2.王都到着!
僕らは一週間の旅路を終えて、無事王都に到着することが出来た。
選考会は明日となっている。予定より少し遅れたけど、間に合うのでオッケーだ。
とりあえず今日は明日に備えて各自休むことになっている。僕は明日の服装なんかを準備して、今日は早めに寝ようかなと考えていると、部屋のドアがノックされる。
「アカリ、どうしたの?」
ドアの前にはアカリが立っていた。出発したときのような軽装を身に纏っている。
「いや、あの、明日から忙しくなるかもしれないでしょ?」
「そうだね、もしかしたら明日の選考後にはすぐに出発するかもしれないし」
「だから、その、今日のうちに王都を観光しない?」
明日以降が忙しくなると考えれば、アカリの言う通り今日くらいしか観光する日にちはなかった。王都に来るのは今日が初めてで、これからも来ることはきっと少ないだろう。
「そうだね、それじゃあ一緒に行こうか」
「やった!」
★
「なんだか、凄い賑やかだね」
外では祭りのように出店が並んでいた。それは王都中央にたつ城に向かって一直線に伸びていた。きっと明日の選考会の前夜祭なのかもしれなかった。年に一度の、その年の英雄が集まる行事であるから、承認にとっては稼ぎ時でもある。祭りにしておいた方が何かとみんなの都合がいいのかもしれない。
「アカリ」と呼んで僕は手を差し伸べる。
「え、も、もう子供じゃないよ!」と顔を赤らめ言う。
「でもこんな人込みだしさ。アカリはかわいいから狙われても困るしね」
「かっ、、ありがとう」といってアカリは手を握る。
僕らはそうしていろんな出店をまわり、噴水のある広場へと向かった。ここにはベンチがあって、休憩するには快適な場所だった。
「いやーいろいろ買っちゃったね」
アカリが出店の串を片手に喋る。とてもご機嫌なのだろう。
「いいリフレッシュになったね」
「ねえ、モモ。モモはさ、、」
横を見ると、いつになく真剣な顔したアカリがこちらを見ていた。
「す、好きな」とアカリが言いかけた瞬間。
「泥棒だー!!」
「「え??」」
叫ぶ声の方角を見ると、出店の一人が、黒い服の男が走って逃げる姿に指をさし叫んでいた。
「盗人だ!」
僕はすぐに走り出した。アカリも後ろをついてくる。
盗人は人込みを強引に分けながら、路地へと走っていった。僕らはそこに続くと、人気の少ない行き止まりの路地だった。
「終わりだ、盗んだ品を置いていけ」僕がそう言うと、盗人はにやけた笑みを浮かべる。
「ヒヒッ、終わりはお前らだ」そういうと、路地の入口から盗人の仲間と思われる人間が数人現れる。
「罠だったか」
「ヒッヒ、そうさ、正義感の塊見たうな奴らをおびき寄せて、金品をかっぱらうのさ」
「なるほど、僕らは格好の餌食ってわけか」
「あぁ、お前上級階級か? ヒヒッ、お宝が釣れたぜ。黙っておいてけば、命は見逃してやる」
「アカリ、」
「わかってる。こいつら倒せばいいんでしょ」アカリは腰に備えた短剣を抜く。
「そうなんだけど、実はね」
「え? どうしたの?」
「僕、県とか全部忘れちゃった」
「え⁈ どうしてよ!」
「いやぁ、戦うって思わないじゃん」
アカリは僕の無能っぷりに飽きれたのか、はぁとため息をついている。
「ごめん、失望しないでくれ」
「しょうがないなぁ、あたしに任せて」と言って、アカリは僕の前に出る。
「ヒッヒ、お嬢ちゃん一人で戦うのかい?」
「そうだけど?」
「可哀そうだねぇ、彼氏さんには失望だねぇ」
盗人が僕らを煽る。真実ではあるのだけれど。
