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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第四章 二週目フォーミル
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第九十四話 ロシルの力

(--- フォーミル城 謁見室 ---)


「では、先に申し上げた通り、王都周辺の村々の徴収量を…」


「よい、下がれ」


「御意」


その年、フォーミル国は深刻な食糧不足を迎えていた。

と、いうのも不作で、多少なりとも兵士の兵糧の備蓄の足しにすらも、

中々満足できないでいたのだ。

フォーミル国以外の国は、関係を絶っており、外交もできずにいた。

この問題に対し、随時徴収を行い、国に回そうとしたが、

農民の自分の食料を気にして、徴収に出す小麦の量を少なくしているというのもあり、

事態はかなり危険な状況だった。


(…この状況を打破するためにもまず、備蓄を最小限に広める必要があるか…

しかし、どうしてこうも国はうまく回らないか…

メリュジーヌの言う『輪廻ウロボロス』の成せる世ならば、

このような輪すらも回るのだろうな。

私には、そのような力はないようだ…素質の問題であろうか、

だが私はこのようにも思う…力のない者には知を、知のない者には、情を。

つまり、今の私にあるのは情なのであろうと。

なれば、考え最善を尽くさねばならぬ。

国の未来のためだ)


謁見室には、毎日ように国の状況、それについての苦情などが多々あった。

謁見を許されるのは、貴族だけで、貴族は自分の配下に届く民の意見書を受け取り、

貴族に渡す。

中には意見書を見ぬ貴族もいる。

それに加えて、今の状況。

少なくとも、飢えるという者も出るであろうというものだ。

苦情内容は「税を減らしてくれ」が主を占める。

財政はともかく、この国の安定には、この国の土地を生かさねばならぬ。

が、魔術師の攻撃も考慮せねばなるまい。


そうだ、魔術師と言えば…あいつは、元気だろうか。


(--- ノエルサイド ---)


「さて、そろそろ準備はできた?」


「ああ、とりあえずは…な」


私たちは、自分が魔法で作り上げた家の外にいた。

魔法は、魔術師が使える呪文をつかった。

魔術師は、その呪文の量によって、恐れられている。

その魔術師は、世界で一人しか存在しない。


ロシル=フォート、彼は私が拾い、名づけた。

そして、見習い魔術師として、日々鍛錬を積んでいる。


今現在、この家には、私とロシル以外に、

ソイル=ネードと本屋 ノブ子がいる。

銃器という反魔法物質でできた弾を飛ばす火薬を積んだ弓のようなものを持つソイルは、

狙撃手スナイパーとして、

魔法技術応用やその知識の多さで、

魔術基礎技術者として、

ロシルは二人に学びを受けている。

私は教えるのが下手なので、特に何もしていなかった。

…え、いやその…こう、面倒だった!というわけじゃないよ!?

単に、ロシルが学ぶのに、こんな奴の知識で何ができるというのかってことよ!

そういうことよ!


が、そんな私をノブ子は見兼ねて、訓練を押し付けてきた。

そうして、今こうして訓練の準備をしていた。


「行くよ…これを避けて」


私は、右手を自分の頬までもってきて、振るう。

すると、何か透明な物が風を切って、ロシルに近づく。

ロシルはグラムを両手で縦に振るい、それを切った。


次元蛇穴じげんだけつの応用、次元蛇包じげんだほう!」


「ノブ子から教わったの?やるわね!じゃあこれはどうかしら?」


私は右手の小指球しょうしきゅうを正面に向け、腕を上げ、斜めに振るう。


するとそこにまた同じように透明なものが現れるが、

今度は風を大きく巻き込んで激しくあたりの草もむしりとった。

それをロシルは次元蛇包で弾こうとするが、風がそれを遮る。

が、ロシルはグラムを両手で掴みながら、

呪文スペルの”ペデュシャ”を唱えた。

呪文は、口に発して唱えることは決してない。

が、その分イメージを必要とする。

名称は適当で、その名前から連想されるものだとか、覚えやすい呪文を、

魔術師が継いでいくシステムであり、この”ペデュシャ”もまた無駄につけられた名前だ。

100個ある呪文は、それぞれがイメージで名前が決められて、正直わけわからんものだ。


ところで、”ペデュシャ”というのは、私が決めたもので、

瞬間的に移動する能力で、その行く先は視界の範囲内。

つまり


「へぇ、攻撃を受けている最中、そのままの勢いを殺さず、呪文で私に攻撃を仕掛けてくるなんて

ノブ子がそこまで教えたの?」


「いんや、俺個人のレッスンの成果さ!」


グラムを首に突きつけるロシル…。

その姿、目つき…妙にしっかりしてて、恐ろしく殺気の篭った目つき…。

これが、彼らの育てた先の存在なら…。


「さて、今日の訓練はこの辺にしておこうかしら」


「わかった」


末恐ろしい…あのグラム、そして戦闘能力のセンス…。

磨けば、どうなることやら…。


エドワード師匠…あなたよりも、恐ろしいかもしれません。


(--- アナザーサイド ---)


(--- フォーミル城下町 ---)


「アナザー、まず俺から言わしてくれ…この戦いは、やっぱり今のお前じゃちと役不足だ」


「…だから、留守番ってことか?」


「すまない」


俺は、魔導師の招集に集う魔導師の内、シフォン隊に属していた。

今回シフォン隊は正体不明の人物…

ロシル=フォートなる人物の未知なる魔力を封じる任務が与えられた。

シフォンは、その任務を渋々引き受けた。

そして、魔導師よりも協力な魔術師が相手となると、危険が生じるという事で、

俺はお留守番となったようだ。


「さて、じゃあ俺たちは行く…他の魔導師に告ぐ、城の守りは頼んだぞ」


そうしてシフォンはフォーミルの赤きマントを翻し、エイピロと二人で向かった。

…一人取り残された俺は…


用意された自室に戻り、一人になった。

周りには特にこれといって何かあったわけがあったわけではない。

単に白いベッドと、茶色の本棚にこの国の歴史などが書かれている歴書がある程度だ。

それ以外と言えば、立てかけた甕割かめわりぐらいか。


「無力…どこかで…」


今現在自分に感じるこの懐かしいとか久しいとか思える気持ちはなんだろう…?

…何か…忘れている気がする…

俺が…どうしてここにいるのか…

そもそも、何故あの場所にいたのか…

少し、記憶を探ってみるか。

…思い出せたら、いいな

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