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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第六章 魔術師の反撃
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第百三十三話 ニライカナイ

「よし、これである程度は倒したろ」


「そうだね」


ざっと数えて20人。

だが、まだいる。

どうやら増援が中からやってきたようだ。


「プライヴァス、そういえば腕・・・」


プライヴァスの片腕は、グルグルと包帯に巻かれていた。


「ああ・・・これか、色々あってな」


「話すと長ぇがよぉ、まあどうにか無事には済んでる」


「それよりも、能力が使えなくなったってのはよぉ、あんまりいい話じゃあねぇよなぁ?」


「そうだね・・・とりあえず、仕方ないかな」


シェイノは自分の目に手をやる。

視力はそのままだが、能力はやはり使えない。

脳に攻撃を受けたため、能力が使えない・・・というには、あまりにもあっさりとしすぎていたことに、

彼女自身、違和感を感じていた。

今までだって、戦いの中で、似たような攻撃は受けた。

だが、能力が使えなくなったなんてことはなかった。

・・・どういうことなのかがわからない。


「まだ生きていたのか、侵入者」


突如として開いた穴から、現れたのは先程戦っていた男・・・

赤い装束の暗殺者 ルアトクアトだった。


「次元扉穴」


「またワープかよ!」


ルアトクアトは、開いた穴に入り、シェイノの背後を取る。

だが


「やらせるかよ!引っ張りだしてやる!」


プライヴァスは、開いた穴に入ったルアトクアトの足を包帯の巻いた左腕でつかみ、引っ張り出す。

そのまま投げ飛ばされたルアトクアトは、城壁へと追突する。


「くっ・・・わしを飛ばすとは・・・なかなか・・・」


「バウ・ハウンド・フィスト!」


包帯が解けていき、中から獣の毛が現れる。

それが一瞬にして巨大化していき、大きな手となる。

握りこぶしにしたそれは、既にルアトクアトの顔面にあった。

ルアトクアトはそれを避けきれずに直撃を食らう。


ルアトクアトは本来こういった衝突戦を得意とはしていない。

短時間での奇襲攻撃を専門としている。

だが、幾度となく、こういう機会はあった。

ルアトクアトの脳裏には、勝利と敗北という言葉が浮かんでいた。

勝てるか?自分の実力を疑わぬようにはしてきたが、

目の前にいる相手は、自分には手が負えない相手だと思えていた。

では、敗北か?

否、自らが誓った忠誠を、仁義を示すために

逃げも、敗北も、許されない。

戦う、ではない。

勝利を、だ。


ルアトクアトは先ほどよりも強く壁にたたきつけられる。

だが、すぐに体制を戻して両足で強く立つ。


「わしは、お前を評価、する」


「そりゃぁ光栄だ」


プライヴァスは巨大になった獣の腕を背に、手のひらを広げる。

そして改めて強く握る。


ルアトクアトは、ナイフを構える。

ルアトクアトの体はもう立っているので精一杯だ。

意識も飛びそうで、意志だけで、本能だけで目の前の敵と対峙している。

だが、一撃・・・一撃でもあの腕を避けて、懐にダメージを与えれば・・・

あとは、ナイフに塗った猛毒があいつの息の根を数秒で止められる。


プライヴァスは、右足を前に地面を思いっきり蹴り、

ルアトクアトは構えを崩さずに、相手の攻撃を伺う。

プライヴァスは射程範囲に入ったルアトクアトに獣の拳を放つ。

ルアトクアトは正面に次元扉穴を開く。


「なっ」


「これも、戦いだ」


拳は、シェイノの前に空けられる。

そして


シェイノはそのまま拳に殴り飛ばされてしまう。


「シェイノ!」


何度も何度も地面にたたきつけられ、転がりながら、壁に衝突してようやく止まる。

シェイノの体はボロボロとなり、血だらけだ。


「くそ!」


プライヴァスは、ルアトクアトの方へ向く。

シェイノの意識はなく、安否が不安だが、今は目の前の敵に集中しなくては、と言い聞かせながら


「仲間を傷つけ、そして敗北する…それが、結果だ!」


「ふざけるな…仲間も救う、そして勝利するってのが、この戦いの結果だ!」


プライヴァスの腕から毛が体の方へと移っていく。

そして数秒の内に体中が毛に覆われ、元の数倍の体の大きさとなる。

毛だるまのようなその体は、もはや人間のそれと形は似ていない。

まるで熊だ。


「また珍妙な姿に」


「ニライカナイ…俺はこいつをそう、呼んでいる」


青い蒸気が、毛の先端から出て行く。

それらが、プライヴァスの体を包むとその体は少し地上から宙に浮いた。


「第二ラウンドだ」


二人の戦いはまだ、続く。

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