女王陛下と誘拐事件:第九話:~乗合馬車の行き先~
旧市街と新市街を隔てる城壁の門を出発した乗合馬車に揺られるフレイジア達は、窓に映る新市街の街並み眺めていた。城壁の辺りでは、乗合馬車も乗客で賑わっていたが新市街を進むにつれ新しく乗車する者も無く、いつの間にか乗合馬車は、フレイジア達3人の貸し切り状態となっていた。
「魔法学院の生徒や冒険者だった頃は、この街並みを見て特に何も感じなかったのに・・・」
少し楽しそうに、そして興味深そうに窓の景色を眺めているメルやアイギスと違いフレイジアは、複雑な思いで新市街の景観を見ていた。新市街といっても栄えているのは旧市街との境である城壁に近い周辺部の辺りだけである。どちらかと言えば、いや明らかに旧市街の市民の方が裕福だと言えた。もん城壁周辺の旧市街とほとんど遜色ない比較的整然とした街並みはダウンタウンと呼ばれ夜は酒場や小劇場が開き、そして余り大声では言えないが風俗店やカジノもあり人々の活気と熱気、生活感の溢れた地域である。そんな活気ある地域も、すぐに消えて乱雑に家や建物の建ち並ぶスラム街とよばれる地域が現れる。乗合馬車は、スラムの先へと進んで行きスラム街を抜けた頃には魔素灯の街灯も人家の明りもほどんと見られなくなった。日中であれば、この辺りが小麦や野菜などの畑がある広大な田園地帯とひと目でわかる。だが新月の今日、まるで暗く何も見えない海の上を漂っているかの様であった。市街と違い石畳で舗装されていない道で激しく揺れる馬車も波頭を越える船の様であった。
「お嬢さん達、何処まで行くんだい?もう、終点だよ?」
乗合馬車の後方の足場に掴まったように乗っている車掌が訊ねてきた。そして、乗合馬車も速度を緩めて止まった。
「あの、実は、とある貴族の方に届け物を頼まれまして。その指示の通り馬車へ乗って___」
フレイジアは、誘拐事件で金塊を運んでいる事を貴族の使いでと濁して後宮の方へ向かっていると車掌に事情を話した。
「そりゃ、乗る馬車を間違えてるよ!あ、でも乗るとにに聞かれたっけ・・・行き先も言ってくれたらよかったのに。とにかく後宮ってのがある方へ向かう馬車の路線とは、全く反対側なんだよ!そうだな、この馬車は、回送で車庫のある厩舎へ戻るけど・・・仕方ない、規則違反だが途中の新市街まで送るよ。その間に、後宮ってのの方へいく路線を説明するから!」
「いえ、ですが貴族の方の指示ですし、何か考えがあるのかもしれませんから・・・少しここで待ってみようかと。」
「そんなことは、無いと思うが・・・まぁ、まだ最終馬車じゃないからなぁ・・・わかった気をつけてな!」
フレイジア達は、親切な車掌に御礼を言い新市街の方へ戻っていく乗合馬車を見送った。回送の乗合馬車は、客室の明りが消され、乗合馬車の前で手綱を握る御者の左右に吊された魔素灯ランタンだけが明るく灯っていた。その、灯りもすぐ闇の中へ溶けて小さく霞んでいった。そして、乗合馬車が去り、虫の声も微かなだけの暗闇が残された。だが、少し目が慣れると星明りのお陰で周囲の風景はまるで青暗い光で映し出される影絵ようで散りばめられた無数の星が煌めいて浮かぶ夜空は美しかった。
「こんな時じゃ無ければ、この綺麗な星空をのんびり見ていたいけど・・・」
「先輩達・・・無事かなぁ・・・流れ星が見えたらお願いしてみようかな・・・」
「そかし、どういう事でしょう?車掌の話しでは、後宮と反対に来てしまった様ですが・・・何処かで乗り換えを間違えたのでしょうか?」
「そ、そんな間違えたなんて・・・どうしよう先輩たちが・・・フレイジア様!アイギス様」
「メル、大丈夫よ間違えたはずは無いわ・・・乗車するとき指示の路線かどうかを車掌に確認したもの・・・それと私は、ハンナですよ・・・あと様を付けては駄目よ。」
