第百二十四話 秘剣
「かかってきな」
彼は6人全ての動きをその目で全て確認し、攻撃を防いでいた。
六呈の騎士は、それぞれの剣を持っている。
騎士の一人が飛び上がり、彼の頭上から剣で突こうとするが、
彼はダーインスレイヴの変幻自在の刃をブンッと振るい、その剣を吹き飛ばす。
剣を吹き飛ばされた騎士の一人は銀色の鎧を着た体を回転させ彼のすぐ傍を通って地面に落ちる。
「ぐぅ…」
次に彼の左右から二人の騎士が攻撃を仕掛けた。
左、右ともに右から剣を横振りして彼を挟み込む。
「…」
だが、二人の剣が彼の懐に入り込む瞬間、二人の剣がそれ以上奥へと進まない。
「くそっ!こんなのアリかよ!」
「う~ん…これはいけないよ」
呪文。
そう、呪文だ。
彼の体に薄っすらと光が灯っており、その光に剣が塞き止められているようだった。
「どうした?その程度か?」
余裕の様子をかます彼の周囲にはさらに3人が襲い掛かっていた。
「イールグ」
と、口に出し、発音すると彼の周囲に突風が生まれ、
激しい嵐となり、5人を軽々と巻き上げた。
「呪文ってのは、本来口に出して発音できないようになってるんだ…それが何故かわかるか?
こんな風に、あまりにも威力がありすぎて、殺傷してしまうからだ
それに、魔力を多く使うしな」
ノエル、ロシル、コトハは魔術師の扱う呪文を発音せずに発動していた。
しかし、その威力はかなり抑えられ、手の平で作り上げるイールグは、
本来の威力ですらなかった。
それを、この男 エドワード・フォートは軽々と本来の威力で放ち、
制御をして5人を上空へと巻き上げている。
巻き上げられた5人の鎧には、まるでかまいたちに襲われたかのように傷ついていく。
やがてその甲冑は剥がれ、地面に落ちる頃には鎧など跡形もなくなっていた。
「100の呪文を扱う事、それが魔術師として一人前である事だが、
俺の提唱する魔術師はこの100の呪文を発音する事ができる者が真の魔術師であると考えている…
ならばこそ、100の呪文を扱う俺を超えたならば、伝説を越える神話の魔術師とも言えるだろうよ」
「なぁ?エド・コトハ?」
最後の騎士、六人目ジェスターが倒れているすぐ近くには、
見習い魔導師 エド・コトハ の姿があった。
エドワードの戦闘中、コトハはジェスターと対峙し、そして勝利していたのだ。
「俺は、あんたの話を本でしか見たことがなかったが…
どうも、俺とは気が合いそうにねぇよ」
コトハは、グラムを縦に振りながらエドワードに向かって投げつけた。
エドワードはそれをダーインスレイヴで上へと弾くが、直後コトハの姿が正面から消える。
背後に気配を感じたエドワードはすぐに後ろを振りかえると、コトハは手の平に、
風の渦を溜めて放とうとしていた。
エドワードはコトハの放とうとしている右手の手首を右手で掴んで、自分の後ろへと引っ張り、
コトハを引きずり込む。
コトハは、そのまま体をエドワードの方へと引き寄せられ、
エドワードの左手の拳を背中に直撃させられた。
「ぐはっ!」
コトハの口から、赤い血が漏れ、地面に叩き落される。
エドワードはコトハを投げ飛ばした。
「ストレイザー!」
エドワードはそう唱え、コトハの方へと拳を握って突いた。
その突いた拳が、蒼い閃光を帯びて真っ直ぐに突き進むレーザーとなってコトハへと直進する。
「来い、グラム!」
コトハは、グラムを作り出し、レーザーをグラムで受ける。
レーザーは反射して上空へと進んで消えた。
コトハは、地面に落ちてゴロゴロと体を転がして、4,5回回ってから手をついて起き上がった。
砂で体中が汚れ、服装も乱れていた。
「…アバターフォーム…ロシル」
コトハはそう唱えた。
直後、コトハの服装は変化し、赤い和服に白い衣。
そして青い剣を持っていた。