第百十一話 仮面侵攻
「くそっ…」
「この程度か?」
もう、腕も動かせない…。
ダメ…だ…。
このまま負ける…なんて、俺は…嫌だ…
「敗北を感じるか?」
「うっせ…これからだ」
ヨロヨロしながら、俺は立つ。
しかし、意識が朦朧として、これ以上戦うことができない。
どうする…どうすれば…いい…
「もう、動くな…この一撃で終える事ができる」
目の前にいる相手がかすんで見える。
もう…ダメなのか…?
「…?なんだ…その仮面…」
「なに…が…」
その時、俺自身、ひどく驚いていたのだが、俺の左半分の顔の形が変わっていっていたんだ。
その形は角が生え、ヤギのような形であった。
「ぐっぁあああああぁぁぁああああああ!」
突如として、頭に激しい痛みが襲った。
俺はその痛みと疲労により、意識を失ったが…。
その後、どうなったのか、わからない。
ヤギの仮面は俺にこの時取り付いたようだ。
何度目の世界か、俺の仮面 ロクロブロンス が生まれたのは…。
「そうだ、ロクロブロンスを作り出したのは間違いなくお前だよコトハ」
「…ロクロブロンス…ノエルをどうした」
「あぁ…"飲んだよ"」
こいつ、やっぱり消さないといけない!
俺の持つ"全ての能力"をこいつは扱える。
時間を戻す、その能力をこいつも持ち合わせている!
そして、俺とは別次元で動いてたはずだ。
記憶が戻った今しか、俺はこいつに勝てない。
「来い、グラム!」
俺はグラムを呼び出す。
フォーミル島から出る前に、こいつを止める!
「来い、グラム」
同じ発声でグラムを呼び出す奴の顔の半分はヤギの仮面…青銅器だった。
互いの間合いを読む動作から始まり、一歩一歩近づき、
そしてグラムを振るって、次元蛇穴を放つ。
次元の亀裂が生まれた所から蛇が飛び出て、それらがそれぞれの蛇に食らいつく。
それらが絡み合っている中、俺たちはグラムをぶつけ合う。
グラムは互いを干渉しあって、持ち主の体を吹き飛ばす。
「ぐあっ!」
「ぐっ」
街の中での争いは、すぐさま取り巻きを呼び込んだ。
「おい、コトハ…説明しろ、今どういう状況だ」
「すんごくやばい状況ってだけ…伝えとく」
瓦礫に埋もれた俺をシフォンは見てそういった。
次に、ロクロブロンスを見た。
「へへ…グラムで弾き飛ばされるとはな…っつつ…」
ロクロブロンスは、腹部に入ったグラムの衝撃に痛みを受けたようだ。
「俺がやる、コトハはそこにいろ」
「ま、待て!奴は!」
「あーあ、近づいちゃったかー」
シフォンを止めようと手を伸ばすが、それは間に合わない。
ロクロブロンス…そいつの能力は、
「僕の射程圏内に近づいちゃダメでしょってな」
こいつの能力は…俺以外を吸収する事ができる…。
シフォンは今、その範囲内にいる…
半径2mがこいつの範囲だ。
その範囲で吸収されると、何の抵抗もできずに吸収される。
「シフォオオオオオオオオオオオオオオンッ!」
吸収されていくシフォン。
最初に右腕、次に頭、次に胴体、最後に左足…。
一瞬の出来事だった。
「くそ…くそ…!!!」
「これで、ノエルとシフォン、二人を吸収した…お前は段々と失われていく仲間を、
その情けない姿で見ていくがいい」
シフォンを吸収した事で、体力を回復したらしい。
強さもおそらく。
俺は…二人を突如として奪われたわけだ。
「これより、侵攻を始めよう…お前が築いたこの世界を…終わりへと導く」
お前が望んだ終幕だ、なあ?そうだろう?