「あ!ご・・・ごめんなさい・・・」
「私も気を付けないと・・・あっ!ハンナさん、メルさん、何か灯りが近づいてきますよ!」
乗合馬車の終点で暫く待っていたフレイジア達に魔素灯ランタンの灯りと思われる光が1つ揺れながら、ゆっくりと此方へ近づいてくるのが見えた。そして徐々にガタガタという車輪音の回る音、そしてカッポ、カッポと馬の蹄の音が聞こえ始めた。フレイジアの前で1頭の馬に引かれた粗末な荷馬車が、嘶きの声と共に停車した。
「お城のメイドさんたちっすか?オイラは、屋敷まで乗せてこいって貴族に頼まれたモンんでやんすが・・・」
「そうですか・・・では、お願いしますね・・・」
明らかに、怪しい御者の男であったが・・・フレイジア達も乗る意外の選択肢しかなかった。フレイジア達は、警戒しながらも粗末な荷馬車へと乗ったのだった。
それから、かれこれ、2時間ほど・・・ガタガタと畦道を粗末な馬車揺られ、辺りは田園から林、森の中と言った風景になっていった。昼間なら只の森林なのだろうが・・・夜の闇に包まれフクロウや虫の音さえ不気味であった。
「あの?まだ、着かないのかしら?」
「ああ、もう少しかかるでやんす・・・この森を抜けたらもうすぐっす・・・」
「それと、この香炉の・・・この臭いどうにかならないかしら?」
「虫除けっすから・・・我慢して欲しいっす。」
フレイジアが、後宮の事を訊ねるのもかれこれ3回目となっていた。身代金の受け渡し時刻である夜9時は、とうに過ぎていた。フレイジアは、それでも一向に後宮の方に向かっている気配の無い荷馬車に、流石に不信感を募らせていた。それと・・・さきほどから、すっかり静かになってしまったメルとアイギスの様子も気になっていた。
「そ、そうですか・・・(このまま、馬車に乗り続けるは、危険かもしれない・・・どうにかして・・・)」
フレイジアは、これ以上このまま誘拐犯の思惑に身を任せるのは危ないと判断した。どうにか馬車を止めメルとアイギスの身の安全の為にも逃げる事が得策だと考え始めていた。
「フ・・・ハンナさん・・・ハンナさん・・・あの・・・」
そんなとき、となりに座っているアイギスがフレイジアの腕の裾をひっぱりながら小声で話しかけてきた。
「どうしたのアイギス?具合でも悪い?」
「えと・・・その・・・お花摘みに・・・」
「えっ?」
フレイジアは、顔を赤く染めたアイギスの言葉の意味が瞬時には理解出来ず聞き返してしまった。
「その・・・・お、おしっ・・・お手洗いに行きたくなって・・・」
アイギスは少し涙目になり言い終える前に恥ずかしそうに俯いてしまった。アイギスは、両手を内腿の付け根付の間に挟むようにしてメイド服のスカートをギュッと抑えつけた。すでに相当我慢しているのだろう時折小刻みに震えている。
「大丈夫?・・・まだ我慢できそう?」
「は、はい。ごめんなさい・・・が、我慢します・・・くぅ・・・」
「謝らなくてもいいわ・・・(本気で辛そうね。何か馬車を停める作戦かとも思ったけど・・・)」
普段、凛とした女騎士の口から”お花摘み”という言葉が出てきた事、そして必死でオシッコを我慢している仕草にフレイジアは、こんな状況だというのに少し興奮を覚えていた。心配そうに優しくアイギスに声を掛けたフレイジアであったがアイギスがもし、我慢出来ずにという姿を思い浮かべ自身の秘部の奥がジンジンと熱を持っていくのを感じていた。
「あ、あの・・・」
「メル?どうしたの?・・・ま、まさかあなたも!?」
「へ?・・・・あの・・・き、気持ちわるくっ・・・うぷっ!?」
「の、乗り物酔い!?大丈夫!?吐きそうなの!!・・・御者さん!!!お願い止めてぇ!!!」
