第一話 魔術師
「…ここは…っく…」
俺は、どうしてこんな所に…。
って、俺…なんで…あれ?あれ?…。
わっわけわかんねぇ!なんか、自分の記憶探っても、何も出てこねぇ!
どういう事だよ…。
とりあえず…持ち物を確認…。
えと…携帯電話…?にしては、ごついもの…、穴が開いてるところから声を聴くのはわかる。
でも、このチャンネルってなんだ…?
…まあいいや…ほかは…あ、ない…。
「持ち物は…これだ…ん?何か落ちたな」
一面草原で、草しか見えないとこで、何か落ちて、草がガササって音がなった。
それを見ると、それが…銃器であった事がわかった。
「わっわわ!なんで俺、こんなもん持ってんだ!くそっ!」
それを、驚いて投げ飛ばす。
すると…思ったよりも鈍い音がする。
てか、さっきみたいな草の音じゃない。
何か…こう、コツコツしたものに…例えるなら、石…。
でも、そのあたった方向を見たら…自分よりも、メチャクチャ身長のでかい、ねずみ色した石の化け物だった。
「伏せて!」
俺は、それを聞いて、体をかがめた。
すると、その上を何かずっしりしたものが乗った。
この感触…靴…?
「`イールグ`!」
「な、うがっ!ちょっ、おまっ!」
「うっ、動かないでよ!あっ!あぁあああバランスがぁああああ!」
俺の上に乗った人が、 何か を口にして、そして、倒れた。
というか、俺の上から落っこちた。
その時、その人の手から、妙な風が生まれて、周囲を巻き込んだ。
無論、俺とその人は吹き飛ばされた。
「うっうわぁあああ!!!」
「きゃああああああ!」
そして、吹き飛ばされた所に、先ほど投げた銃器があった。
「くそっ!くらぇええええええ!!!」
バァンッ!と、大きな音と火薬のにおいを放って、そいつは、銃弾を飛ばした。
その銃弾は、石の化け物に当たるが、バキンッ!という音がなり、弾かれてしまう。
「そんなんじゃ、ゴーレムは倒せないわ!‘イールグ‘!」
俺の横で、彼女は起き上がり、銃弾が弾かれている様を見て、ゴーレムの方向に、左手を構えて…人差し指を向ける。
そして、何か を唱えて、風を生み、放つ。
それは、渦を巻いて、まるで、槍のように伸びて、一直線にゴーレムを貫く。
それが当たった瞬間、ゴーレムは粉々になった。
「すっ…すげぇ…」
「ふぅ、大丈夫?君、名前は?」
その人は…いや、彼女は、そう問いかけてきた。
俺は…と言いかけたが、口を閉じた。
「ん?どうしたの?」
え、あ、う…どうして…だ?
口から…出てきそうで、出てこない…。
自分が放ってきたはずの…あの発音が…あの言葉が…出てこない…!?
「な・・・名前…俺の…うっうぁ…名前が、俺の名前が思い出せ…思い出せない!?」
どうして!?さっきまで…いや…さっきの時点で忘れてたのかも…。
そうであっても…これは…こんなの…うっぐ…。
「記憶喪失…そう、君…家に来ない?」
「え…?」
「フフ、どうして…?って顔してるね」
彼女は、笑みを溢して、そういう。
まっすぐに俺にそういう。
それにしても…とても…可愛らしい女性だった…。
顔は少し子供っぽくて、前髪をピンでとめて、顔の半分に髪がかかって、もう半分はその髪を払っている。
その払っている髪にはカエルの髪飾りがつけられ、髪の色は、黄色。
服は、カッターシャツに、黒いスカート。長いソックスに、茶色の革靴。
そして、緑の瞳…。
俺は、彼女のその姿に惹かれた。
太陽の燦々とした草原に、二人。
俺と彼女がポツンといて、名前をなくして絶望する俺に彼女は手を伸ばして…
「私はノエル、ノエル=フォート…魔術師よ、宜しくね」
「ま…魔術師…?」
「そ、まあ詳しい話は家でしましょうか」
俺は、差し出された手を掴んで、身を起こして、彼女の家へと向かった。
無限に広がる草原は、揺ら揺らと…風に揺れていた。
登場人物追加
new ノエル=フォート
魔術師。主人公(名前なし)を助け、彼を家へと招く。