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罪を発表していきまっショー!


 俺たちは破壊した天井から、神殿の中へとゆっくり舞い降りていった。


「はいどーもー! 裁きの神さま、降臨でーす」


 拡声魔法によって響き渡ったキャロルの声に、神殿全体がどよめきだす。

 裁きの雷をぶち込んだ司祭はそれなりに強い魔力を感じるが、あれは大司教ではないな。

 ヤツの魔力は他とは段違いだったから、顔が見えなくてもすぐに判別できる。

 聖王都の神殿で行われる大きなイベントと聞いたから、大司教がいるのかもしれんと思ったが、どうやら外れだったらしい。

 倒したヤツ以外にも、布をかぶった司祭がたくさんいる。こいつら司祭は自らの汚い欲望を満たすため、神の代弁者という立場を悪用しまくっている。


 台座に寝かされているのは、俺も覚えがある女の人だった。

 クレアという名の、とても可愛らしくて気立てのいい人だ。

 俺たち兄妹にも優しくしてくれて、差別を受けていた一族の、数少ない理解者だった。


「あ、あなたは……まさか」


 俺の顔に気づいたのか、クレアが驚きの表情で言った。そしてしばらく見つめてきたあと、涙を流した。

 もしかして、俺の死を悲しんでくれたのだろうか。そういう人だったからな、彼女は。

 俺はクレアから目をそらすように、参拝客のほうへと視線を移した。

 大司教こそいないが、光輝教団のイベントだけあってすごい数だ。

 こいつらの顔なんぞ、いちいち覚えてはいない。だが、ほとんどは俺の処刑場で石を投げつけたり、仲間たちを差別してきた連中ということは分かっている。

 やはりキャロルの能力は使える。恨みを持つ人間が多すぎると、把握するのも一苦労だからな。


 さてさて。

 今回のデカいイベントは受神の儀式というらしいが。

 街でも評判の美少女が台座の上で縛られて、布をかぶった複数の司祭が並んでいる。そしてそれを眺める参拝者。

 俺たちの恩人ともいえる女を、性欲のはけ口にしようとしていたってわけか。


「神の名を語り、大勢の前で堂々と羞恥プレイ。そしてそれを嬉々として見物する民。クズの集団だな」


 台座の手前に降り立ち、周囲の司祭どもを睨みつける。


「ノ……ノア・エルグレイス?」

「バカな! きさまは火あぶりになって死んだはずじゃ……」


 司祭どもが、慌てふためいた様子で叫ぶ。

 その言葉が神殿内に響き渡り、参拝者どもがざわめきだした。


「やり残したことがたくさんあるからな。死の淵から舞い戻ってきたよ」


 俺の言葉に、司祭どもがたじたじと後ずさる。それにしても布切れなんかかぶって、ほんと気持ち悪いなこいつら。

 ほとんどモンスターじゃん。


「ぐ……ふざけたことを……」


 最初に裁きの雷をくらわした司祭が、力を振り絞りながらといった感じで立ち上がった。

 やはり司祭ともなると、魔法耐性はなかなかのもんだ。

 まあ、殺さないよう、かなり手加減していたんだけどね。お仕置きはこれからなんだから。


「これは神への冒涜だ……きさまら、万死に値する」


 ぷるぷる震えながら、司祭が布切れの穴から俺を睨みつける。


「とりあえず顔を隠してないで、その布を取れよ。気色悪くてかなわん」


 そう言って手をかざし、連中が顔にかぶっている袋を魔法ではぎとる。


「「「「ひ!」」」」

「な、なんなんだコイツ!」

「その力はいったい……」


 素顔を晒した司祭どもが、驚きと困惑の表情を見せる。

 いやはや、予想通りの醜く肥え太った顔ばかりだな。神の名を使って、さんざん贅沢三昧してきたんだろう。

 最初に雷を浴びた男は、光輝教団の幹部の一人だ。確かベルナードとかいう男だったか。

 俺たちの村で仲間たちが惨殺されていたとき、聖騎士団を指揮していたやつの一人だったから、覚えている。

 現場にいようがいまいが、全員同罪には変わりないんだけどね。


「それじゃ、みんな元気よく! 罪を発表していきまっショー!」


 くるくるッと宙を旋回してから、キャロルが「おー!」って感じで右手を振り上げる。

 宙に浮く魔法はないこともないが、かなりレアだ。しかも背中には羽根もあるから、物珍しいんだろうな。

 陽気に飛び回る天使に、この場の全員が注目していた。


「まずは、そこのおっさんたちから!」


 キャロルがそう言って、司祭どもをビシッと指さす。

 すると、司祭たちの影から、ぶよぶよした土色の物体が出現した。その物体は徐々に人型へと変形し、影の主である司祭どもと同じ姿へと変貌する。


「ひぃぃいいいい!」

「な! なんだこれ!」

「我々と同じ姿?」


 側に現れた自分の分身を見て、司祭どもが騒ぎ出す。

 この土色をした生物は、拷問官リュエルのお仕置きでも召喚した、魔界のモンスターだ。

 かつて戦った魔人や魔界のモンスターは、すべて記憶している。俺の堕天属性は、一度戦ったことのある魔界の生物を生成することができるのだ。

 この生物はあくまでも、対象の人物の姿かたちを模倣するだけ。

 しかしキャロルの天属性が暴いた罪を、その生物が生成した脳へと植え込んでやれば!


