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元教師は異世界で火を焚べる 〜女神の祝福を受けた死神〜  作者: 藤白ぺるか@4/1美容スキル第1巻発売
第1章

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第2話 冒険者ランク

 酒場に到着すると、俺は黒エールと呼ばれるビールを頼んだ。

 店員にドン、とジョッキで運ばれてきたそれを手に取るとグイッと喉へと流し込む。


「ぷはぁっ、これこれ」


 この黒エールとは、簡単に言えばドイツビールに近い。ビターなチョコやナッツのような風味があり、そこまで苦くはないフルーティな味。ただ、俺はこの黒エールが大好きなのだ。


「おいおい、またか。また黒エールを飲んでるのか」

「おいおいじゃねーよハゲ。エールが不味くなるだろうが」

「俺はハゲてねぇ。わざとこうしてるんだ。スキンヘッド、カッコいいだろう」

「はんっ、髪は伸ばしてこそだろ」


 俺が座るテーブルにやってきたのが大柄でシルバーの鎧を着込んだ斧使い。

 巷では『巨斧のバルドア』と呼ばれる男。年齢は二十半ばらしいが俺には三十後半に見える。ギルドマスターをやってそうな見た目だ。


 バルドアは黄金色のエールが入ったジョッキを片手に勝手に俺のテーブルへと腰を下ろした。


「この広いレッドリアでも黒エールを好んで飲んでるやつはお前だけだろうな」

「別に俺が何を飲もうが良いだろ」


 座ると同時にバルドアの胸元で揺れるのは、銀色のタグプレート。

 このタグプレートは冒険者のランクを一目でわかるようにするものだ。そしてそこに刻まれていたのは7という数字。


 冒険者にはランクという優劣を決める数字がある。


 1から10まであるランクは、その中でもさらに色分けされており、1から2までは白。3から4までは銅。5から6までは銀。7から8までは金。9が白金。そして最高ランクである10は黒とされている。


 なぜ黒が最高ランクなのかと疑問を持たれるが、どの色にも染まらない唯一の色ということで黒らしい。まあ日本でも黒帯とかあったからな。


 そしてバルドアのランクが6ということは銀級上位。簡単に言えばちょこっと強い冒険者ということになる。一方の俺は4。銅級の上位ということになる。ランクだけを見ると強いとは言えない。


 そんなバルドアは十歳近く年上で、さらに冒険者ランクも上なのに、俺がこんな言葉違いをしても怒らない懐の深い男でもある。


「そういやデッド、聞いたか? この街に近々『豊穣の剣(ロスメルタ)』がやってくるらしいぞ」

「あのゴールド集団の『豊穣の剣』か?」


 バルドアが話した『豊穣の剣』とは、冒険者が徒党を組んで生死をともにするパーティーの名前だ。パーティーは何人で組んでも良いが、『豊穣の剣』は四人だと聞いている。

 そしてそのパーティーメンバーの全員が金級。バルドア以上の強さを持つ冒険者が四人もいるのだ。通常パーティーを組んだとしても、その個人の冒険者ランクにはばらつきが出る。しかし『豊穣の剣』は全員が強いという高ランクパーティーらしい。


 俺が住むレッドリア王国でも有名なパーティーで、王都のギルドを中心に活動していると聞く。


 ちなみにこの世界には四つの国がある。

 レッドリア王国、ブルジール帝国、イエロミス公国、グリンドル共和国。

 それぞれ特色は違うが、レッドリア王国は長く歴史が続く王族が統治する国で、女神を信仰している国でもある。


 俺はそんな国で生まれたが、今拠点としているのが、王都を含め三大都市と言われるレッドリアでも西側に位置する『商業都市オランジール』だ。商業が盛んで、ここで買えないものはないとまで言われている。

 もちろん買えないものもたくさんあるが、そういう謳い文句で人を呼び寄せているのだ。


 そんな商業都市にやってくる『豊穣の剣』。何のために……というのが疑問だ。


「まだ公にされていない秘密の依頼があるらしい。その依頼を受けに来るってよ」

「はぁん……? ってことは、強い魔物とでも戦うのか?」

「さあな。俺だって風の噂で聞いただけだ。詳しくは知らん」

「へっ。綺麗どころのパーティーが何の用ですかねえ」

「——やっと見つけた! デッド!」


 と、『豊穣の剣』の話をバルドアとしていたところ、バン、とテーブルを両手で叩いてきた人物がいた。

 桃髪を肩まで伸ばし、太ももがバッチリと見える露出高めの黒革の衣服を着込んだピンクゴリラ——通称ピンゴリ。


 可愛い顔に似合わず、背中には自分の身長と同じ長さの大剣を背負い、それを軽々とぶん回すことから、俺は勝手にそう呼んでいる。もちろん直接言うと怒られるので言わないが、ともかくアホみたいな怪力の持ち主である。バルドアとロッティが一緒にいるとそれだけで仰々しい。


