、同じ側近部隊の魔女、メリュジーヌだったんだ…」
なんだか…妙な繋がりになって来たな…最初、ラグナを好きだったノエルが、ラグナに求婚までされているのに、断って、それどこか拒絶すらしていた。
…その理由が、メリュジーヌ…。
「メリュジーヌの錬金術は、その時代で言うと、確かに最強の魔術だった…ただ、エドワードを除いては…な」
ノエルも魔導師の才能を開花させて、戦線の一、二を争う強豪だったそうだ。
エドワードは幼いノエルが教会に捨てられているのを保護し、大事に育てた。
その上、魔術師という事で命を毎日のように狙われるがために、
近くにいたノエルを守るため、王宮に送った。
それからというもの、エドワードは姿を見せなくなった。
たった一日…メリュジーヌのスカイウェーブ号事件の翌日を除けば…。
「メリュジーヌがノエルの力を奪い、もはやメリュジーヌに勝てば…というノエルのラグナへの思いは砕けた、最初メリュジーヌを倒すことで、ラグナに目立った自分を見せ、魅了させようとしていたものらしいが、それこそ無謀で、メリュジーヌは、
最恐かつ最悪の敵だった…事件を起こす以前、メリュジーヌは、自らの身をラグナに委ねたのだ」
身を…委ねた…?
どういうことだ…?メリュジーヌは、前に聞いた所、エドワードが好きだったはず…。
ラグナに身を委ねたなんて、それこそ道理にあってない。
「ラグナは、そのせいで、側近部隊から妃にメリュジーヌを置いた…そして、その後に事件を起こした…どういう事かわかるか?王が妃を殺すなと指示させるために、そしてそれ以上に俺とノエルだけに出動させ、救援もよこさず、王の主権をメリュジーヌに委ねたために、メリュジーヌに集う精鋭部隊を作り挙げたんだ…そう、それは俺たちのために来るはずだった救援部隊…それが、メリュジーヌの罠だ…俺たちは、犯罪者を殺す事ができるが、上には王の命がある、その上一般人…要するに、仲間の部隊でも、犯罪者に加担する者たちは殺せないんだ…それで、俺たちは…手加減するより、降伏を選ぶ方が楽であるようになってしまった…」
その後、メリュジーヌは豪華客船スカイウェーブ号を…支配した。
その中でフォーミル側の…いや、シフォン、ノエル側の人間は当本人たち以外いなかった。
そうして、乗客の命もとらわれ、その命を救うために降伏を選んだシフォンたちが受けた仕打ちは…ノエルの白竜を…差し出すこと。
「ノエルは、そのあと…白竜がなくなった事により、魔導師からのひどい差別を受けた、魔導師が自らの魔術を明け渡すことは、タブーとされていたからな…メリュジーヌから白竜を取り戻すために、メリュジーヌ以上に強いエドワードを頼った…それが…魔術師への道だった」
と、言った所で、ようやくラグナの目が覚めた。
「んあ…僕は…どうしてこんなところに…おや、シフォンくん、ノエルちゃん…おはよう」
そうやって無邪気な笑顔を見せるラグナ。
あれ…?こいつ…こんなんだっけ…。
それに続いて、ノエルが涙を零しつつ、ラグナに抱き着く。
「おぉっ、どーしたの?ノエルちゃん…へへ、寂しかったのかなぁ?よしよしーいい子だねー」
ラグナは泣く子を慰めるようにノエルの頭を撫でつつ、そういった。
まるでお兄さんだな…。
続いてシェイノが目を覚ます。
「ん・・・ここは・・・」
シェイノは、やや男勝りな口調でそういった。
声は女の子にしては低い声だった。
「お、起きたかシェイノ…調子はどう・・・」
俺の横でシフォンがそういうと、シェイノがその頬をぶっ叩いてこういった。
「穢れるわ!触るな!獣!」
シェイノは…かなりの男嫌いらしい…。
シェイノに叩かれたシフォンは目を回しつつ、その場に倒れ込んでいた。
…そして、ラグナはその後、号令を出して民衆を自宅へ帰らせ、また俺たちを城下町の店に2,3日寝泊りできるように手配してくれた。
心優しい王様だこって…。
そして、今に至る。
「ああ、そうそう、ロシル、お前に朗報だ、しっかり聞いとけよー…えーと、フォーミル島西にある砂漠のオアシスに、聖水がある、それを取ってきてほしい…という任務だ」
と、サユが言う。
てか…よく似合うな…その服装。
「了解したが…聖水ってなんだ?何に使うんだよ」
と、俺はサユに問う。
すると、サユはこう返した
「お前の”グラム”の封印を解くんだそうだぞ」
そういって、サユは扉を閉めた。
”グラム”の封印…?
…一体何のことだ…?
今回から、第二章の序章 オアシス編が始まりますね。
オアシスというのは…砂だからけの荒野…そしてその大地に実る草の命の水。
それは砂漠の中にあるという事により、人間の手に負えない場所にあるやもしれぬ清い(ry
というわけで、次回もお楽しみにー!