第百三十五話 白炎のシェイノ
グローブテナーから、パレードのあるロー・ジンへやってきたコトハたち。
そこはパレードの賑やかさとは違っていた。
残虐なる行為を行う、言わば処刑場。
歓喜の声は、悲鳴へと変わり、永遠と辺りに激しい異臭を放ち続ける。
息をする人形がビクビクと蠢く地獄。
「・・・ニホン軍の仕業か?」
「ひどいな・・・」
コトハは言葉をつなげない。
二人の言葉の後に、コトハだけは走り始め正面にいる何かにイールグを放つ。
「何者だ、てめぇはよ!」
「へぇ、見えてるんだ」
白い炎。
イールグに巻かれて、気にしなければわからない程の蜃気楼のようなそれは、段々と人の形へと変わっていく。
「ボクは、シェイノ・チャル…会うのは、初めてだね」
そいつは、しれっと名乗った。
シェイノ・チャル。
コトハの知っている中で、その名前は一人同じ名前が当てはまる。
が、そいつとはぜんぜん違う。
青髪の長髪のそいつは、黒の目を”使って”こちらへ向かってくる。
白炎のシェイノというのが当てはまりそうだ。
「ねぇ、お兄さんたち…ボクとかくれんぼしようよ」
「かくれんぼだぁ?」
突然、そいつはそんな事を言い出した。
瞬きの間に、そいつはまた姿を消した。
「またあれか!その辺を気にしろ!透明化してる!」
ロシル、エドワードはその言葉を聞き、周囲を見渡す。
砂埃一つ立てない。
足跡もない。
動いていない・・・?
「ふむ、ならばこれでどうだ?神をも恐れる人間の宝具・・・」
エドワードが懐から出したそれは
「ててててっててーダウジング~」
「わぁー、これは一体何に使うんだい?エドえもん?」
「これはねーこうやって使うんだよぉ!」
取り出した日本の鉄棒を地面にたたきつける。
すると、地面に亀裂が入っていきコトハ、ロシル、そして何もない場所へと続いていく。
「ロシル!そこだ!」
「わかった!食らえ、アロンダイト!」
「何それえええ!」
透明化したシェイノをさっそく見つけ、攻撃を加える。
だが、その攻撃は空振ってしまう。
エドワードが加えてイールグを放つが、
それもまた空振り。
「なんで攻撃があたらねぇんだ!」
「わかんない!ただ、そこにいるはずなのに、攻撃がすり抜けていく!」
「あいつの能力の仕業だってのか!」
三人の力を合わせても、全く掴むことすらできないその能力の正体。
地面にイールグを叩きつけて砂煙を出す。
だが、周囲に奴の姿はない。
「どういうことだ!?」
「姿が見えなくなるってわけじゃないのか?」
「・・・お前ら、離れてろ」
右手を前へ広げ、ギュッと拳を握る。
すると、黒い何かが指に引っかかる。
「次元蛇穴は、何もイールグからしか出せないわけじゃねーからな、
エドワード・フォートが未来、現在がロシル・フォート・・・。
そして、過去がエド・コトハってんならよ、俺がお前らの最終進化ってわけだからよ」
エドワードの白い装束に、赤みが増していく。
そして、後に風が黒い何かからエドワードへ向かって流れていく。
「俺が示す、この”魔法”を未来でもお前らに見せてやってくれ」
エドワードはそういい、全身に赤い半透明の衣を身にまとう。
それらが段々と腕に巻かれていき、包帯のようになる。
「未来に伝える、この力の名は… 次合掌 という」
パリィンッ!
そのとき、ハッキリとロシル、コトハは目撃した。
赤黒い空間。
足場などそこにはなく、ただ無気力に浮く残骸だけがその世界にはあった。
次合掌。
それは、天変地異とは言えない。
魔法。奇跡。そのような非現実的な言葉で言った方が良いか、
世界は次に暗転して黒く染まる。
瞬きの間に、目の前には先ほどはなかった黒い檻があり、
そこに白炎のシェイノが入っていた。
彼女自身も捕まった という事に気づいておらず、
この場で発言をしたのはエドワードだけだった。
「お前を拘束する」
次合掌。
多大なる魔力つまり生命力を使って、空間の現象を組み換える能力。
ようは置き換えだ。
だが、同時にエドワードの右腕は赤黒く染まり、力なくただ肩からぶら下がるだけである。
「なん・・・だよこれ・・・メチャクチャじゃんか」
そう溢したのは、コトハだった。