第十四話 目
「さて…準備はできたかしら?」
「ええ、ロシルくんは?」
「俺も、バッチリだ」
ノエルは、白いシャツに赤と黒のチェックのスカート。
ノブ子さんは、黒いマントに、フードを被り、そして短刀を一つ腰につけている。
俺は、”グラム”を背中に。そしてノエルにもらった着物を身に着けている。
着物は、水色と白。
俺たちは、ノエルの呪文 ”エアル”で空中に浮いて、そのままフォーミル城へ向かった。
丁度その頃、フォーミル城では、戦闘準備が行われていた。
城下町の住民は、戦争が始まると、地下へと隠れる。
防空壕と呼ばれる所へ被害を受けぬように逃げるのだ。
17歳以上65歳以下の男子は、戦場を駆り出される。
そして、それ以外の女・子供・老人は、逃げるのだ。
しかし、異例の者もいた。
「…そろそろ、私たちも準備しましょうか」
「フフッおねーちゃん!たのしーそーだねー!」
「だって、あの”ノエル”のお気に入りでしょ?どーんなイケメンなのかなぁ~って、気になんじゃん?」
「まっねー!でぇもー…ウチ思うんだけどぉ…」
「何よ、イユ」
「シェイノがまさか大将に下るかしらぁ…」
「それね」
3人の女たちが、城の城壁上で何かを話していた。
一人は、赤いワンピースに、緑のリストバンド。
目は黄色。
イユード=アルテミス=チャル。
一人は、白いワンピースに黒のリストバンド。
目は赤。
サユリンド=テトラル=チャル。
一人は、灰色のワンピースに紫のリストバンド。
目は青。
ムユゼートル=バールペル=チャル。
それぞれの片目には、逆さの三角形模様の目があった。
シェイノ=チャルと同じ血族である。
この三人は、ここで生まれたわけでも、ここで育ったわけでもない。
単に、金が欲しいがために、ここへ来たのだ。
フォーミル島は、広く大自然が広がっている地域が多い。
その中で、唯一盛んであるのが、ここ、フォーミル城なのだ。
食べ物を恵んでくれる代わりに、いざというときに戦えという仕事。
しかし、滅多なことがない限り、その必要はない。
戦争は、まだ起きていない。
…しかし、今からの戦闘準備は、彼女らもまた参戦せよとの命令が下ったのだ。
「しっかしぃ・・・面倒ねぇ…」
「でも、やるっきゃないっしょ」
「そうね、私たち"ムサイ"は任務を全うするために雇われたのだから」
「相変わらず義理堅いねぇ…ムユ姉は」
「イユ、あなたは少しその減らず口を直しなさい」
「はーい!サユ姉、ボクが今回は先手はもらうからねぇ!」
「いいえ、渡さないわよ?イユ」
彼女ら三人は賑っていた。
一方、その頃・・・城へ向かったロシルたちを尻目に、ある人物が・・・ノエルの家の中にいた。
「クックク、いやぁ…実にいい!いい情報が入ったわい!」
「我が主君、ノエル=フォートのご自宅に何ようかな?」
そこにいたのは、少しばかり腰の抜けたしわしわのじいさんと、ゲーデであった。
ゲーデは、壁に背中を合わせ、腕を組み、じいさんを見下した目でにらんだ。
「ひぃ!や、やだよぉ・・・あたしゃ、なんもしとらんじゃば!」
「してる、していないの話ではない、ただ客人であるか、否かの問いであろう」
「クックク、そうかぁ…そうくるかぇ」
彼らは、話を始めた。