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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第一章 フォーミル
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第二十三話 スオペルス

俺は、ラグナを狙って、次元蛇穴を放つ。

振るった剣、”グラム”が、赤みを強く帯びて黒い影を放出する。

それらが、だんだんと蛇の形を作ってゆく。

そして…形がなった時、それらは無数の蛇となって、標的へ突撃をした。


「私の前で、そのようなものが通じると思うか?」


「なっ…なんだ…?」


全ての蛇が、怯え…そして石になって、その場に落ちる。


「スオペルス…威嚇というものだけで、そのすべてを蹴落とす…暴君らしい技だ」


「…我が妻よ、その言い方はなんだ?そんなにお気に召したか…険阻な顔をこちらへ向け…愛らしいつらが、台無しぞ」


「猫かぶりもいい加減にしなさいよね!大体あんた、そういう口調じゃないでしょう!」


ビシッとノエルはラグナに指を突き付けながらそういう。

ノエルとラグナ…婚約関係?

そうには見えないが、ラグナが妻と呼んでいる。

それを拒否しているノエル…。

ラグナの一方的な求婚…?


「おい、そこの下種何を考えている?よもや我が妻にお前のような下種が相手を勤まると思ってはおるまいな?」


「…あぁ~ほんっと、面倒くさいわぁ…ロシル、私ちょっと戦いにしゅーちゅーするから、そいつよろしく」


「…えらい投げやりだな…」


とりあえず、俺はこいつと戦う。

すんごくむかつくこいつを、ブッ飛ばしたく思っているからだ。


「いくぞ」


「…ライエン」


ラグナの背後に出てくる武装器の数が増える。

それらの弾幕を全て避けきる。


「く、面倒な奴だ」


「次元蛇穴!」


「それは効かんぞ!スオペルス!」


段々とラグナの顔が険しくなってゆく。

言動も全て変わってゆく。


「くそっ!くそっ!」


「なんだ…あいつ、様子が…」


「化けの皮剥げてきたわねぇ…おおっと」


ノエルは、シェイノの右のエルボーを体勢を下にしてかわす。

ノエルはその体制からさらに、水の壁を作る。

呪文の一つ、”グジャンナ”を、唱えたためだ。

呪文は、唱えるという動作に、言葉にならない言葉、呪文(スペル)を唱えることによって、その名に応じた魔法が発動する。

呪文は、その時に応じた魔力となる生命力を発動者から奪うが、呪文はその発動者に負担を軽減する作用があり、呪文自体の本来奪う生命力の約4分の1しか奪わずに済む。

…まあ、これは本屋さんに教えてもらったことだが。

水の壁は、まあこれは隠喩いんゆになるわけだが、透明で、ぼやけた姿でシェイノの姿がノエルには見えていた。


「ついでに言うけど、この水には臨界点以上の圧力・温度…超臨界水よ」


「ほう、だが…それだと、シェイノには勝てないぞノエル」


「ええ、けれど…これに触れれば、切れるわ」


ノエルの狙いは、火を扱うシェイノに対抗するための攻撃手段を得ること。

そして、水の壁は、見る対象を水という物質の壁に変え、シェイノの”目で見たものを全て焼き払う目”の防御方法として活用する。

ノエルには、経験があった。

昔…家を焼かれた経験があり、その時から復讐するために、必勝法を考え、この方法をひらめいたのだった。


「フン、シェイノ!お前の力を生かせ、そして…焼け!…なるべく服をボロボロ程度にな」


「お前、そういう趣味あったんかい!」


「まぁ…多少は傷ついたノエルを見たくはないのか下種」


「…ないこともない」


俺は、ラグナと普通に話していた。

つか、ラグナの話し方変わってきた?

ていうか、こいつ…なんていうか…変態な気がしてきた。


「というわけだ、ヤれ」


「イ・・・エス・・・タ」


なんだ、シェイノの様子がおかしい…。

震えている。

まるで、金縛りにかかったように…。

糸を張った人形のようにカタカタと今にも音を立てるかのように。


「…シェイノ…あなたまさか…」


「クク、気が付いたか我が妻よ」


「どういうことだ?」


ノエルは、険しい顔をラグナに向ける。

…そうか。


「この首輪…グレイプニル…?」


「ほう、知っているのか…このフェンリルを縛った鎖の名を」


その首輪は、目視することができず、しかし確実に体中を縛り付けていた。


「それらの素材となったものは、この世ではもはや存在しないためか、この鎖は見えない…」


通りで、外見から察することができないはずだ。

無口なのだと…そうとばかり思っていたが、それは操られていたからかもしれない。


「…なら、なおさら…こいつをブッ飛ばさないとな」


「クク、私にお前のような下種の攻撃なんぞ…!?」


その時、俺は第二の策を打っていた。

次元蛇穴を地面に撃ち、そして地面の中からラグナの足元へと忍ばせておいた。

蛇たちは、命令に背くことなく、ただ目標に絡んでいた。


「やはり、下種だな…お前」


「お前に言われたく…ねぇよ!」


バコンッという衝撃音、殴る音。

拳がラグナの頬を強く押し、ラグナの頬と俺の拳からなされる音。

それが、王の間に鳴り響くと、ラグナは反動で体を倒そうとするが、それを蛇が拾う。

そして、また立たせて、俺は続いて拳を構え、ボクシング形式で、ワンツーパンチを繰り返す。


「オラオラオラオラオラオラオラ!」


俺の掛け声とともに、衝撃音、打撃音は徐々に音量を増していく。

強く、そしてより大きく。


ラグナはそれを全て受け、だんだんと白目になっていくのが見て取れた。

…またゆっくりに見える。

どういう原理なのか、俺は動体視力を何倍にもあげることができるようだ。


「はぁ・・・はぁ・・・」


「ロシル!足元に気を付けて!」


と、ノエルが言うのと同時に、俺は連打で疲れた体をハッと起こして、地面を片足で蹴って、”それ”を避けた。

それとは、地面に這う影だ。


「な、なんだ!?これ!」


「わからないわ!ラグナのじゃないけど!」


ノエルは、水の壁に襲い来るシェイノの視界に合わせ、”イールグ”を放ち、ウォーターカッターをつくりあげて、その水圧をホースの水流のように水の一線を作って、シェイノにあてようとするが、すべてかわされ、そのたびに、水の壁に視線を合わされては、炎を作られるが、表面に帯びた火は、簡単に消える。


「やるわね…それと、そろそろ出てきたらどうかしら…?エイピロ・ヤングマン」


そう、ノエルは攻撃を止めずに、王の間の廊下側を見る。

そこにいたのは、黒いスーツ姿に、目が隠れるぐらい長い前髪を持ち、そして弓を持った男…。

エイピロ・ヤングマンだった。

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