第百十話 シェイノVSシフォン
「…そうか、お前も出てくるわけか…シェイノ」
「…」
ノエルたちを待つシフォンは、背後から接近するシェイノに気づき、
そういったが、シェイノは何も返さない。
それどころか、シェイノはシフォンに対し敵意を向けた。
その敵意を察したシフォンはその場から急いで離れた。
すると、元いた場所は焼け焦げて、ボロボロと崩れていた。
シェイノの三角形の目は、
目で見たものを燃やす能力。
炎を扱うのでなく、物質を燃やすので、このようになる。
燃える燃えないに限らない。それが、彼女シェイノの能力の強みであり、凄みだ。
対して、シフォンは接近戦しかできない。
持ち前の勘と、身体能力を使った物理攻撃。
圧倒的に不利なこの状況を打破する方法を、シフォンは考えたが、
「くっ」
攻撃をかわすので精一杯だ。
シェイノの能力は4分の1にセーブされているため、
相手の足元程度、もしくはその立っている場所程度しか燃やす事ができないのが、唯一の救いであった。
足場だけを狙ってくる単調な攻撃を読み取ったシフォンは足で着地した後に、
前進して、地面を蹴って、ステップして避けるを繰り返し、接近していく。
その間わずか5mまでに迫った時、シェイノの行動は変わった。
自分の地面を燃やし始めたのだ。
「な、何を!?」
「私を、止めてくれ…この程度しか抵抗ができ…ない…」
シェイノはシフォンにそう言った。
操られている彼女の抵抗は、彼女自身に大きな隙を生ませた。
「ああ、任せろ」
ダッダッ!
強く踏みしめた地面から離れ、素早い左右移動でシェイノの目の攻撃を全てかわし、
抱きしめる。
「これで、もう見られずに、見ずにすむ…」
「すまない…」
そして、シフォンはシェイノに魔力を送り込み、シェイノを強制的に眠らせた。
シェイノはゆっくりと瞼を閉じながら、ありがとうとだけ口を動かし、残した。
「王よ、シェイノは…もう、乱用しないでくれ…」
眠りについたシェイノを少し離れた壁を背に置き、シフォンはそう呟きながらノエルたちを待った。
すぐその後、ノエルたちが現れた。
が、敗れた。
日傘の塔の戦い、シェイノとの戦いで体力を消耗した彼にとっては必然的だったのかもしれないが。
その後、シフォンはノエルたちと共にフォーミル王、そしてメリュジーヌの陰謀を阻止しようとする。
だが…
「どういう…事…?」
「あぁ、ノエル…ようやく時が来たんだよ、ロクロブロンスの降臨の時がね」
その夜、ノエルの前にロシルが現れそう言った。
そして、ノエルに左手を向け、吸引した。
何の抵抗もできず、ロシルに取り込まれたノエル。
そして、顔の半分がゆがみ、左半分がロシル、右半分がロクロブロンスの仮面に変わった。
「さあ、これからだ…ロシル、いよいよ始まるよ…ロクロブロンスの力を見せる時だ」
次回から、仮面侵攻編となります。