第百話 仮面
「うぉおお!」
俺は短刀を受ける。
それを弾き返し、大きくグラムを振るう。
すると、そこに風が生まれ、それが切りつける風に変わる。
「アナザー、やれるか!?」
「…今の俺は、アナザー…じゃない、思い出したんだ、
本当の名を!」
「俺の名は…コトハ…エド・コトハだ!」
アナザーという仮の名前から、本当の名を思い出した俺はそう叫んだ。
すると、自分自身の体から何かがあふれた。
風。
暖かな黄金の風。
エド・コトハの力…。
名を得た力って事か。
「何がエド・コトハだ!それで何になる!食らえ!」
背後から攻撃を仕掛けてきた大男がいたが、
黄金の風に足元を救われてその場で舞った。
それを無意識に扱い、大男を跳ね飛ばした。
「暴風の使い手…まるで、エドワード・フォートだな」
と、シフォンが言う。
エドワードは、手から風を生み出し、嵐を現したという。
最強の魔法使い、俗にいうフォーミルの英雄だ。
その最強の魔法使いは、今はいない。
現在の魔術師ノエル=フォートに継承の儀をして、とうに亡くなっている。
俺は、手から風を生み出し、地面に叩きつける。
すると、周囲の隙間から風が槍のように飛び出し、
シフォン、エイピロ、イペカは驚き一瞬動くのが遅れたが、
都合よく風の槍が跳ね返り、壁に反射してドルグレの兵士にあたって、貫いていく。
ある者は腕を、ある者は胸を、ある者は腹を、
ある者は脳天すらも貫かれ、あたりはより赤く色を染める。
「アナザー・・・お前・・・」
「ああ・・・思い出したんだ、俺は・・・
俺は、魔術師であり、魔導師でもあった・・・
俺は…過去にいたエドワード=フォートそのものだ」
「何を言っているんだ…?エド・・・ワード・・・?」
「ああ、そうだ」
[エドワードとして生きる]
これが、俺の掲げた目標だった。
そもそもこの世界は、俺の知る世界じゃあない。
俺は何度も何度も行き来して、ある一人を救うために生きた。
死ねば戻り、ある一人が死ねば戻る。
それが、俺がこの世界でいる理由・・・【輪廻】だ。
「兎にも角にも、お前は俺たちの 味方なのか? 敵なのか?」
エイピロはたずねる。
俺はそれに答える。
「わかっているだろう?味方でもないし、敵でもないんだ、俺はお前とは違う」
もしもで生まれたこのエイピロという媒体を使われたエドワードは、
俺とは違う 人間 として扱われているはずだ。
だったら、俺の魂とは違う。
故に、俺じゃあない。
「俺は、エド・コトハだ、お前はエイピロ・ヤングマン…それぞれの味方、敵もいる、
俺は・・・あいつを助けられるなら、それでいい」
ちゃんとした理由が、そこにあった。
だからこそ、俺は戦おうと思えた。
キオクが消えつつあった中で、
俺はようやく思い出せた。
仮面を破壊する。
あいつは…俺の仮面を持っているエドワード・フォートの一人だ。