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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第一章 フォーミル
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第九話 ラグナ

矢を刺された痛みはほんのわずかで、俺はそこの治癒をしてもらいながら、ノエルと話をした。

突き刺さった矢は、どうやら何かの魔法がかかっているそうだ。

魔法とは、魔導によってかけられたいわば呪文の魔導師バージョンというものだ。

俺は、そこから・・・1の呪文、『構成』が取られたそうだ。

1の呪文がないと、呪文はおろか魔力を使えない。

それに、俺は1日で死んでしまう。

1の呪文と肉体は、一心同体。

幽体離脱が許されるわけもない。


「ロシル、やっぱり、1の呪文がないと…」


「…ああ、やっぱり…ないと死ぬのか?」


「ええ、…でもまさか取られるなんて…」


1の呪文は原則自身の中で眠っているはず。

なのに、何故か奪われている…。

これは、おそらく…あの矢に、1の呪文「奪取」が付けられていたとしか…。

と、すれば、狙いは…魔術師である、私のはず…。

どうして、ロシルを?

そうノエルは心の中で思っていたが、俺にはわからなかった。


「ロシル、あいつ何か言ってた?」


「…いいや、ああ、そういえば…『私は、このラ・ビネスチェを扱うアーチャーの魔術師・・・これぐらい明かせばわかるだろう?』とか言ってたな…よくよく考えてみると、魔導師が、魔術師なんて名乗るものなのか…?」


「ラ・ビネスチェを扱うアーチャーの魔術師…!?それ、本当なの!?」


「あ、ああ…」


ノエルの体が震える…。

まるで、凍えるように。

どうしたのだろうか。


「ノエル?」


「…メリュジーヌ…」


「え?」


彼女は、不安な顔になる。

俺は険しくなる彼女の横にいたはずの本屋さんがいなくなっている事に気が付いた。


「あれ?本屋さんは?」


「…!そうだ、ソイルが!」


そういって、慌ててノエルは家を出て行った。

俺もそれに合わせて外へ出ると、

そこで、突風が向かってきた。

俺は、両手で顔の前を防ぐ。

その突風の中に、草や石、そのほかの砂やそこらへんにある土層が抉られているように、それが段々と大きさを増しているのがわかる。

まるで、核爆弾が落ちたようだ。


「くそっ、なんだってんだ!」


「ソイル…もしかして…『レ・クェンドリフ』を…!?」


「…『レ・クェンドリフ』?」


「エーテルフ語…つまりは、ここの国でたまに使われる言葉…意味は、『絶望』…」


「!?」


絶望…それは、望みこそない絶体絶命的状況にいる人物の心情を表したものとも考えられる…。

だとすれば、この場合の絶望は…死…!?


「ソイル!」


俺は思わず叫ぶ。

その先に、見るキノコ雲。

それは、冗談では済まされない。

…まさか…絶望とは、死を表し、それがトリガーとして扱いを受けるとすれば…。

それは、爆弾。

死というタイマーで動く爆弾の爆発を意味するとすれば、この状況は合致してしまう。


「『レ・クェンドリフ』は…死と同時に自らを爆弾として、周囲直径3kmをチリと化すぐらいの威力はある超強力な魔法よ…自分に魔術師にも魔導師にもなるような能力はないからと言って、契約したの…。エーテルフは、悪魔の事よ…人との交わりを好み、それ故に彼らは人間との交わり…つまりは、契りを誓うの…それによってできあがった契約名を全てエーテルフの適当な言葉で埋められる…だから、エーテルフ語」


「待てよ、ソイルはもしかして…」


「そう、契約したのよ、エーテルフと」


悪魔との契約…そして、トリガーは死…。

待てよ、もしかして…


「なあ、もしかして『ラ・ビネスチェ』ってのも…」


「そうよ、それもエーテルフ語…けれど、それの意味は、『幸福』…つまりは、死なないって事ね」


絶望は死、幸福は生という事か…。


「とりあえず、急ぎましょう…」


そういって、ノエルは駆け足になって、走る。

続いて俺もついて行く。

…この後に見たものは…。

確かな絶望だった。


「ふぃ~…なんだよ、服が焦げちまった…ケッ、この程度の奴だったのかよ、失望したぜ…なぁ、ノブ子」


「…」


そこには、本屋さんが何かを覗いていて、そして…大鎌を持ったフードコートの男…確か、シフォンとかいう奴が、失望したようにそう言いこぼした。


「ソイルを…」


「あぁ、あのザコか…消し飛んだよ」


「くそ!」


「シフォン…あなた…」


ノエルは、手を震わせて、シフォンを睨みつける。


「おお、怖い怖い…」


‘イールグ‘

と、ノエルは手のひらに風を圧縮して風の玉を生み出し、そして…手を横に振って、それをシフォンに投げつける。

風の玉は、シフォンの近くまで寄ると、突風となって、周囲の風をも吸い込んだ。


「クッ、流石…ノエル…メリュジーヌとの戦いから、おおよそ2年ってところか?衰えてねぇよなぁ…その腕」


「ラ・ビネスチェを使う魔術師なんて名乗っている魔導師…あんたのところにいるわよね?」


「いきなり聞いてどうする」


「ソイルは…確かに肉体的には滅びたわ、しかし、魂はある…冥界に行けば、ソイルを取り戻すことができる…」


「察しはついた…しかし、戻ってこれるかわからないのだぞ」


俺には、二人の会話がよくわからなかった。

なんたって、二人の会話は、固有名詞に近いものが、多すぎる。

ただ、今からすることに無茶があることは、言葉を聞けばわかった。


「フォーミル王に会わせなさい、そしてそのラ・ビネスチェを使う魔術師にもね」


「・・・こちらの方が一枚も二枚も上手うわてだぞ?」


「どうかしら・・・ねっ!」


ノエルは、‘グレイグ‘と言葉では表せない言葉で、唱えた。

すると、ノエルの背後に、5つの剣が姿を現した。

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