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女王とメイドと秘密の地下道:第八話~フレイジアの変な夢~

フレイジアは、自身が夢の中にいる事を理解していた。それは、不思議な感覚であった。昔、誰かに聞いた幽体離脱とかいう怪現象の体験談に似てる・・・ふと、そう感じた。なぜなら、フレイジアの見下ろす先には、広場に設置された壇上で大勢の国民に向け何かを演説する自分がいて、それを傍観しているのだから。言葉は聞こえない・・・民衆のざわめきも無い・・・音というものが元々から存在しないかのように静寂であった。そんななか演説する自分の姿、身振り・・・そして、表情は、何というか必死であった。それ、眺めるフレジアは、夢なのだから起きてしまおうとしたが、いつでも起きられるのだから続きをもうしばらく眺めていてもいいかとぼんやり考えていた。フレイジアは、演説する自分の様子に少し違和感を覚える・・・必死と表現したことが間違いだと気が付く。


「(あの演説してる私・・・なんだか焦つてるわね・・・そして、何というか辛そうね・・・)」


自身を傍観する方のフレイジアは、声に出したつもりだが・・・演説している自分にも聴衆にも音として届いていないようであった。フレイジアは、少し変な感じではあったが夢とわかっていたので気にしなかった。

ただ、演説する自身の様子・・・先ほど口にして表現した様子の原因に、なんとなく見覚えというか心当たりがあった。それは、隠し通路の地下道でフレイジアが必死に耐えていたモノであった・・・


「(ちょ・・・ちょっと貴女まさか!いえ私か?どっちでもいいわ!早く演説を早く終わらせなさい!早く辞めなさい!!)」


傍観するフレイジアは、慌てたように大声で演説する自分に向い叫んだ。しかし、声が届いた気配は全くない。

演説するフレイジアは、ソワソワしながら足を摺り合わせたり腰を落ち着かなく動かしたりしていた。内股になり臀部を後に少し突きだすようにして俯き、演説台にしがみつくような姿勢になりながら演説を続けていた。必死に顔を上げ民衆へ何かを訴えかけるフレイジアの額には油汗がにじみ、一言を発するのですらとても辛そうであった。


「(まずいわね、あの私・・・絶対オシッコ漏らしそうなほど我慢してるわ!って何て夢なのこれ!!)」


自分自身の夢とはいえ、内容の酷さにに怒りさえ覚える。そして、わかりきった結末を見る前に目覚めようとしたのだが・・・


「(あれ?どうやって起きるのかしら・・・ちょっと起きなさいフレイジア!起きるのよ!!)」


傍観しているフレイジアは、必死で暴れたり自身の頬を両手で挟むように何度も思い切っり叩いてみたりした。しかし、そのどれもが感覚が無く夢の中であると改めて強く理解するだけであった。

そのとき今まで無音だった夢の世界に突然、民衆のざわめきが聞こえ、大きな歓声と笑い声が木霊した。


「(な、なに!!)」


驚いたレイジアは、痛みを感じない頬を叩いていた手を止めて声の方へ慌てて目を向けた。


「(あ、あ~やってしまったのね・・・やっぱりそういオチなの・・・もう!何なのこの夢は!!)」


傍観しているフレイジアの目線の先では、先ほどまで演説していたフレイジアが尿意に耐えきれず、ついに民衆の眼前で”おもらし”してしまったようだった。情け無く泣き崩れる自分自身を他人事のように呆れて傍観していたフレイジアであったが・・・ふと、下半身に違和感があること気が付いた股からお尻にかけて何か生温かいものがどんどん広がっていくような感じだった。


「(う、うそ・・・これって!)」


そう思った瞬間、フレイジアは自分がベッドで寝ている事に気が付いた。


「(やっと・・・目が覚めたのね・・・なんて馬鹿な夢をみるのよ・・・)」


フレイジアは、少し安堵した。しかし、それも束の間の事であった。フレイジアは、下半身の違和感が消えていない事に気がついた。さきほどとは違い冷たく濡れた物がお尻の辺りに纏わり付いている。その感触にフレイジアは、自分が”おねしょ”をしてしまったことをハッキリと痛感させられた。


