第百二話 4つの塔の戦い
<--- 境遇の塔 付近 --->
「ようやく…ついたか」
俺は、その塔を眺めた緋色の輝きを見た。
そして近づけば近づくほどに気がついた。
そこに複数の人がいる。
しかも、皆が皆慌てている。
気配というよりも直感的なものだ。
歩幅を狭め、走りをやめる。
骸骨が動き回っている。
何かを求めてさ迷うように…。
「なんなんだ…この光景は…異様過ぎるぞ」
そして俺に気がついたのか、こちらを見て、そうして
「うぎゃあああぁあああああああ!!!」
と叫んだ。
耳鳴りのする音。
それを聞いた途端に耳を塞いでしまう程だ。
「ぐっぅ・・・なんっだよ…この音!」
そうして、気が付く。
段々と視界が暗くなっていくのを…。
「このままじゃあ・・・」
どうすればいい…霞んでいく光景が、俺に不安を煽っていく。
骸骨のカラカラという音も響くが、それを聞いている余裕は俺にはなかった。
音を遮るための何かがあれば…
「そうか!これだ!」
俺は地面に向けてグラムを突き刺した。
そして、俺は
「狙え!風の…噴水だ!」
地中から風を噴出させ、骸骨の群れを大空へと吹き飛ばした。
その作戦は成功。
見事に骸骨の音がなくなり、視界のぼやけが消えて、さっきよりもハッキリ明るく見える。
「これで・・・戦える!こいつの力を過信してるわけじゃあないが、風を強く感じる!力が漲るぜ!」
俺は、走り塔の扉へとたどり着いた。
そして開けた。
中から肌寒い風が流れ込んできた。
その中には、1人の男がいた。
緑の装束を纏ったその姿…ドルグレ軍か。
「魔導師風情が…このドルクを…ドルク=イーシャスを動かすか」
そこにいた男、ドルク=イーシャスと名乗る男は、剣を持っていた。
いつの間に?
そんな疑問すらも浮かぶが、それ如きに動じる俺ではなかった。
俺もグラムを構える。
それに応じてか、微かにその剣の動きも見えた。
左、右…。
どちらから攻めてくる?
いいや、それどころか上、下…その点も考慮すべきか。
「正面…ってのは、考えすぎか」
「遅い」
ギュウウウンッッッッッ!!!
とても剣の放った音だと思えなかった。
その音の後・・・俺の胸元に短刀が刺さっていた。
いや、刺さった想像ができた。
俺はいち早く反応し、グラムをその剣先に動かした。
バギィィィイイイイイ!
金属音が響く。
互いに相手を突く攻撃を見せるが、弾いた。
そして、右から左、左から右と、互いに剣をぶつけ合う。
そこには剣の音だけが響いていた。
他の音が全くもってない。
「ぐっ…パワーじゃ、負けてるか!」
俺は、グラムを片手で持っていたのを、両手で持ち直し、構えた。
「このドルクに歯向かうものは誰一人として容赦はしない、お前も例外ではない」
「へっ!最初から容赦しようなんて思ってないくせに、よく言うぜ…払え、風よ!」
俺の体から風が放出される。
激しく風を動かす。
「この風…お前、エドワード=フォートか?」
「残念だけど、そいつは死んでる」
「ばかな、あの魔術師が…?まさか、継承をしたというのか…愚かな、私という者の約束を破っておき、
そして、他界するなどと…」
ドルクは、風をひとなでし、弾き返す。
一撃で、風は吹き飛び、そこに残ったものは何も無くなった。
「風を…吹き飛ばす…だと…」
俺は、自分の力を過信していたわけではないが、
それ以上にこいつの恐ろしさを感じ取った。
まずい。
「私、ドルクの名を聞いた者で、生きて帰った者は、そのエドワードのみであった…
お前は…楽しませてくれるのか?否、楽しませてくれるだろう…最低限、だ…
お前ができる最低限の誓いだ…今宵は素晴らしい…実に愉快だ、否不愉快だ…
好敵手を失った私に誰がこの手を安らぎを得させてくれようか…
お前はできるか?教えてくれ…この私に満足を得るに相応しいかを」
こいつ…さっきよりも本気だ。
手加減されていたってのか?
くそったれ…。
「拭え、愉快を、愉悦と共に、我が魂を震えさせよ!『ティルフィング』!」
その姿、形…8つの剣がまるで糸でつるされているようだった。