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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第一章 フォーミル
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第二十四話 グデェイス

しょうせつ「…君と出会うのは、これで二度目だね、ロシル・フォート君」


「エイピロ…ヤングマン…」


俺の呪文を奪い去った男…。


「お前を、倒しに来た!」


俺は、おそらく獲物を見るトラの目を持って、エイピロを睨んでいたに違いない。

意識こそ、あのゴーグルつけた男に向けられていたが、その意思こそは、そのエイピロ自身に向けていた。


「クク、ずれてるよ、私が君を殺しにきたのだよ」


エイピロは、そうやって持っていた弓をこちらへ構える。

そのすぐ後に発射。

俺はそれを咄嗟の判断で避けていた。

無意識のうちに、体が動く。


「…この軽快な動き…メリュジーヌ様が何かしたのか…」


「め、メリュジーヌ…?」


「なんだ、知らないのか?君らと一緒にいた人だよ」


「…やっぱり、そうなのか…やっぱり、本屋さんが…」


信じたくはなかった。

が、これでハッキリもした。

メリュジーヌは、本屋さんだ。

いや、本屋さん自身、その正体こそメリュジーヌで、そして犯罪者であったのだ。


「さて、ここで問題…君たちの後ろにいるその御嬢さんは誰でしょうか」


そういうと、そいつは俺たちの後ろを指さす。

そして、そこには俺たちのよく知る人物…本屋ノブ子と名乗っていた少女、メリュジーヌだった。


「ノブ子…いや、メリュジーヌ…」


「あの時は、私の素顔、見なかったものね」


メリュジーヌはそういうと、顔に手をかぶせ、そして少し俯せると手をそっと退ける。

それから顔を上げると、その顔は、白肌に赤くそして美しく、見惚れてしまうほどの瞳を持った女性へと変化した。


「…7年前、私たちがスカイウェーブ号事件…あれからね、私はエドワードさんについて行ったわ…ついて行くために、己を隠してね」


メリュジーヌは、古い戒めをたどるように、目線を少し落としてうつむいたようになる。

ノエルは、それを見て犬歯をむき出し、攻撃的に立ち向かう。


「待て、ノエル!」


俺は振り返ろうと体を反転しようとするが、その道筋を一本の矢で封じられる。

…俺の相手は…お前って事か…。


「エイピロ…行くぞ!」


俺は、エイピロに振り向き直しつつ、突っ込む。


「フン、がむしゃらに突っ込んでも無駄だぞ…疾駆牢しっくろう!」


エイピロの目の前に柵がどんどん現れていき、俺の周りを大回りして囲む。

何だ…?

と思った矢先その柵がドーム型に形作っていき…


「疾駆牢の中では、相手の動きを10分の1までにする…つまり、お前はもう動けない」


な・・・なんだ・・・途中から…体が…重く…。


「そして…チェックメイトだ」


エイピロは柵の向こうで弓を構える。

…俺は…それに対し、防御の体制を取ろうとするが、意識は早くても…体がついていかない…!

ギギギィ...と、弓を強く弾いていくエイピロ。

その距離は…5m程度…。


「くっ…」


そして、矢は…放たれた。

俺は、目を反射的にギュッと閉じ…自分の身に伝わる痛みを…感じ…ない…!?

スッとゆっくり目を開けると…俺の目の前には…


「よう、もうピンチかよぉ、ロシル」


紺色のフードコートに、黒い手袋、そして黄色のオールバックに、黒いYシャツ、ねずみ色の長ズボン…そして、こちらに金色のまなこを片方見せつつ、俺に向かって、そいつはそういった。

…そう、そいつは…。


「シ・・・シフォ・・・ン・・・」


そう、先ほど王宮の階段にいた…大鎌『バルディッシュ』の使い手…シフォン=ノイスクランチ…だった。

そいつは、柵に入る数センチ先にまで来ていた矢を掴んで握りしめて真っ二つに折る。


弓矢使アーチャーいの弱点ってのは…距離を詰められることだ、だからこういう柵を作って、相手から距離を置く傾向にあるが、その破り方は…こうだ」


そういって、シフォンは…あの威圧を放つ。

敵としては、恐ろしい奴だけど、仲間の時は、こんなに心強いなんて…!

そう思っているうちに、エイピロがその威圧を受けて集中力が切れたのか、柵が崩れ始めた。


「ロシル、”グラム”は人を殺すことはできないがお前のその魔弾銃であいつにトドメを刺せ」


「どういうことだ…なぜお前が”グラム”の事を知って…」


「…とにかく、やるぞ…」


俺は、シフォンに後で詳しく聞くからなと言い聞かせて、崩れた柵から解放され、体の自由がきくようになったので、シフォンの隣までやってくる。


「シフォン…君はわかっていない…メリュジーヌ様には勝てない」


エイピロはこちらに向けた目をさらに奥にいるノエルとメリュジーヌへと向けてそういった。


「だが、お前は倒せる!シフォン、行くぞ!」


俺は、エイピロまで駆ける。


「いうようになったじゃねぇか!行くぞ!」


続くように、シフォンも突撃していく。

途中、『バルディッシュ』を生み出して片方の手に掴ませ、腕を背中に回して刃を背に向ける。



その後ろでは、ノエルとメリュジーヌが目と目、合わせて睨み合っている。

いや、ノエルだけが睨んでいて、メリュジーヌはニヤリをあざ笑うようにしている。

メリュジーヌは、白いコートを着込んで、踊り子のような恰好である。

ノエルは、辿る自身の敗北にここで終止符を打とうとしているのだ。


「ノエル、あなたに私は止められないわ…私は、万物の魔女たとえ、魔術師となったあなたでも、エドワードさん以下では話にならないわ…それに、加えても今のあなたは…魔術師ではなく、ただの人よ」