「(ど・・・どうしましょう・・・まさか、昨日の”おもらし”だけでなく”おねしょ”までしてしまうなんて・・・)」


フレイジアは、どうしたものかと思案したが・・・よい案はおろか言い訳すら思いつかなかった。


「おはようございまーす!フレイジア様!もう、朝食の時間ですよ~!」


唐突に、元気な声がフレイジアの私室に響いた。


「(メ・・・メル!まずいわ・・・”おねしょ”なんてバレたら・・・)」


フレイジアは、掛け布団をしっかり掴むと顔を隠すようにその中に潜り込んだ。


「フレイジア様~寝坊ですよ!ほら、早く起きて下さい。大切な公務もあるんですから!」


メルは、元気いっぱいな声で起きるよう話しながらカーテンや窓を開けているようだった。

フレイジアは、無言で布団に隠れるように潜ったままであったが・・・どうにかメルに、この私室から出てもらう方法がないかと色々考えていた。


「(どうしたものでしょうか・・・このままでは、余計な心配をかけてしまう。メルのことだから、きっと大袈裟に・・・)」

「スンスン・・・あれ?なんか・・・スンスン・・・」


窓を開け終えたメルは、なにか気が付いたのかしきりに部屋の臭いをスンスンと鼻を鳴らし嗅いでいた。そいして、徐々にフレイジの寝ているベッドに近づいて来た。


「スンスン・・・この臭い・・・フレイジア様もしかして!!」


なにかを確信したよう声を上げたメルは、フレイジアの潜っていた掛け布団を勢いよくはぎ取ってしまった。


「やっぱり・・・もう、”おねしょ”したなら正直に言って下さい!私の弟妹だって”ごめんさい”ってすぐに言えますよ!まったく、子供じゃないでしょフレイは!!」


メルは、普段からは想像出来ないほど声を荒げていた。そんなメルにフレイジアは、すっかり怯えきってしまつていた。


「そもそも、なんで隠すんですか!バレないと思ったんですか?なんで、黙っているんです!理由があるなら言ってみてくださいフレイ!!」


凄い剣幕で怒るメルの台詞であったが、フレイジアは少し違和感を覚えた・・・なぜか、前にも同じこと聞いたことがあるような不思議な感じであった。

そんなことを思っているうちにベッドから追い出されたフレイジアは、ベッドの横に立たされていた。

先ほどまで、自分が寝ていたシーツには、丸く大きな黄色い染みが出来ていた。それは、少し濃い色をした乾いた染みがいくつも重なった上に薄黄色の濡れた染みが広がつている・・・まるで、何回も”おねしょ”で汚しては乾かしてを繰り返したような染みであった。


「(えっ!!”おねしょ”は今日が始めてのはずじゃ・・・)」


そう、声に出そうとしたフレイジアを遮るようにメルがシーツを半分に畳むようにして勢いよく持ち上げた。


「はぁ・・・こう毎日”おねしょ”されては困ります。そのたびに隠そうとして・・・フレイ貴女、何歳(いくつ)になったんですか?今日という今日は、もう皆さんに見てもらいますからね!いいですねフレイ!!」


そう強い口調で言うとメルは、フレイジアの”おねしょ布団”を抱えてバルコニーの方にスタスタ歩いて行ってしまった。呆気にとられていたフレイジアは、しばらく呆然としていたが自身の恥ずかしい”おねしょ布団”が城下から丸見えになってしまうと慌ててメルを止めようと追いかけた。


「お願いメル!やめて!そんな恥ずかしいことしないで・・・もう・・・もう、”おねしょ”しないから!ううぅ・・・!お願いじます・・・”おねじょ”もうじないから!正直じきに”ごめんなさい”って言うから・・・ひっ・・・ううっ・・・」


メルに必死で、やめて!と懇願したフレイジアは、子供のように泣き出してしまった。


「本当ですか?フレイ?約束が出来ますかフレイ・・・フレイ・・・フレイジア・・・」


 フレイジア・・・


 フレイジアさ・・・


 おき・・・フレイジアさま・・・


 起きて・・・フレイジア様・・・


 起きて下さい!フレイジア様!!


「うぅっ・・・んっ・・・ごめんなさいメル・・・お・・・しょしてしまっ・・・ごめんさい・・・」

「フレイジア様!フレイジア様!目を覚まして下さい!もう朝食のお時間ですよ!」

「あ・・・あれ?メル・・・あ、ごめんなさい!”おねしょ”して隠そうとして・・・だから・・・」

「えっ、おねっ!?おねしょ!!そんなことって・・・もぅ、寝惚けてるんですか?しっかりして下さい・・・」

「へっ?ゆ、夢?だったのねよかっ・・・あっ!!」


だがフレイジアは、全て夢であったと安堵することが出来なかった。なぜなら、夢と同じように臀部の辺りが冷たく濡れているのを感じたからであった。


「濡れてる・・・私っ・・・やっぱり”おねしょ”して・・・ううっ・・・ごめんなさい・・・」

「ま・・まさか!本当ですか!?あ、あの掛け布団を取らせてもらっても?・・・し、失礼しますね!」


今にも、泣き出してしまいそうなフレイジアの様子にメルは、驚きながら掛け布団をゆっくりとめくった。


「あ、これって・・・フレイジア様、安心して下さい”おねしょ”じゃありませんよ。”月のもの”です。」

「え・・・あ、あっ!!そ、そうでした。うっかり付け忘れて・・・でも、シーツを汚してしまったわ・・・」


フレイジアは、自身の失態に顔を真っ赤にしていた。そろそろ”アレ”が始まる頃だと自覚してたが昨晩は疲れの為か、うっかり対策するのを忘れたまま眠りについてしまっていたのだった。


「シーツとパジャマは、私が洗っておきますから着替えて早く朝食を取って下さい。もう、7時ですよ。8時から公務ですよね?でも、あまり無理はしないで下さいね。」

「そ、そうね。ごめんなさいメル。本当にありがとう。」


そうして、慌ただしく朝食と身支度を済ませたフレイジアは急いで執務室へ向った。執務室には、午前8時丁度にたどり着いたのだが・・・すでに、執務室の前には、ガウェインとミルケネス、そして昨晩、自分を魔物から救ってくれた女騎士の三人が待っていた。


「お、おはようございます。お待たせして申し訳ありません。さぁ、中へ入って下さい。」


少し息を切らしたように朝の挨拶を交わしたフレイジアは、三人を執務室に招き入れた。


こうして、フレイジア女王の新しい一日が始まろうとしていた。


~女王とメイドと秘密の地下道編・終わり~

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