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令嬢の復讐代行者  作者: 渡里あずま


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習得

主人公の名前を『クロエ』から『イリヤ』に変更しました。

 イリヤは、天才ではない。前世でも現世でも予習復習をし、努力して知識を蓄えている。

 ノートを用意するともっともらしいことを言ったが、仮にも首席を争っている──からではなく、単に嫌いなのでユージンに手の内を全て晒したくない。

 とは言え何も明かさずに万が一、勉強会が続いたら困るのでイリヤは約束の日、授業で普段使っているノートをユージンに差し出した。


「これは……板書を取っているのでは、ないのだな」

「ええ。そうすると書いて満足し、授業を理解出来ないので……授業の間は、先生が話す内容をこうしてまとめています」


 嘘ではない。しかし、本当のことも言っていない。

 これだけなら効率の良い方法で学ぶ、天才寄りの秀才だと『勘違い』されそうだが──イリヤはこれを持ち帰り、参考書代わりにして別のノートに疑問点や回答を書き込んで覚えている。首席が取れたのはこうして努力した結果だし、だからこそ授業用のこのノートを渡しても問題ないのだ。


「算術は、授業の内容と言うより計算式なのだな」

「復習するにしても、とにかく数をこなすのみですので……殿下は、どんなノートを?」

「ああ……私は、授業は聞いていれば大体、覚えるから」

「すごいですね」


 授業中、観察していてノートを取っていないので、そんなことだろうと思った。けれど、ユージンを褒める為にあえて感心したように言うと、ユージンは軽く目を瞠った。それから、照れたように笑って言う。


「ありがとう」

「とんでもないです。本当に、すごいですから」

「君こそすごいよ。努力出来ることは素晴らしい」

「そんな……殿下こそ、ありがとうございます」


 イリヤも微笑んでお礼を言うと、隣の席に座っていたユージンが笑みを深めた。

 図書室なので貸し切りには出来ず、王太子が来たことに遠慮して数こそ少ないが、他の生徒達もいる。そして和やかに、静かに勉強するユージンとイリヤを邪魔しないように、しかし気にはなるのか静かに見守っている。


(ラウラ達も、最初は図書室で勉強していたそうだが……大きな声で騒いで、司書に注意されて。その後は、生徒会室で勉強するようになったんだよな)


 ラウラは、ユージンとはこういう勉強会をしていない。彼女も、ユージン同様に授業だけで大体、理解出来るようだ。しかし頑張っているアピールはしたいが、小賢しく思われるのが嫌で、ユージンではなく、彼女をチヤホヤしているハリド達と時たま、勉強しているらしい。


(代々の国王と王妃は、学生時代にこうして勉強して仲をアピールしたらしいんだがな)


 ちょっと調べれば解るのに、いや、知っていてもラウラとしては、ユージンに『可愛い』と思われることを優先したようだ──結果、彼女は今日王妃に呼び出されている。この勉強会を邪魔させない為でもあるだろうが、ハリドとソフィアの婚約を解消させたことを窘める目的もあると思う。


(……アイツは、うまくやったかな)


 ユージンと話しつつ、イリヤは自分とは別行動を取っているオーベルに思いを馳せた。

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