メリュジーヌはノエルを見下し、それを言うとゲラゲラと笑う。


「うるさい!あんた、早く私の光龍返しなさいよ!」


ノエルは、そんなメリュジーヌに苛立ちを覚えて犬歯をむき出しにして、足を何度も地面にたたきつけ、両手をブンブン振るって子供のように嘆く。


「フフ…いい事教えてあげるわ…ロシルくんは、魔術師には向かない」


メリュジーヌは、そういって、ロシルの方へと向く。

ノエルは、それを目で追うことなく、答える。


「ロシルは、魔術師見習いよ、今は向かなくても…」


「そう、まあ…いつかは気づくわ…」


そういって、メリュジーヌは左手を前に、右手を後ろに曲げる。

徒手格闘…!


「フフ、ハンデよノエル」


「なめないでよね!この蛇女!」


ノエルも挑発に乗って徒手格闘で挑む。

まず、ノエルの先手、攻撃の手順は左フック、右ストレート、その勢いのまま左足の回し蹴り。

それをメリュジーヌは腕の位置は変えず、そのまま左フックを身を引いてヒラリとかわし、右ストレートを左腕の肘で抑える。そして次の回し蹴りの来るはずの左足を右足を地面でスライドさせるようにきれいな円を描いて払う。


「うぁっ…!」


足を払われてバランスを崩し、その場所から転がって次の攻撃が来ないように離れる。


「徒手格闘も私の方が上よ、ノエル」


と、メリュジーヌが言いつつ、その間にノエルはその場に立ち上がり、両手を握って構える。

元々ノエルは呪文を使う魔術師。

徒手格闘などというもの技術スキルは皆無に等しいのだ。


「負けるもんかぁぁぁ!!!」


それでも勢いに任せて叫び、ノエルはメリュジーヌに立ち向かっていく。

メリュジーヌはそんな姿を嘲笑うかのように上機嫌にほほ笑む。

そして、また繰り返し交差する二人の取っ組み合いは、ノエルの劣勢で続いた。



「はぁ…はぁ…、やるようになった…と言おうか…ロシルくん…」


エイピロは息が上がっており、黒いスーツで着込んで登場した時よりも服装が乱れていた。


「はぁ…、ふっ、お前のご主人様に少し鍛えてもらったからな…」


ロシルもまた息が少し上がっているが、大したことはなかった。

着物が少し汗で滲んでいる程度である。


「さて、そろそろチェックと行くか…ロシル」


シフォンはその中で一番体力が多いのか、一汗拭うだけだ。

そして、バルディッシュは横に構えた。


「ああ…これで、終わりだ」


ロシルは、例の魔弾銃が懐にあるのを確認し、グラムを振るう。

ついでシフォンが横ふりをする。

エイピロは、グラムの攻撃を弓で受け止めるが、ロシルが身を引いて体勢を低くした瞬間斬撃がエイピロを襲う。


「ぐぁっ!」


エイピロは、斬撃を胸元にくらい、後ろへ飛ぶ。

空中ならば、動けないうえに、攻撃を受けた衝撃でさらに身動きを取るのも、多方面を見ることもできない。


「いまだ!」


シフォンがそう叫び、それを合図にロシルが懐の魔弾銃を構える。

黒いガバメントに装飾された金の糸のように巻きついた魔弾銃の銃口に光が集い、そして…放出された。


「うぉおおおおおおおおおおおお!」


地響きがする。

ロシルの持った魔弾銃からの放出されたのは、銃弾ではなくビームに似たもの。

それが大きな一本の線となって、続いている。

それに呼応するかのように、周囲が震えている。

ロシルは、その魔弾銃を両手で握り、自分の魔力を最大限に放出する。

そして、引き金を離す。


「はぁ…、はぁ…」


ロシルはさっきより息があがり、その場に倒れる。

エイピロの気配はない…。

ついに…倒した…が…1の呪文は…。


「ロシル、次は…メリュジーヌだ」


シフォンは、そういってロシルの手を掴む。

ロシルは「ああ。」と答えて立ち上がった。


そして、二人がかけつけたそこには、徒手格闘で押され、肩をひどく動かして荒い息をたてるノエル。

そのノエルに対して平然と余裕の笑みを浮かべるメリュジーヌがいた。


「ふふ、王子様の登場ねぇ~…あの頃は、2on1だったけど、今度は3on1…勝てるかもしれないわねぇ?」


そういって、本当に三人相手にしようとメリュジーヌは両手を合わせ…そして


「これが私の投影武装…八岐大蛇ヤマタノオロチよ」


そこには、白い蛇…それも、8つの首がある大蛇…。

その体は、メリュジーヌの身長…おおよそ160cmぐらい…の2倍はあろうか。


「ロシル、ノエル…ここが正念場だ」


「ええ…あの日の借りは返すわ…メリュジーヌ!」


「ああ、くそ!やってやるよ!」


シフォン、ノエル、ロシルを言葉をつなぎ、そして…メリュジーヌとの決戦が始まった。

次回 第二十五話 第一章完結!

魔女・メリュジーヌの投影武装・八岐大蛇に悪戦苦闘するロシルたち。しかし、そんな中ロシルの体に異変が!?

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