崩れた結界
堕天の翼を広げ、上空から聖王都を見下ろした。
夜なので堕天使と天使が飛んでいても、目立つことはないだろう。
さておき、街の様子が何かおかしい。
すでに住民は寝静まっていてもいい時間のはずだが、明かりも多いし、妙に騒がしいな。まるでお祭りだ。
しかし、それ以上に存在感を放っているものがあった。
「主さま!」
「ああ。探索魔法が使えない俺でも、ハッキリ感じ取れる」
聖王都の中央あたりに存在する神殿から、ただならぬ魔力が放出されている。数日前には、間違いなく感じなかったものだった。
その魔力はさながら、地獄から這い出てきた亡者の手のように、うねうねとうごめいている。
なるほど。
第三神殿の異変に、大司教自らが出向いてきた理由がわかった気がする。
王都には七つの神殿が存在するのだが、高い場所から全体を見下ろすことで、その意味も見えてきた。
等間隔で配置された六つの神殿は、線で結ぶときれいな六角形になる。そして魔力が漏れ出ているのは、ちょうどその六角形の真ん中に存在する第七神殿。
神殿は巨大な結界を張るためのものだったのだ。
六つの神殿によって結界を張り、強大な魔力を放つ何かを第七神殿に封じ込めていたのだろう。しかし第三神殿が破壊され、結界が崩れてしまった。そのため、第七神殿から膨大な魔力が漏れ出てしまったといったところか。
つまり第七神殿に、大司教が隠している何かがあるんだ。
おそらく光輝教団の一部の者にしかしられていない、ヤバい何かが。
「あの神殿に大司教はいるのか?」
第七神殿のほうを指さしながら、キャロルに問いかける。
「分かりません。天属性を持つあの男だけは、探知もできないみたいです。でも強い力を持つ人間が、あの神殿にたくさん集まっていますよ」
強い力を持った人間ども……。
くくく、思ったとおり聖騎士団で守りを固めてきたな。それなら好都合。わざわざ探し回らずとも、処罰の対象が一か所に集まってくれているのだからな。
ついにティアの仇とご対面だ。
「そいつらがいるってことは、必ず大司教グレイザムもいる。では、行くとしようか。許されざる者へ、相応の罰を与えにな」
「はーい、主さま!」
右手をピーンと上げて、キャロルが元気よく返事をした。




