第百十六話 六呈の騎士
船がたどり着いた街、ロー・ジン。
しかし、その船が途中何者かによって襲われていた。
「クソッタレ!何が起きてやがんだ!」
船員たちはわけがわからないまま、ドルグレを前にして絶望する。
「さぁて、そろそろ出てきてもらおうかぁ…魔導師たちよぉ?」
「あぁ…あれはぁ!!!ドルグレの…騎士!」
船は揺れ、波に流されドルグレより離れていく。
敵前にして、船の行く先を変えた波は自然にできた波ではなく、
ロー・ジンからの水道放流による波だった。
大量に流された家庭水や水道水、それらが全て海へと流され、近場にいた船に打撃を与える。
そして敵船に乗った騎士。
それが、今フォーミルの船で暴れているのだ。
「好き勝手やってんなよ、てめぇら!」
「プライヴァス!」
プライヴァスは、騎士に殴りかかる。
が、直後プライヴァスの拳に、六角形の刃が囲む。
「ほーほー、俺に当たらなかったな…魔導師」
「ぬかせ・・・ドルグレの騎士」
プライヴァスの拳は動かない。
いや、正確には動かせないのだ。
プライヴァスの拳にある六角形の刃が動きを止めているからだ。
「クソッ!来い、グラム!」
コトハはグラムを作り出し、そして騎士へと攻撃をする。
しかし、その攻撃も同じように六角形の刃に止められる。
「なんだと…」
「二人がかりでこの程度か…魔導師とは…この程度のものなのか…」
「コトハ、そのままだ…そのまま力を抜くな!」
「わかった!」
コトハは勢いをとめないよう、力を加え続ける。
プライヴァスは、捕まっている拳の腕をもう片方の手で掴む。
その瞬間、何かが起きた。
何かが起きて、六角形の刃が消えた。
コトハは、そのまま体勢を崩しつつ、騎士の体にグラムで傷を入れた。
「くそっ!なんだこの能力は!」
「魔力を帯びた盾なんてもんは…俺の前じゃあ、ただのガラスだ」
一太刀を入れたコトハは、そのまま転がり、手で押さえて起き上がる。
そして再び攻撃を加えてようとするが、
またも攻撃は止められる。
その後にまた消える。
「全てにおいて、俺の前で…魔力を使う奴は、死ぬだけだ」
「ほぉ、じゃあよ…俺がてめぇの相手をしてやりゃ、ええっつう話やがなぁ?」
プライヴァスの片腕を一筋の刃が通る。
それは片腕を切断するには、十分な殺傷力だ。
「ぐっう、腕を…貴様ぁ!」
「魔力を使わずして、この騎士の腕が示せねぇわけじゃねぇぞってんだ!」
「プライヴァス!大丈夫か!」
「たかが、片腕一本もっていかれただけだ!てめぇはそこで戦っていろ!」
二人目の騎士がそこにいた。
鎧が顔を隠しており、声だけで識別するしか、識別する方法がない。
コトハは一人目の騎士と戦い、
腕を切った二人目の騎士にプライヴァスは対峙している。
「お前が俺の強さを無にできないと、てめぇが明かしてくれた…それは感謝するぜ、プライヴァス」
「ぐっ…腕を切られた痛みが…クソ、視界がぼやけやがる!」
プライヴァスの腕の出血部から漏れ出す大量の血液が、プライヴァスの体内にある血液を減らし、
プライヴァス本人に影響しつつある。
そのせいで、プライヴァスは視界がぼやけているようだった。
そのプライヴァスに騎士は容赦なく襲い掛かった。
プライヴァスの腕のない左方向から騎士は襲う。
剣が、プライヴァスの目の先にまで来た時、
そこに風の渦が生まれ、互いを吹き飛ばした。
「はぁ、はぁ…プライヴァス…ここは、二人で戦おう、あいつらは…お前とじゃなきゃ倒せない!」
「てめぇの…風か…いい風じゃあねぇか…ナイスタイミング…だ…」
意識が朦朧とするプライヴァスと、対峙する騎士二人。
そして、コトハ。
その後ろから駆けつけたシェイノ。
ドルグレとの戦いは、こうして始まった。