女王とメイドと秘密の地下道:第一話~なぜ私が・・・~
~ここまでのあらすじ~
千年の歴史を誇るヴァレンシア王国は、バレンスト13世亡き後、民衆から女狐と蔑まれた女王ヒルダレイアの悪政に国は疲弊し腐敗した恐怖政治は、打倒ヒルダレイアを掲げる王都ヴァレエイドでのクーデターの火種となっていく。それを指揮しのは、10年前に病で夭折したはずの女王ヒルダレイアと亡き前王バレンスト13世の娘フレイジアであった。
フレイジアとそれに賛同する者達による革命は成功した。ヒルダレイアの処刑の後、フレイジアが新たな女王としてヴァレンシア王国の再建を誓う。それは、民衆の歓喜で迎えられた。
そんな中で、フレイジアは自身のとある恥ずかしい秘密に気が付いてしまう・・・可愛いメイドを親友兼女王専属にした女王フレイジアによる国の立て直しが始まった。
今、正にフレイジアの処刑が始まろうとしていた。国の民を思い多くの改革をしてきたはずの彼女は、母ヒルダレイアと同じ薄汚れた麻のワンピーズのような服を着させられ、背中を叩かれるようにして荒っぽく断頭台の前に連れ出されきた。
「私が、改革を断行したのは全て民を思えばこそ!何故、私が処刑されねばいけないのです!現に国は豊かに・・・そんな!何で!?」
精一杯の声を張り上げて、主張するフレイジアの目に飛び込んできたのは貧困に喘ぎ、怒りと憎しみに満ちた民衆達の瞳であった。
無数の罵声と不平不満の声が広場全体にこだましている。
「いゃ!痛いっ!離して!」
フレイジアは、ライトブロンドの髪を強引に掴まれると断頭台の木枠に押しつけられた。ガチャ!木枠に首と手を固定され母と同じ情けない四つん這いのような姿に、民衆の歓声が響く。
フレイジアは、ガタガタと木枠から逃れようと必死で暴れいたが次第に、自分が母と同じように震えて涙を流し、悲鳴すら上げられないでいることに気が付いた。
「無様な姿ふふっ・・・もう少し立派な最期を見せて欲しいものね?」
聞き覚えのある声に、フレイジアは必死に目線を上げるが顔は暗くて良く見えなかった。ただ、まるで赤い三日月のようにニヤリと笑う口元だけがハッキリと見えた。その不気味さにフレイジアは、心の底から恐怖がわき上がってきた。救済を求める言葉も悲鳴すら上げることが出来ない。いくら声を出そうとしても金魚のように口をパクパクさせるだけであった。
「(どうして・・・声がでなの?助けて・・・何で私が・・・何で・・・)」
「あら?ふふふっ・・・可愛いわ・・・震えて粗相までして!ふふっ!」
フレイジアは、その言葉に自分が恐怖で"おもらし"していることに気が付いた。フレイジアのスカートの中でチロチロとい小さな水音をたてて流れ出した尿は、次第にシュチィィィィーと勢いを増して太ももを生温かい液体が勢いよく伝わり落ていき、膝をついている処刑台の床でピチャピチャパシャパシャと恥ずかしい音を上げて、そのたびに冷たい飛沫が跳ね返り太ももに当たるのを感じた。フレイジアの恐怖失禁という醜態、その姿に、また民衆から大きな歓声が上がる。
「(あぁ・・・見ないで・・・そんなに見つめないで!そんなに見られたら・・・あぁ!いやぁぁぁー!!)」
「ふふっ・・・どうフレイジア?気持ちいいでしょ?”おもらし”って?また、感じでしまったのかしら?ほんと変態ね貴女は!」
そう言って、断頭台に固定されたフレイジアをゆっくりと覗き込んできた人物は、なんと不気味に微笑むフレイジア自身であった。
「ひっ!きゃぁ!!」
断頭台のフレイジアが短い悲鳴を上げると時に、断頭台の刃が落ちる音がした。
フレイジアの目の前が突然、真っ暗になっていった・・・
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「助け・・・うっ・・・ううん・・・何で・・・なん・・・で・・・ううっん・・・」