『うひひひひひ! 光輝教団の権力があれば、超絶美少女に俺様のエクスカリバーを出し入れ放題ぃぃぃいいい!』


 生み出されたベルナードの分身が、服を脱ぎ捨てて叫び出した。


「な! なんだこいつ! や、やめろ! 私の顔で、なんてことを!」


 自分の分身を止めようとしてか、必死にしがみついて取り押さえようとしている。しかし分身は止まらない。


『ぐふふふふふ。大勢に見てもらうの最高! 最後は繋がってるとこを、参拝者どもに見せびらかしてやるぜぇぇええええ! はぁあああ、考えただけでイッてしまいそうだぁああああ』

「ふざけるな! やめろ、こいつ!」


 必死に止めようとしているのは、分身の言ってることがすべて真実だからだろうな。言い訳するのも忘れるくらいに焦っちゃてまあ。


「キッモ! うわ! なんか腰振りだしましたよ、主さま」

「俺たちがやっといてなんだが、見てられんな」


 そうこうしてる間に、他の司祭の分身も動き出した。


『くっそう! 一番にぶち込みたかったぜぇぇぇええええ!』

『あの女、ヤッてみたかったんだよなぁ! 超ラッキーーーーー!』

「ち、違う! これは私じゃない! これは誤解だあああ!」

「ふ、ふざけるなぁぁあああ! 私は神の代弁者だぞ! こんな欲望、私にあるわけないだろ!」


 司祭どもが顔を真っ赤にして、必死に否定し始める。

 だが、分身は止まらない。

 影から現れたもう一人の醜い自分が、狂ったように腰を振り、卑猥な言葉を叫び続けている。


「違う! 違うんだぁああああ!!」

「こ、これは……罠だ! 異端が作り出した嘘っぱちだ!」


 司祭どもが自らの分身に覆いかぶさり、黙らせようと口を押さえつけたり殴ったりしている。

 参拝の観客どもも、なんかすっごい顔しているな。しかし自分らは関係ないって顔は、いただけないよね。


「お次は観客の皆さんにも、参加してもらいましょー!」


 キャロルが宙でクルッと周り、参拝者どもを指さした。

 その瞬間、参拝者たちの影からも同じように土色の物体が湧き上がり、それぞれ分身へと姿を変えた。


「ひっ……!?」

「な、なな! なんだこれは……」

「きゃー! 私たちのまで!」


 参拝者たちは怯えたように後ずさりする。


『俺もヤリてぇぇええええええ!』

『けけけ! あの女の乳、太もも、たまんねぇ! こりゃ今夜のオカズ決定だわ』

『儀式で汚される美少女、最高すぎ! はぁはぁはぁ!』


 男たちの分身が本体の本音を叫びはじめる。


「や、やめろっ! 黙れ、黙れえええ!」

「違うんだああああ!」

「俺はそんなこと思ってない!」


 必死に否定する、参拝者の男ども。隣にいる女に向かって言い訳しているやつもいるところを見ると、妻や彼女的なやつと一緒に来ている男もいるみたいだな。

 てか、こんなイベントにそういう人と参加する?

 まあ女どもも負けていない。


『あの女ばっかり綺麗な顔してちやほやされて、気に食わないんだよぉぉぉおおお!』

『いい気味ぃぃいいいい! 汚れろ、クソ女ぁあああああ!』

『見せ物になって、ざまぁみろぉぉお!』

「ち、違う! 私はそんなこと思ってないし!」

「や、やめてぇぇええええ!」

「なんで私が悪者みたいにならなきゃなんないの! 悪いのはあの女だし!」


 いやあ、清々しいほどのクソばかりが集まったもんだ。

 しかし、そろそろ見飽きてきたな。

 ちょうどそう思い始めていたとき、司祭の一人が俺を睨みつけながら叫んだ。


「こんなもの! すべてこいつのでっち上げだ!」


 自分の心の中を代弁しているから、そんなわけはないんだが。

 でもまあ、この場のほとんどの人間が、同じように醜い本音を晒してんだ。

 こう言えば、他の連中も同調してくるだろうな。


「そ、そうだ! 分身は、あの男が作ったものだろ?」

「だいたい私、何も悪いことしてないし!」

「俺だって! あいつが勝手に分身作って言わせただけだ!」


 まあいいんだけどね。

 これはあくまでも余興。こいつらの醜い本性と罪を全員に共有させるのが目的だ。

 まだまだお仕置きは始まってすらいない。


「はいはい、お静かにー。ここで司祭様から、重大発表がありまーす」


 キャロルが人差し指を立てて、声を上げた。

 とたんに分身たちがもとのぶよぶよした土色の物体に戻り、そして各々の影の中へ溶けていった。


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