怪談「伴奏」(創作)
ピアノ独奏。どっかで聴いたような。あれだ、2時間サスペンスのEDの伴奏だけピアノにした感じ。そう言うと、大きく頷かれた。
「だいたいのやつがそんな方向のコメ入れてる。俺も同感。んで、歌のせたいから歌詞書いて」
「のるか? コード進行はあるけどメロディもリズムも無えよな」
「それなんだ、メロディは無いのにそれらしいものが聞こえるような聞こえないような」
「パックマン3つ並べて存在しない三角形がうっすら見えるような気がする錯視」
「あー! それそれ! たぶん俺の脳が鳴ってないメロディを存在してることにしたがってる。同じように感じるやつ、結構たくさんいるんだろうと思うよ。『メロディつけてみた』『歌つけてみた』がかなりたくさん上がってる」
「なるほど。……これすげえな、もと曲動画の公開から2カ月で76件もある。もうこんだけ上がってるとこへお前の新しいの入れてもpv稼げなくね?」
「いや、何かメロディ作らんと、ずーっと何か足りんと思ったままになりそうで」
「ほかの人らのは『これや!』ての無かったん?」
「説得力は感じるけど俺の『これや!』じゃない。自分のを作らんとたぶんスッキリせんと思う」
「わかった。じゃあメロディできたら持ってきて。歌詞はそれ見て書く」
「うん、頼む」
そこから半年くらい。歌つけてみた系は200件を超えた。あいつのメロディはまだできてない。できてなくて良いのかも。歌つけたアカウントはだいたいその後更新が無く、ご家族から悲しいお知らせが出たのが4つあった。
「前にさ、謎の伴奏だけピアノに歌のせるプランの話、したことあったろ」
「やっとメロディできたか」
「いや、メロディはできてないんだが、俺も鳴らしてないメロディが聞こえるような聞こえないような独奏曲を作っちゃってな」