フレイジアは、何かを振り解こうとするようにベッドの上で激しく藻掻いていた。その姿はまるで布団の中で溺れいるかのようであった。
「きゃぁぁぁぁっーーー!!!」
けたたましい悲鳴と共に、一気にフレイジアの意識が覚醒し飛び起きた。
「はぁ・・・はぁ・・・ゆ、夢?・・・あっ!しまっ!おもらしっ!!」
フレイジアは、呼吸を整えながら処刑が夢であったことに安堵する間もなく勢いよくバッ!と掛け布団をめくり上げた。そこには、ただの乾いた真っ白なシーツが広がっているだけであった。
「あぁ、よかった・・・濡れてない・・・はぁ~夢で本当によかったぁ・・・」
フレイジアは、リアルな”おもらしの感覚と処刑の恐怖が夢の中だけであったことにようやく、ほっ!と胸をなで下ろした。
その時、部屋のドアをドンドンドンッ!と激しくノックする音が聞こえた。
「っ!?・・・は、はい!ど、どなたですか?」
その音に驚いたフレイジアは、少し怯えた声えで問いかけた。
「メルリアナです!フレイジア様、悲鳴が聞こえましたが大丈夫ですか!な、何かありましたか!」
「メル・・・大丈夫よ・・・入ってきて。」
フレイジアは、悲鳴が隣の専属メイド用控え室まで聞こえてしまったことに少し恥ずかしくなった。
フレイジアはベッドの端に腰を掛けて座り、メルを部屋に招き入れると、まだ朝日が差し始めたばかりの早朝にもかかわらず、すでにメイド服に身を包んだメルが慌てた様子で部屋に駆け込んできた。
「フレイジア様・・・あの、いかがされましたか?凄い悲鳴でしたけど?」
「ごめんなさい・・・驚かせてしまって・・・少し恐い夢を・・・」
フレイジアが少し赤面して悲鳴の理由を言い終わるより早くメルが優しく抱きしめてきた。
メルの柔らかい温もりと同時に、まるで先ほど入浴してきたかのような石鹸の香りに包まれたフレイジアは、安心したのか、ゆっくり瞳を閉じると一筋の涙が頬を流れた。
「ありがとうメル・・・あったかい・・・もう暫くこうしていていいかしら?」
「はい!落ち着くまで、いつまででも!よく小さい妹や弟達が恐い夢を見た時にこうしたんです。安心するって好評なんですよ、えへへっ!」
メルに頭を撫でられながらフレイジアはトロンとした表情で甘える子猫のようにメルの胸に顔をすりつけていた。
「あっ!申し訳ありませんフレイジア様!つ、つい、癖で撫てしまって・・・とんだ失礼を!」
「いいの!とっても安心できるわ・・・それにしても良い香りね。」
「あ、あの・・・その、あ、あまり匂いをスンスンってされると恥ずかしです・・・ううっ」
顔を真っ赤にして恥じらうメルの様子に、ハッとしたフレイジアは抱かれていた手を振り払うように身を離した。フレイジアも自分の行為に顔を赤らめて恥しそうに縮こまった。
「そ、そうよね!ご、ごめんなさい・・・今しがた、お風呂に入ってきたのかしら?石鹸のとても良い香りがしたのでつい・・・」
「えっ!・・・あの、実は、おっ・・・起きると汗が、その、寝汗を少しかいてしまう体質なのでシャワーを・・・」
「そう、悪いこと聞いてしまったかしら?ごめんねメル・・・そうだわ!私もシャワーを浴びてきますね。変な夢のこともありますし、サッパリしたいから。」
質問に、口ごもるように答えるメルにフレイジアは、デリカシーの無いことを聞いてしまったと気まずくなり、逃げるように浴室へ向おうとした。
「いえ!何か手伝いますか?」
そんな、フレイジアにメルは気遣うように訊ねた。その顔は、いつもの明るい笑顔に戻っていた。
「そ、そうね・・・あ、そうでした今日の朝8時に執務室で打ち合せがありますから、飲み物を用意しておいて下さい。その後は、昼食時に呼んでくれればいいわ。でも、まずは、シャワーの後で髪を整えるのを手伝ってもらいたいのだけど、いいかしら?」
「はい!わかりました!」
元気なメルの返事を聞きながら、フレイジアは浴室へ向っていった。
女王就任演説から一夜明けた、まだ、朝日が昇り始めた頃の出来事であった。