「か、かれ、違うし! 彼氏じゃない!」
なんだか、悲しいよ、アカリ。。。
「ち、ちがうよモモ! そう言う事じゃなくて! もう!」
アカリは短剣をまっすぐに盗人のボスに向ける。
「訂正させてもらうわ。私、一度もモモに失望したことなんてないから」
アカリはそういって走り出す。
「お前ら、一斉に攻撃だ!」
ボスの命令で、部下二人がアカリに飛び掛かる。アカリは二対一の構図だが、盗人の斬撃を華麗にかわす。そしてスキを突き、二人の鳩尾を殴り気絶させる。
「雑魚ね、あとはあんただけッ」とアカリが言いかけた時、盗人のボスは魔法のファイアボウルを飛ばしてくる。あまりの不意打ちにアカリが反応できていなかった。僕は何も考えずに飛び込んだ。
「アカリッ」
ファイアボウルは僕の背中に命中した。
「モモ! 大丈夫⁈」
「なんとかッ、、、」
「あんた! ズルいじゃない!」
「ヒッヒ、戦いにズルいも何もないぜ。あんた、命を取り合う戦いは初めてだろう」
「ッ! それが何だっていうの」
「甘いんだよ、その甘さが命取りになる」
そう言うと、先ほど気絶させた盗人が起き上がっていた。
「さあ、次は本気で行くぜぇ」
盗人は魔法を連発し、部下は剣で襲ってくる。アカリは何とか全てを防ぐが、僕をかばいながらでは限界があった。次第に形勢は逆転していき、盗人の件の一振りが、アカリの右腕に傷をつける。
「アカリッ!」
「さすがにきついかも、、、」
「ヒッヒッヒ、さぁ、もう終わりだな」
僕らは絶体絶命のピンチだった。こんな時何もできないなんて。何か秘策があれば、、、
と思っていたその時だった。じょううくうに光り輝く何かが飛来した。
「レディーを気づ付けるとは、いただけないな」
男の声が空から下と思ったら、光り輝く何かが降りてきて、名のごとく高速で盗人たちをなぎ倒す。
「だ、だれだ!」
「通りすがりの、勇者かな」
綺麗な声が聞こえたと思えば、美形の顔立ちを持つ人がそこに立っていた。琥珀色の瞳を持ち、綺麗な金髪を要するいで立ち。僕とはひどい違いだなと感心さえもする。
「勇者~?」
「そんなことはどうでもいい。お前はこれから死ぬのだからな」
「ヒッヒ、なめるんじゃねえぞ、ファイアボオオル」
「そんなもの、切ってしまえばいい」
そういって勇者は、ファイアボウルを一振りでかき消し、高速で盗人のボスへと駆け寄る。
「や、やめてくれっ!」
「すまない、ボクは甘くないんだ!」
盗人は勇者の一振りで命を絶たれた。
勇者は血を振り払うと、こちらに歩いてくる。
「大丈夫ですか? ボクの魔力じゃこの程度しかできないけど」
勇者はアカリに手をかざすと、淡い緑の光を発した。
「回復魔法、、、」
「そう、止血程度しかできないけど。しっかりこの後病院へ行ってくれ」
勇者は治療を終えた後、盗まれた品を返してくると言って、すぐに去ろうとする。
「あ、あの! 名前は何ですか?」
「名乗るほどでもないよ、それに、すぐ会うかもしれないしね」
そういって綺麗な顔で、誰もが惚れるであろう笑顔を見せた。僕はその顔を見て、アカリより先に「かっこいい、、」と呟いてしまうほどだった。アカリはそれを聞いて、なにか悔しがる顔をする。
しかしアカリは我に返る。
「ありがとうございます!」
「あぁ、また会おう」
そういって勇者は立ち去った。
それが僕と勇者のファーストコンタクトであった。
見切り発車で何も考えてないので、王都までの道中のエピソードを書きたかったのに
何も思いつかずスキップしました。なんか番外編でかけばいいか!