第二十話 逆転
「くっ、ここはいったん引くしか…」
「追撃開始!」
ノエルの体に纏う氷の龍が息吹を吹く。
すると、そこから元の氷の龍よりも一回りも小さな犬が次々とサユへと突撃する。
それを…"目を合わせた相手の行動を逆転させる目"で、それをこちらへ跳ね返してくる。
しかし、相手との目を合わせるということは、その対象を一つに定める必要がある。
・・・つまり、その対象が複数人だとすると、それらは回避が難しくなる。
「やるわね、この目の弱点をよく知ってる・・・でもね、物質、理もすべて逆転できる私を
そして、これらすべての物質を逆転できる私に勝てると思うの?」
逆転さえできれば・・・過去にだって、希望ができた。
ソイルだって、救うことができたわ…。
けれど、逆転なんて・・・
「逆転の法則を使えば、なんでもできると思っているのかしら…」
「ええ、できるわ!あなたのような無力な人間とは違う!」
「・・・そう、なら・・・やってみてよ・・・私の過去を逆転して、最悪の過去を・・・過去をかえてみろよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「なっ、なに!?」
私の中からあふれてくる・・・エドに受け継いだ・・・もの。
その数々は、私にとって、大事なもの…。
{いいかい、ノエル・・・これは、君が一番大切なものを守るために使うんだ、わかったかい?}
「エド、見ててね…」
手のひらに風を溜め、そして、それを両手で握りつぶす。
そうすると、それが両手から大きく漏れ出す。
「な、なんなの!?この悪寒…」
サユは、ササッとまた身を引き、犬をかわしている。
それに標準を定め、私は、握った両手の指を手の甲を天と地に向けた状態で、サユに向ける。
そして、それを開いて…”イールグ”と唱えた。
「なっ…ぐっあっ!きゃあああああああああああああああ!」
風の突風が、勢いよく手のひらから放出され、それに氷の龍と冷気がついてゆく。
それがサユに当たり、そのまま壁にたたきつけられる。
「はぁ…はぁ…、やったわ…これで、形成”逆転”ね…」
私は、壁にぐったりと倒れこむサユに近づく。
「くっは…」
服はボロボロに裂け、顔も疲れ果てた表情を浮かべていた。
「しばらく動けないわ、加減はしておいた…命に関わらない程度だけれど」
「うっ…どうして殺さないわけ?」
サユは、そういう。
私は、それに笑って答えた。
「エドの教えだからよ」
「フ、いい師匠だこと…」
「まあね」
そして、ノエルは、サユに背中を向け、ロシルたちのもとへ向かった。
「おいおい、ありゃあ…」
「特攻隊があのザマとは…」
「俺たちが出る幕なくね?」
「…ああ」
兵隊たちは、今の状況を把握しつつも、出動できずに佇んでいた。
敵はたったの3人なのに、あの特攻隊がボロボロにやられたことに怯えているのだ。
「…引くか」
「引けば、焼かれるぞ…」
「…くそ」
王、フォーミルは兵のことなんて考えもせずに出動だけさせ、戦果を残さなければ、切腹させる奴だ。
そんな奴に「怖いから、ひきました」と言ったら、最近側近になっているあの女の子に焼かれるに違いない。
高笑いするフォーミルの顔が浮かぶ。
「…レビナ・フォーミルの時代が一番良かったなぁ…」
「レビナさん、優しかったもんなぁ…」
「…逃げるか」
そういって、彼らは城を逃亡した。