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遭遇

 この異世界の武器は剣や槍が一般的で、銃を使うものはあまりいない。火縄銃ではなく弾丸を使っているが、そもそも銃を作る職人の数が少ない、というか一人しかいない。だから、普及しないのだとジャンヌの知識でクロエは知っていた。

 余談だが、部署にもよるが自衛官は最低、年に一回射撃訓練を行っていた。だからクロエも、実際に銃声を聞いたことがあったという訳だ。


「お前も、アイツらの仲間か? 仲間割れか?」


 などと反応を見たくて、挑発するように尋ねてはみたが、仲間割れは違うかとすぐに考えを改めた。クロエを見る少年に、殺気や憎悪などの負の感情が全くないからだ。

 それは正しかったらしく、クロエの視線の先で少年は首を横に振って答えた。


「いえ、違います。俺の保護者が、あなたを助けて連れてくるようにと」

「……保護者?」


 新たな登場人物に、クロエはつ、と眉を寄せた。しかし『連れてくる』発言に、青い瞳が据わる。


「この子……いや、私を利用するつもりか?」

「今更ですよ、逆に、あなたこそ、俺らを利用すればいい。その子の為にも、あなたの為にも」


 ついつい、自分クロエとジャンヌを別に扱っていた。それを少年にさらりと言われ、次いでの提案に「なるほど」とクロエは思った。


「……一理あるな。この子の体が限界みたいだから、運んでくれ。頼む」


 元々のジャンヌは気絶している。クロエと入れ替わり、今は深い深い眠りについている。クロエが呼びかけても、全く反応がない。

 クロエに『交代』していたので逃げて泳ぐことが出来たが、気づけば少女ジャンヌの体は疲労困憊だった。

 だからそう言って、クロエは咄嗟に差し出された少年の腕の中で力尽きて目を閉じた。

 ……そして次にクロエが目覚めたのは森ではなく、前世の中国風の、しかも時代劇で見たような造りの部屋だった。


「やぁ、気づいたかな?」


 声の主は少年と同じ、黒髪と黒い瞳をしていた。年の頃は、四十歳前後だろうか? 前世の漢服のような格好をした、口ひげの似合う美丈夫だ。

 ちなみに気づいたら、クロエもリブロの寝間着なのか白い襦袢を着ていた。少し驚くが、濡れたまま寝たらジャンヌが風邪をひいてしまうので、良かったと思う。

 そんなクロエの考えが顔に出たのかどうか、目の前の男が言葉を続ける。


「着替えさせたのは女官だから、安心してくれ……私はカルバ・ローランだ。リブレ国の外交官として、エスカーダ(ここ)に来ている。彼は、オーベル。私の執事兼狙撃手だ」


 低い、良い声で笑って名乗った男性の後ろには、先程と同じシャツと黒いスラックスを着た少年──オーベルが控えていた。どうやら、リブレという国では漢服が一般的らしい。オーベルも似合いそうだが、森の中で狙撃を行うには不便だからエスカーダ風の洋服を着ているのだと思われる。

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