腐ったレクイエム
「あと二人」
あおむけの状態で、それぞれ四人のアンデッドに両手両足を押さえつけられた二人の男を見下ろしながらつぶやく。
「や、やめろ! やめてくれー!」
「す、すまん! 俺が悪かった! 悪かったから! 頼むー!」
一人は巨体の男。真っ先にティナへ乱暴しようとした罪人。
もう一人は銀色の長髪。ティアを殺して首をはねた罪人。
この二人はあえて、最後まで残しておいた。
こいつらの悲鳴と後悔の叫びだけは、ちゃんと聞いておきたかったからだ。
「俺たちの村が襲われたとき、俺も言ったんだよな。やめてくれって。そのときおまえら、どうしてたっけ?」
「す、すまん! いや、すいません! 出来心でした!」
「俺たちが間違ってました! だから許してくださいー!」
アンデッド化しても、生きているときと同じ苦痛や恐怖を与えることは可能だ。しかし体の自由を奪うので、こういう生の声が聞けないのが難点なんだよな。
いやぁ、こいつらの許しを請う声が聞けて、本当に良かったよ。
ただ、こんな汚ねぇ声をティアに聞かせても、喜ばないだろうな。だからまあ、これは俺だけの自己満足だ。
「バーカ、許すわけねぇだろ。そろそろおまえらの命乞いにも飽きてきたわ」
鼻で笑いながらそう言うと、二人が完全にブチ切れた顔で歯ぎしりした。これは傑作。
「このクソ堕天野郎が、ふざっけんな! あの世でテメェの妹をめちゃめちゃにしてやる」
「殺す! 殺してやる! テメェの妹のように、首かっ斬って殺してやる!」
謝罪も後悔も、こいつらにあるわけないよな。本当に申し訳ないと思ってんなら、相手に何をされようとも涙を流して謝罪するもんだろ。
何はともあれ、おまえらが最後の最後までクソだったことが嬉しいよ。
俺は右手をスッと上げ、合図を送る。八人のアンデッドが、よだれを垂らしながら大きく口を開ける。
「やれ」
そう言って右手を振り下ろすと、手足を押さえつけていた八人が一斉に二人に噛みついた。
「ぎゃぁああああ! やめ、やめろぉぉぉおおおお!」
「いで! いでぇぇええええええ! ちくしょぉぉぉおおお!」
それじゃあ、十戒のみなさんも無事にアンデッド化するってことで、異次元の入り口を一つ生成しておこうか。
完全なアンデッドにさえしてしまえば、もはや俺の操り人形。あとは天属性を使わせないようにすれば、堕天の幻術魔法もちゃんと効力を発揮できる。
入り口から出てくるのは、異次元の中へ連れ去って卵を体内に植え付けるタイプのモンスターにした。第三神殿でベルナードといった司祭に与えた罰と同じやつだな。
しかもこいつらはアンデッドになっているので、そう簡単には死ねない。肉体の損傷がアンデッドの活動限界を超えるまで、同じ苦しみを何度も味わうことになるだろう。
「ひぎゃぁぁあああああ! あだ! あだだだ」
「あぎゃあぎゃぎゃぎゃぎゃぁああああああ!」
ははは、マジできったねぇ声。こんな腐ったレクイエム、ティアには聴かせられないな。
まあ俺は、割と嫌いじゃないぞ。クセの強い音楽って感じで。
「くくく……。あははははは……。はーっはっはっはっはっは!」
思わず笑いが込み上げてきた。
俺は満足感に浸りながら、さらに奥の部屋へと進んでいった。




