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1.旅立ち

 ~数年後~



「父上、行ってきます」

「本当に行くのだな」


 僕、モモ・インフリートは十二歳を迎え、この街を旅立とうとしていた。


「必ずや、魔王を倒してきます」


 二年前に起きた世界的なスタンピード。その悪の元凶となるのが、六年前に誕生したと言われる魔界に降り立った魔王らしい。その魔王を倒すべく、今までいがみ合っていた各国の王が話し合い、自国の代表となる人物たちを魔王退治に向かわせるという話になったのだ。見事鬼を討伐できた債は、この世の全てを与えられるという褒美が付いてくるらしい。しかし、この六年間、いまだ魔王討伐には至っていない。

 数日前、僕の屋敷に一通の手紙が届き、僕がその選考に選ばれたことを告げられた。今年の選ばれた子供たちを集めるとのことなので、王都に来てほしいという内容だ。つまり魔王討伐に向けての説明が行われるとのことなのだろう。


「モモ—、置いてかないでー!」

 赤髪の少女、アカリが走ってくる。

「私も選ばれたんだからね!」

「わかってるよ、置いてかないって」

 彼女も僕と同じ日に、選考の手紙が届いたらしかった。僕からすれば、【戦神】である彼女は当然であった。

「モモ、無理するんでないぞ」

「モモちゃん、怖かったらいつでも帰ってきてね」

 お爺ちゃんとお婆ちゃんが泣きながらにお見送りをしてくれる。僕はかなりのおじいちゃんおばあちゃんっ子だったからしょうがない。僕も二人と離れるのはとっても悲しかった。

「二人とも、帰ってきたら、いろんな話をするね」

二人から「モモ—」と叫び泣きが聞こえる。

「モモ」父が近くにより話しかけてきた。

「父さん」

「必ずしも魔王討伐に向かわなければいけないという事ではないからな。今回の王都遠征も、まずは魔王討伐の話を聞いてから、意思のある者のみが向かうのだ。強制ではない」

「わかってる。でも僕は、この街が好きだから」

「この人も寂しいのよ。ハッキリ言いなさいよあなた」と母が言う。

「イ、イザベラ、違う、寂しくなんか」

「モモ・インフリート」

「はい。母上」

「しっかりね、体に気を付け、必ず帰ってくること!」と母が僕を抱きしめながらに行ってくる。

 僕はしっかりと頷き、目元に浮かんだ涙をぬぐった。

「アカリ、行けるかい?」

「うん、私も両親との別れは済ませたし」

「では行ってきます」

 こうして僕らは旅だった。





 移動は父が用意してくれた馬車で向かう事となった。王都までは丸一週間はかかる。手紙に書いてある日付には二日前に着く日程で出発したために、十分余裕があるだろう。馬車の運転手も、ベテランだと聞いてるから問題はないだろう。

「モモ、王都楽しみだね」アカリが笑顔で聞いてくる。

「そうだね。僕はちょっと不安だけど」

「え? なんで」アカリが本当にわからないというように聞いてくる。

「アカリは当たり前だけど。僕のこのジョブじゃね。何故選ばれたんだか」

 言いながら僕は自分のスキル表を見る。


名前:モモ・インフリート

種族:ヒューマン

ジョブ:桃太郎


総合:C+

HP:1000/C

物理:C

魔法:C

俊敏:C

運:B


スキル

【勇気】・・・固有スキル、土壇場で勇気が上昇する

【異種族友愛】・・・固有スキル、異種族に好かれやすい、代わりにヒューマンに少し嫌われやすい

【???】・・・???


 勇気がちょっと上がるってなんだ。他にも明かされていない固有スキルもある。基礎ステータスもアカリより劣っている。オンリーワンジョブの悪いところである。自分のステータスを見ると何とも落ち込んでしまう。ちなみにアカリのはこんな感じだった。


名前:アカリ・フロスト

種族:ヒューマン

ジョブ:戦神


総合:A

HP:3000/B(A(6000))

物理:B+(S)

魔法:F(使用不可)

俊敏:B(A+)

運:C


スキル

【物理特化】・・・固有スキル、物理攻撃強化&無効

【武神術】・・・固有スキル、あらゆる武器を扱える。身体強化(基本ステータスから200%上昇)

【魔法弱化】・・・耐魔法攻撃弱体&常時魔力枯渇



「モモ、落ち込まないの! モモはきっと選ばれた人なんだから!」

 落ち込む僕を見て、アカリが励ます。幼馴染の女の子に励まされるなんて惨めでしょうがない。

「ありがとう。まあなんとかなるか」

「そうそう! いざとなれば私がどうにかするしね!」

 アカリはそういって細く綺麗な力こぶを見せる。

「坊ちゃん、今日は隣町で一泊でよろしいかな」と運転手が後ろをみなが言う。

「あぁ、それで頼むよ」


 運転手は肯くと、馬車が少しスピードを上げた。


「とりあえずは、仲間探しだよなぁ」

「え?」

「当然だろう? 二人だけじゃ無理だからね」

 そう言うとアカリは下向きにごにょごにょと聞き取れない何かを言っている。


 アカリは何があっても俺についてくるって言ってるし、アカリを守るためにも、もう二、三人は仲間が必要だろうな。このジョブはみんなが思うよりきっと弱いジョブだ。オンリーワンジョブって名前だけが突っ走ってる。王都で選ばれた人たちを見ながら、何人かはスカウトしなきゃな。

 僕はそう決心を決め、隣町に着くまでをアカリと一緒にゆっくりと過ごした。

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