第百八話 100の呪文
激しい轟音の中、俺はふと違う事を考えていた。
この体…そう、エイピロ・ヤングマンになる前、エドワード・フォートの頃についてだ。
あの頃に、俺は平和へと向かうために戦争ばかりをしていた。
その最中、ノエルと出会い…戦争を放棄し、それぞれの国々に自らの兵士を野ざらしにした。
当時の俺はそれをノエルのためだと思い、そのままこのフォーミルに留まったが、
今思えば、最悪の選択をしたのかもしれない。
今均衡の保たれていないこの4カ国は、俺というバランサーを失ってさらに崩壊した。
そう、俺が…戦争を勃発させたに違いはないわけだ。
俺派とそうでない派の派閥が国の対立すら生んだ事がある。
理由は簡単、俺自身が掲げた世界統括に賛同するかしないかによる対立だ。
問題点を挙げるなら、そこに俺自身がいなかった事だが、
既に絶命した男を中心に話題を上げているのは、言い訳にしか思えない。
均衡を保つために、俺という存在を再度作り上げる事を考えたメリュジーヌは、
世界に敵として見なされてしまったがために、この不完全なエドワードを作り上げたわけだが。
なんつーか…面倒なことになったもんだよ、ほんっと。
面倒と言えば、だ…目の前のこいつ。
「やはり、不死身は面倒だわさ」
両腕、両足、首、それぞれを切断され、五体満足を、五体完全不満足にならされてとんでもない事になってしまった俺なわけだが・・・
「まぁ、時間をかければ動けるがな」
どうも、このハートという男…多重人格とかいう奴らしい。
記憶の共存だとか、なんだとか…。よくわからん。
俺自身、この肉体というものを持ってから、別人格のようなものが、本人格になっているわけで。
そう思うと、そのまま本人って考えで間違えないのかもしれない。
「何、考え事しとるか、わいの眼前でそないな事考える余裕あるっちゅうんは、
心底ばかにされとーようで、いらつかぁ…」
ドゴォォォンッ!
激しい音と共に、地面に黒いどこまでも続きそうな穴が開き、
俺の心臓部を貫く。
「がふっ・・・はぁ…全く、使いたくないんだがなぁ…」
一瞬世界が反転し、そして戻る。
暗黒に包まれた世界は、一気にハートを包み込む。
「天下暗転」
その包み込んだ黒い空間は、一気に姿を消す。
そしてその箇所から大量の血しぶきがあがり、
黒い空間はやがて広がって、ハートを吐き出した。
「すまねぇ、強くしすぎた 100の呪文、『破滅』をかなり限定的にしただけなんだが…」
これが、俺のエドワードとしての能力であり、
こういうのが、最強と謳われる由縁なのかもしれないが、
「あんまり自慢できねぇなぁ…こりゃ、グロテスク表現待ったなしだったぜ」
俺はそのまま、狂乱の塔を後にした。
目指すは、王宮…そろそろ、ノエルたちが来るはずだ。
エドワードの初魔術。
数年してようやくここで解禁とは…もう少し、更新ペース早くしないと終わりませんな