「ピン……ロッティか。もうちょっと静かにしてくれ」

「昨日は捜しても見つからないし、どこに行ってたのよ!」

「なんでお前にいちいち言わないといけないんだよ」

「デッド、あんたね……! 良いから言いなさい!」

「オークの討伐だよ、バカ」

「バカって何よ! バカなのはデッドでしょ!」


 唾が飛ぶ勢いで怒鳴り散らすロッティ。彼女の本名はシャルロッテだが、こいつには似合わない清楚な名前だ。

 だから俺はロッティと呼んでいる。ただ、地方貴族の娘らしく、礼儀作法はしようと思えばできるとか。いつもぎゃーぎゃーうるさいので、嘘ではないかと思っている。


「答えたのに怒るなよ。怒るとシワが増えるらしいぜ? ババアになったらそんな太腿がバッチリ見えた露出ファッションもできなくなるな」

「はぁ〜!? 私まだ十七歳なんですけど! あなたと同じでめっちゃ若いんですけど! シワなんか人生で一度もできたことないんですけど!」


 ああ、もううるさい。

 良いから早く俺を探しにきた理由を教えて欲しい。黒エールが不味くなるだろう。


「んで、何しにきたんだよ。ほら、バルドアだってお前のせいで眉間にシワが寄ってるぞ」

「俺のシワは最初から寄ってる」

「あんたね、昨日約束してたでしょ! 木の実がたくさん売ってる市場に一緒に行くって!」

「ん、そうだったか? そうだったっけ? ……そうかもしれない」


 本当に覚えてない。記憶にございません。


「はあ……もう、それ飲んだら行くからね。早く飲んでよ」

「馬鹿野郎、黒エールはゆっくり飲むのが良いんだろうが。普通のエールと違って一気に喉通して楽しむもんじゃねえ」

「知らない! 私お酒なんてまだ飲んだことないし!」

「なら一回飲んでみるか? うまいぞ」

「えっ……デッドの、それを……?」

「そう言ってるじゃねえか」


 俺がロッティの前に黒エールが入ったジョッキを出すと、なぜか彼女はもじもじし始める。

 酒に興味がありそうだから差し出したのだが、やっぱり初めて飲むお酒は恐いんだろうか。


「おい、どうした。最初は一口でいい。このあと動くのに酔ったら大変だからな」

「……わ、わかったわよ」


 どの言葉で決心がついたのかわからないが、ロッティはジョッキを手に取り、恐る恐る口をつけた。

 すると彼女の口の周りに白い泡がついて、泥棒のような顔になった。


「あれ……なんだか思ったよりさっぱりしてるかも」

「だろ? ジュースとまではいかねぇが、飲みやすい酒だからな」

「あ……うん。そう、かも?」

「これを気にロッティもお酒デビューしようぜ」

「うん……じゃあ、今度、少しだけ、ね」


 さっきまでの勢いはどこへやら。お酒を飲んだ影響か、はたまた何が彼女に刺さったのかわからないが、ともかく落ち着いたようだ。


「お前、ずっと口に泡ついてるぞ」

「はっ!? なな、なに勝手に乙女の口に触れてるのよ! この変態!」


 俺は指でロッティの唇の上についていた泡をとってあげたのだが、感謝されるどころか顔を赤くして怒られた。

 さらにその泡を口に入れると、ロッティの怒りが頂点に。まあ確かにキモい行動だったかもしれんが、泡でも黒エールだ。勿体無いだろ。


 その後、俺は残った黒エールを飲み干すと、バルドアと別れを告げ、ロッティと共に酒場を出た。


 ロッティは、俺が冒険者として登録した二年前、一緒に最初の依頼を受けたやつだ。

 新人がいきなり死なないよう強制的にパーティーを組まされ、試験監督が一名付いて雑魚い魔物と戦うのだ。


 俺たちはその試験を突破し、晴れて冒険者としてデビューした。

 ロッティとはその時からの付き合い。俺はソロなので一緒に依頼をこなすことは稀だが、どうしてもと助っ人として呼ばれた時には手助けくらいはしている。


 ちなみにロッティの冒険者ランクは銀級の5だ。俺よりも上で、三人組のパーティーを組んでしっかり冒険者をやっている。


「…………どうしてあんたは冷静なままなのよっ」


 酒場を出て市場へ向かう途中、ロッティが顔を赤くしてそんな事を言う。


「冷静って、何のことかよくわからないが、そりゃまあ俺は大人だからな」

「私と変わらないでしょっ」


 四十六年生きてるからな。ちょっとやそっとじゃ驚くことは少ない。確かに転生したての時、母さんの美乳を吸うことに驚きと抵抗はあったが、それも次第に慣れた。


「てか、お前本当に顔赤いぞ? 熱でも出たか?」

「ちょ、何!? おでこ触らないでよ! 子供扱いしないで!」


 不安になったので、ロッティの額を触って熱があるかどうか確かめたのだが、それほど熱くなかった。

 そして俺が触れた事に対しプンスカするロッティ。


「そっか、体調悪いなら早めに言えよ」

「そういうことじゃないのに……」


 ロッティは口をとがらせて、俺の理解できないことを言う。

 昔から、女の言う事は本当にわからない。教師だった頃に接していたクソ女子高生みたいだ。だるいったらありゃしねえ。



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