第百三十話 教会の真実
たどり着いたそこは、いつかの教会だった。
スタンドガラスからは光は漏れておらず、ただ暗闇がそこにあった。
「どこだ…ここは」
エドワードはここが初めてだった。
そりゃそうだ。
俺、コトハもロシルである時に来て以来だからな。
「あぁ、君たち…また来たんですね」
光の漏れないスタンドガラスの闇が、段々と人の形を作り始め、それがしゃべり始めた。
トントンと音を鳴らし、教会全体に音を響かせた。
ゆっくりと俺たちの元へと空中を歩いて降りてくる。
3人はそれぞれの武器を構える。
「アロンダイト!水を纏え!」
「雷光瞬撃、トリューラ!」
「風を巻き上げろ!甕割!」
「そのまま、そのままですよ…絶対に気を抜かず、私が君たちへの攻撃をする事に違いはないのですから、当然敵意を私へ向けておいてください」
ブゥゥンッ!激しい衝撃音がなる。
三人は、自分の剣を振るって、どうにか持ちこたえる。
見えない何かが、彼ら三人に襲い掛かっているのを、無意識に認識しているようだった。
「”防ぎましたか”、流石ですね、ではこれではどうでしょうか?
クォンタム・ビット、掃射開始」
闇の背後から、無数の青い光が飛び交い、三人に襲い掛かった。
三人はバラバラに離れて応戦する。
追尾してくるそれを、それぞれの剣で弾き、闇の下へと三人は武器を構えながら突撃した。
が、既にそこには闇はおらずスタンドガラスからは光が漏れてきていた。
「ハハハ、合格ですよ」
パチパチパチと拍手をする音と、闇の声。
スタンドガラスから漏れた光が照らす下にそいつはいた。
緑の装束に、赤いシルクハット、しかし人ではない。
服を着た骸骨だ。
「何者なんだよ、あんた」
俺ははそう問う。
皆、それに興味を持ち、骸骨を見る。
「そうですね、私は君たちであり、この教会であり、君たちの未来ですよ
この教会は、我々が出会うための言わばサーバーというわけですよ」
サー・・・バー・・・?
「サーバーってなんだよ」
ロシルが尋ねる。
すると、骸骨は答える。
「うーん…噛み砕いて言うと、我々が出会うための集会所といえばよろしいでしょうかね?」
ドンドンドンドンッ!
その音がなった後、背後にイスが3人分用意されている事に気がついた。
どうやら、座れという事らしい。
「単刀直入に用件だけ伝えます、この世界にいるロクロブロンスを倒さなければ、
世界は彼の力で崩壊してしまうでしょう、今ならまだ止める事ができます
私の世界では、もはや彼を止める事は叶わずに、人々はロクロブロンスの脅威に震えるばかりです…
どうか、どうかこの世界のロクロブロンスを…止めてください」
いきなり、何を言い出したかと思えば…
「ロクロブロンスだぁ?だぁいつだそいつは」
「俺の闇の部分が具現化して、現れたもう一人のコトハだ」
…ロクロブロンス…。
お前が、俺の大事な人たちを壊すなら、俺はお前を止める。
この骸骨がいう世界の崩壊なんてのをさせてたまるか
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ、ロクロブロンスは…敵…なのか?」
「…は?」
「俺は、ここへあいつによって導かれてきた!お前らが世界を壊す存在として、君臨していると」
ロシルが言った途端、エドワードはゲラゲラと大きく笑う。
「ダァッハハハ!てめぇ…そいつに騙されてきたのかぁ!傑作だなぁ!…この世界に戻ってきたのは、
ノエルに会うためだったんだが…あいつの気配を感じないのは…」
「…ああ、ロクロブロンスにやられちまったからだ」
その言葉を聴いた途端、二人は俺を見て、骸骨を見る。
「…今、あいつはニホンにいる あいつが指揮を取って、ニホン国を動かして世界中に攻撃を仕掛けてやがるんだ、それが世界の崩壊に繋がるってんなら、間違いなく早めに手を打たないとな…
この世界には4つの王と4つの国があるのはわかってるだろう?
王は、その場所の杭の役割を果たしていてな?あいつらがいなくなったら、国としての機能だけじゃなく、
大陸が崩れ、人々は生命力を失って死ぬ。
この世界は魔力の渦でパワーバランスが取れてるからよ、
それがなくなったら、支える奴がいないのと同じだからそうなるんだ」
「だったら、あいつがやってるのは」
「間違いなく、王殺しの戦争だ」
「・・・くそ、急がねぇと!」
3人の会話が一幕終えた時、
もうそこは教会ではなかった。
グローブテナーへ戻ってきたのだ。
「まずは、この国ドルグレの王に会うぞ、あいつがやられてなきゃいいがな」
「わかった」
「了解」
かくして、グローブテナーでの戦いは終わりを迎えた。
同時に、ドルグレにニホン国の船が近づいてきているサイレンが、ドルグレの街中に響き渡る。
次回から、第六章 魔術師の反撃 となります。