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見習い魔術師の100の呪文  作者: ユキカゴ
第四章 二週目フォーミル
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第九十三話 悪魔の珠

崩れた街。

住人は…怯えていた。

突如として現れた化け物と、その戦いでこの瓦礫の山だ。

住む家もない彼らは、度々王のいる王宮フォーミル城へと足を踏み出す。

日頃税を回収するために多くの民の信頼を得ようと、王は最低限の暮らしの提供をしている。

暮らしを提供される民は、条件として、税を納めていた。


「おい、アナザー…話がある、ちょっと顔貸せ」


と、シフォンにそういわれ、ついていく。

王宮に行くための大階段で監視をしていた。

シフォンに呼ばれたので、代わりにほかの者を警備としてつかせた。


階位10級。

魔導師と呼ばれる己が契約した武器を用いて戦う者のことだ。

契約した武器は、魔導師の呼びかけに答えて発現する。

シフォンは『バルディッシュ』という鎌を使う。

加えて第二の形態モードと、いうものがあるらしい。

俺の持つ『甕割かめわり』という名の太刀も、またその一つらしい。


「さて、ついたぞ」


「・・・ここは?」


人のあまり通らない棘の塔と呼ばれる場所だ。

刺々しいという印象よりも、”人の寄りたがらない”という塔だ。

と、いうのもここには黒い印…何か塗りたくられたり、落書きのようで、

よくわからない不気味な雰囲気を表すものだった。

そんな場所へシフォンは俺を連れてきて、多少不気味に思えていた。

塔の入り口の鍵は魔導師が一人一人持っているらしい。

銅色の扉を開けると、そこには青白い光だけが室内を照らす場所になっていて、

塔というわりには螺旋階段のようなものはなく、

上へと上る階段もない。

けれど、そこには唯一青白い光が照らす箱だけがあった。

中に入ると、肌に何かから薄く触れるような感触を味わった。

それから扉を閉めると、先ほどの感触が消えた。


「まず、このフォーミルについて教える…この島は、”魔法”というものに長けているが、

その実、”魔法”は己が力を欲のままに扱えば、当然危険なものとなる。

長けているからこそ、島の治安を守るために、”魔法”に対なるものが必要にもなった

それが…これだ」


と、シフォンが俺に見せてきたもの、

それは珠だった。

多分さっきの照らされていた箱の中のものなのだろう。

一言に珠と言っても、青く透き通るような色。

その美しさは、中々のものだった。


「ここは、この珠を守るために置かれた祭壇と呼ばれる所だ」


と、シフォンは説明する。

珠は”魔法”と対なる力、というところまでは理解できた


「けれど、この珠が、何の役に立つっていうんだ?ただの綺麗な珠にしか…」


「見てろ」


と、シフォンは珠を地面に置き、『バルディッシュ』を出そうと手を横へと伸ばす。

すると、それに呼応してか、珠もまた反応して、光始める。


「この珠は、魔力を感知し…そして破壊する」


パキキンッ!

鋭くガラスを割るような音が鳴る。

『バルディッシュ』のなりの果て…残骸が薄く消えていく。

スゥウ...と短い音と共に、そこには何も残らなかった。


「これ…もしかして」


「ああ、この珠の前では、魔法を使えない…」


魔法…。

俺はその存在を、無から有として作り出すものという認識があるが、

強ち間違ってないのかもしれないと思っていたりしていた。


「俺たち魔法を使う者は常にこの珠の恐ろしさを痛感してきた、

大魔法を扱う魔術師と呼ばれる存在であったエドワード=フォートですら、

この珠の存在を恐れた…いや、嫌っていたに近いか、

この珠は反魔法の神器の一つで、"ヴィ・アクチャのぎょく"と呼ばれている」


「ヴィ・アクチャ…?」


「この国に限った事ではないが、何かしらの悪魔の干渉があって、

ヴィ家、ラ家、ヲ家、それぞれ一つずつ持つらしいが、その内の一つで、

ヴィ・アクチャっつーお偉いさんがこの珠をこの国にくれたんだとさ」


平和の象徴 その裏に収拾をつけるためにこんな珠を使う…。

平和は、争いのない国のこと。

今、この国は内乱というものを抱えている。


「…まさか、その珠に頼るのか?」


俺はふと疑問に思って尋ねてみた。

少し間をおいて、シフォンは


「現状、メリュジーヌや魔術師が現れて、街を荒らしている…」


「これ以上の混乱は避けねばならない、こちらから打って出る必要性もあるが」


珠を元の箱の中に戻し、シフォンは決意した表情で


「この珠なんかに頼るようじゃあ、魔法を善き事に導く者として、悪魔の道具は使えないからな」


そういった。


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