第九十二話 グラム
投稿遅れて申し訳ない。
街は、化け物が攻めてきて、崩壊の一途を辿っていた。
「さて…お仕事だ、おいエイピロ、逃がすなよ」
「ああ、任せてもらおう…」
エイピロは一瞬で消えた。
もう化け物の所へ向かったのだろう。
シフォンは腕を振るう。
すると、その手にはいつの間にか槍が握られていた。
「俺たちも行く、アナザー…おそらくだが、奴もいる」
「ああ・・・わかってるつもりだ・・・シフォン、俺は俺の分身を潰して、俺は奴の名を継ぐ
それが、俺の最初の目標だ」
こうして、俺たちは、防衛へと向かった。
(--- 城下街 ---)
街の影に隠れた場所で、一人不適に微笑む人物がいた。
「…さて、はじめましょうか…輪廻の輪舞曲を!」
その人物は、手のひらを自分に甲が見えるように前へ突き出した。
キラキラと光る粉が、地に着く瞬間、そこに光の柱が生まれ、
魔方陣が描かれる。
紫色の眩い光が、歩く民を襲い、直後その周辺の建物は崩れ始める。
「あっはは!全部ぶっ壊しちゃえ!」
その人物は、闇に消える。
そして、その場所もまた崩壊する。
それからエイピロがそこへ到着する。
「…確かにそこに気配がしたんだが…一足遅かったか…ったく、面倒なもの残してよ…
ここは、アレ使うしかねぇよな?来い、グラム!」
エイピロは手を横へ振るう。
直後、その周囲は渦を巻くように風が巻き上がる。
そして、いつの間にか、エイピロの手には剣が握られていた。
エイピロの足元に大きく影ができる。
頭上には、巨大な足が迫っていた。
それを先ほど出したグラムで受ける。
「この程度か、モード:ツヴァイ・アクセル!」
そう発した後、グラムは突如として煙を噴射し始め、巨大な足を押しのけてしまう。
そして形状を変えたグラム…剣の形が、先ほどよりも開けたと言ったほうが良いだろうか、
鍔から切り先にかけてまでが四つに分かれ、渦を巻いているようになっている。
それがグルグルと回っている。
風がそこに吸い込まれるように流れていく。
押しのけられた巨大な足の持ち主は、そのまま周辺の建物を崩しながら倒れる。
20m程度のそれは、驚き足元を見る。
そこには、真っ直ぐに巨人に刃先を向けるエイピロがいた。
腰を下げ、グラムを握った手を後ろのほうへとやり、勢いをつけるように
「おうおう、そんな所に寝てるからよぉ、通行人の邪魔になってんじゃねーか
こりゃ、お仕置きが必要だよな?」
突いた。
ほとんど一瞬の出来事だった。
残ったのは風だけ。
もう巨人の姿もない。
粉々になったその街の一部。
真っ直ぐに空いたその大きな玉でも転がったようにできた線以外。
「…このエドワード=フォートを前にしたよぉ、
台風、暴風注意ってな、よく言ったもんだよなぁ?
てめぇが怠ったのはそれだったわけだ…メリュジーヌ」
これは、闇に逃げたあの人物に向けて言っているのだ。
エドワード=フォート。
それが、エイピロの正体。
外見こそ、エドワードのそれではないが、
魂はエドワードだ。
そして、エドワードの横に、黒い空間が開き、そこから現れた
赤い服に黒い線が入った暑苦しい服を着た女だった。
「へぇ、エドワードさんが私に逆らう世界線があったなんてね」
「このエドワード=フォートをそう易々と操れると思ったか?」
エドワードは、グラムを向ける。
メリュジーヌは、それを見て微笑む。
「面白い世界線だわ…実に面白い…今日はこの辺で下がるとするわ」
「逃がすわけにゃあいかねぇ…牢屋に入ってもらうぜ」
エドワードはグラムを大きく振るう。
しかし、メリュジーヌは体勢を低くしてかわす。
次にエドワードは手のひらをメリュジーヌに向ける。
そこに風の渦ができていく。
メリュジーヌは、エドワードに足払いをかけ、エドワードは体勢を崩す。
「残念、やっぱり私の勝ちね」
「いや、俺の勝ちだな、シフォン!今だ!」
「なに!?」
エドワードは、そう声をかける。
すると、どこからか鎌が飛んできて、それが回転しながらメリュジーヌの体を押しのける。
丁度メリュジーヌが壁にたたきつけられた所で、シフォンとアナザーがやってきた。
「おいおい、こりゃあどういう状況だ」
まず口を開いたのはシフォンだ。
街はかなり崩壊しており、元の原型もわからぬ程だった。
「なんつったって、こりゃあ見たとおりさ」
そう、答えた。
エドワード、シフォン、アナザーの三人は、メリュジーヌを見る。
だが、そこには何匹もの蛇が蠢いただけだった。