第九十一話 アナザー
街に蔓延る事件があった。
化け物を召還させ、街を荒らすというものだ。
その事件に、いつもいる影。
それが赤いフードを着た人物。
大魔術師 ノエル=フォート。
それが正体といわれている。
王家親衛隊と呼ばれるフォーミル最強部隊。
筆頭 シフォン=ノイスクランチ。
彼の元に身を引き取られ、俺はフォーミル軍服を着ている。
…というのも、事情聴取も兼ねて、だ。
シフォンは赤いフードを着た人物を追っている。
そこで、偶然居合わせたこの被害者である俺にどこへ向かったのか、
などの事を聞こうというのだろう。
「それで、おめぇ…あの魔術師と、どういう関係だ?」
ここは、フォーミル城地下の尋問室。
そこで俺は質問攻めにあっていた。
「俺は、街の外から来て、ここへ偶然たどりついた旅人だ…ここの街の事は知らないし、
第一にその赤いフードの人も知らない」
「…証言者、黙秘…と…どうしやすー?こいつ、殺っちゃいます?」
奥でスープをすする男はそういった。
えらく整った髪に、灰色の紳士服に、白いカッターシャツが見えた。
ネクタイもしており、それこそビジネスマンというのがお似合いだった。
そいつが…あぁーなんだって?殺っちゃいます?なんて言い出したらそりゃあ…
「なんでだ!俺がなんかしたかよ!?」
と叫ぶ俺。
当たり前だ。
俺はいきなり気絶させられ、そいつに関わっている~なんて事を言われて、
無実の罪を着せられて存在を消されるわけだ。
生存戦略開始しちゃうわけだ。
「あぁー・・・それはまずいだろぉ…はぁ、おめぇ確かこの街の事、知らないって言ったな?」
と、俺にさっきから問いかけてくるオーバーヘッドのヤンキーな男が言ってきたので、
「あぁ、知らない…そもそも、記憶がないんだ、自分の名前も」
と、返す。
「そうか…とりあえず、被害者Aって言うのもなんかちげーからよ?なんかいい名前でもつけてやるよ」
そういって、最初は”被害者A略してヒーエー”なんていうネーミングセンス皆無な事を言ってきやがった。
ふざけんなって返したら、今度は”加害者Aの被害者A略してAA”なんて返してきやがったから、
人の名前にしろってつっこんだ。
そして、最後に決まったのは
「んー・・・じゃあ、お前は、”アナザー”だ、意味はもう一つとかそういう意味だが、
何せこの世界で、お前そっくりな奴もいるし…な」
俺そっくり?
なんだそりゃ?
と、思った。
だけど
「わかった、それでいい…俺は”アナザー”だ」
そういった。
だって、これ以上ひどい名前は嫌だったしな。
…それに、その俺そっくりと同じ名前ってのも、なんかムカつく。
「おし、アナザー…まずは、おめぇがいう潔白の証明をする…お前は本当に記憶喪失なのか、否か」
「だからわかんねぇよ!元々俺自身おきたら、草原にいた…その後、宛もなく歩いていたら、土の化け物に…」
そこで、俺は言葉を発するのを止めた。
土の化け物…いや、それを俺は”ゴーレム”という名である事を知っている。
なんだ…?
それは…
「ん?どうした?土の化け物にどうされた」
「襲われた 少なくとも、敵意は最初からあったんだ…俺は本能のままにこの剣を振り回した…けど、意味なく、俺は間一髪になって、その土の化け物をよじ登って抜け、助かったんだ」
普通に考えたら、どう思うのだろうか?
土の化け物 というだけでもなんだか違う気もする。
…なんだろう。
俺、もしかして…ば…
「そうかぁ・・・お前・・・災難だったなぁ・・・」
案外信じてくれてる!!
これ、いける!?
「・・・先輩、土の化け物っていうとやっぱり・・・」
「だろうなぁ…こりゃあノエル=フォートが関わってるな」
大魔術師。
名前出てきたな。
名前だけ聞くと、そんな化け物なんて軽々しく出しそうだな。
と、そんな時
「ま、まただ!シフォン!また街に化け物が現れた!」
「またか…行くぞ、エイピロ!…お前はどうする?アナザー」
どうする?
いや、ここにいても仕方ないだろう。
俺が言って、役に立たない。
…
「行く」
「男はそうでなくちゃな、行くぞ…!」
シフォン、エイピロ、俺は、化け物退治に、一度城を出た。
アナザー:太刀という武器を使う。
容姿そっくりな男がいて、その”もう一人”という事から
名前の由来が着ている