第十八話 イユ
「くそっ!また速く…!」
「ボクに追いつけると思っているの・・・かなっ!」
俺が攻撃の動作をすると、すぐにそこには数発の攻撃が来て、すぐに追撃が来る。
それも、段々と速度が上がってきている。
…さらに、こちらもダメージが多すぎて、まともに戦えない。
「これで…終わりにしてあげるよっ!ボクの最高速…音速突撃!」
地面に、亀裂ができ、そこには激しい突風が吹き荒れ、そしてそれは段々と近づいて…いや、もう遅い。
そう思った時には、俺は攻撃をまともにくらい、城下町にある一つの民家の壁にめり込んだ。
「ぐっはっ!」
思わず血を吐く。
それも多量に。
腹部ははれ上がり、そして腕の感覚がつかめないと思ったら、めり込んだときに、腕にコンクリートにある鉄棒が、貫通していた。
…これじゃあ、まともに動けもしない。
完全に…敗北…。
「フフフ、これでボクの勝ちだね!」
ふわりと浮かんだイユは、万弁の笑みでこちらを見下した。
…だが、俺には…こいつがある。
「片腕だけなら動けるからなぁ…」
俺は、渾身の力でグラムを振るう。
すると、そこには黒い穴ができた。
「次元蛇穴…!!!」
と、俺は弱弱しい声で、そう叫んだ。
すると、黒い穴から無数の蛇がイユのもとへと突撃する。
「なっなにっ!?こいつらっ!」
その速さに驚愕しつつ、空中で風を蹴って、蛇から逃れようとする。
まず、空中から地面へ、そして地面をけって、右へ。
段々とそのペースは上がっていき、蛇が追い付けないぐらいの時…。
「くっ」
民家のコンクリの壁に自分の体がぶつかった。
どうやら、蛇だけに注目していて、それに後ろに気が向かなかったらしい。
そして、俺と同じく体がめり込んでいく。
「くっぐぁああ!」
そりゃそうだ。
常人の速さよりもさらに速く、その速さは音速に近いとすると、衝突の衝撃もまた大きいはずだ。
…そして、そこに蛇の追撃がやってくる。
追いつけなかった蛇の猛進が、そこにやってきて、急いで抜けようとするが、速さだけが取り柄であるイユに、そこから脱出する手立てはなかった。
そして、彼女の体中には黒い蛇がかみついた。
その間に、俺はコンクリートの鉄棒に突き刺さった腕を引き抜いて、持っていた包帯で、急いで止血して、そこに…もらっておいた魔力札を貼ると、そこに魔法陣が出来上がって、治癒を始めた。
「俺の…勝ちだな、イユ…」
「くっ…痛い…痛いよぉ…たす…け…」
「最初から殺す気なんてさらさらないよ…」
俺は、蛇に噛まれた彼女の手を持ち、そして引く。
すると、体が持ち上がり、そして俺の懐に小さな体がのしかかった。
「あ、あり…ありがとうございます…」
「おう」
俺は、彼女を助けると、彼女は突然赤面になって、お礼を言った。
…ほかの二人は大丈夫だろうか…。