表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

告白

(精神的)BL要素あり。苦手な方はご注意を!

「俺なんです」

「……?」

「『カルバ』が言ってた、エスカーダとリブレの『あいのこ』ですよ」

「っ!?」


 体に障ってはいかん、と言ってカルバは部屋を後にした。そして二人きりになり、寝台から出ないままのクロエにレモン水を用意してくれたのでありがたく飲んでいると、いきなりオーべルがぶっ込んできた。


(喉が渇いていたから、一気に飲んで正解だったな)


 下手に残っていたら、動揺のあまり噴いていたかもしれない。クロエが真面目に馬鹿なことを考えているのを余所に、オーべルは淡々ととんでもない話を続けた。


「まあ、父がエスカーダ国王ですし、母もリブレの貴族の娘……それこそ、カルバの妹なんですけどね? 誘拐されて、エスカーダの娼館に売られて。俺を身ごもったばっかりに王宮に引き取られ、王妃に毒殺されて……同じように、毒で死にかけていた俺を助け出して王位につけようとしているのは勿論、利用価値もあるんでしょうが罪滅ぼしでもあるんですよ」

「嫌なのか?」


 台詞だけ聞くとそうとも聞こえるが、会ったばかりで人柄など知らないけれど──何となくだが、本当に嫌ならそもそもやらない気がする。

 そしてそれは当たっていたらしく、オーべルは芝居がかった仕種で肩を竦めてみせた。


「血筋こそ良いですが、逆に言えばそれだけですからね。そんな俺の血筋や存在を、最大限に利用出来るんで別に嫌じゃありません……妻にと『カルバ』が目をつけた令嬢も、まあ、俺らと一緒にいた方がマシなんじゃないかと思ったんですが」

「ジャンヌのことか? 俺ならともかく、利用しようとしてるならやらんぞ」


 飲み干し、空になったグラスを渡そうと差し出すと──受け取ってテーブルに置いたかと思うと、何故だかオーベルに両手で右手を包み込むように握られた。

 訳が解らず首を傾げていると、そんなクロエの目を真っ直ぐに見つめながらオーべルが口を開いた。


「『思った』と言ったでしょう? 過去形ですよ……ジャンヌ嬢を守ろうと、男達を睨んで威嚇するあなたに一目惚れしましたしその後、会ったばかりの俺を信頼して身を委ねてくれたのに惚れ直しました」

「悪趣味だな」

「酷いな」


 熱のこもった告白を一蹴すると、オーペルは苦笑いしながらクロエの手を引き寄せて頬ずりした。先程以上に女扱いの筈なのに、先程のような違和感を感じないのは──見た目は年上だが、精神年齢や言動が年下らしく可愛く思えるからだろうか?


「二人きりの時は『トオルさん』って呼んでいいですか?」

「あのな」

「あなたの復讐が終わるまでは、手を出しませんよ……だからせめて、名前だけでも」


 続けられた言葉に、少し考える。喧嘩はそれなりに出来るが、体格差を考えると手を出されるのは困る。

 この体は、クロエのものではないからだ。そう考えると、名前一つで危険を回避出来るならまあ、良しとしよう。


「解った」

「っ、ありがとうございます、トオルさん!」

「抱きつくな! 手は出さないって言っただろう!?」

「親愛の証ですよ、トオルさん」

「……仕方のない奴だな」


 了承した途端、抱き着かれたのには驚いたが──逆に言うと、それ以上はなかったのでオーベルから離れようと暴れていたクロエは、やがて観念したように抵抗をやめて、ため息をつきながらも相手の腕の中に収まった。

 ……それがますます、オーペルを惚れさせていることをクロエは知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