先ほどから黙ったままのメルがボソっと口を開くと両手で口を必死に押えて胃から込み上がってくるモノに抗っていた。
フレイジアは、荷馬車を操っている怪しい御者の男に飛び掛かり大慌てで馬車を停めるよう懇願した。
「わっ!?ちょ!!なにするんすか!!は、離すっす!!」
「いいから!!馬車を停めて!!停めなさい!!!」
「ぐえっ!!く、ぐるじいぃ・・・・ク、首ぃ!?息がぁ・・・」
「は、早くしなさい!!!」
「わ・・・わか・・・・わかっ・・・うぐぅ!!」
フレイジアは、一向に馬車を停めない御者の男に業を煮やしその首を絞めるように腕て固めどうにか馬車を停めさせたのだった。
「そ、それじゃ5分だけ・・・・」
「・・・ギロッ!」
フレイジアは、御者を殺気のこもった目で睨みつけた。
「ひっ・・・・準備ができたらお、仰ってください・・・へへへっ・・・・」
「ありがとう御者さん。感謝するわ。」
「はぁ・・・・」
御者は、フレイジアの剣幕にすっかり気圧されされて萎縮していた。
メルは、馬車が停まるなりワタワタと馬車を降り少し離れた木の根元へヨロヨロ歩いて行き今は、猫背になってゼーハーゼーハーと辛そうな息を吐いている。
「さて、アイギス・・・その、お手洗いを済ませてしまいましょうか?」
「で、でも・・・」
「いいから、ほら馬車から降りてきて・・・」
「あの・・・」
フレイジアが、そう声を掛けたもののアイギスは、荷馬車に乗ったままモジモジとして降りてこようとしたない。
その様子にフレイジアは、心臓がドキッ!と大きな音を立てるのを感じた。
「も、もしかして・・・間に合わなかった?我慢・・・できなかったの?」
フレイジアは、ドキドキと期待と興奮を感じながらも平静に優しい口調でアイギスに尋ねた。
「ち、ちがいます!!」
アイギスは、少し顔を赤くして語気を強め否定した。フレイジアは、少し残念な気持ちを覚えたがそれなら何故降りてこないのか不思議そうな表情をしてアイギスの琥珀色の潤んだ瞳を見つめた。
「お手洗いいきたいんでしょ?ほら、馬車も停めもらったから早く済ませないと・・・ね?」
「でも・・・その・・・・こ、こんな所でするの・・・こんな森で・・・」
「恥ずかしい?・・・・でも、漏らしてしまうよりいいでしょ?」
「う、はい・・・」
フレイジアは、アイギスがなぜ頑なに外ですることを拒むのか疑問に思っていた。たしかに、普通の女性ならそれ理解も出来るがアイギスは騎士だ。士官学校での野戦訓練でも経験があるだろう。外で、ましてや戦場で催してその場で致すことを恥じらうという道理がないのだ。そう思いならが妹にでも諭すような感じでアイギスに話しかける。
「何を躊躇っているのアイギス・・・もう、限界なんじゃない?このままだと”おもらし”してしまうわよ?」
「うぅ・・・ふ、フレ・・・あっ・・・ハ、ハンナ様・・・い、一緒に来てくれますか?」
「え?・・・えぇ・・・かまわない・・・けど。」
アイギスは、顔を真っ赤にして涙目で訴えてきた。フレイジアは、少し困惑しながらも馬車から降りたアイギスについて森の出来るだけ馬車から見えない茂みの方へ歩いていった。
「ちょ、ちょっと待った!どこ行くっすか!!」
森に入って行こうとするフレイジアとアイギスに気付いた御者が慌てて駆け寄ってくる。
「お花を摘みによ。」
「は、お花?・・・ってあぁ~ショ~ベンすか?」
「っ///」
フレイジアがしれっと答えると御者の男のデリカシーの欠片もない言葉が返ってきてアイギスは、恥ずかしそうにモジモジしていた。
「ほら、わかったらさっさと・・・」
「いや、俺の目の届かないとこでは・・・」
「覗くつもりなの・・・お花摘み?」
「い、いや・・・あの・・・」
「そう、覗くつもりでは、無いのなら馬車でお待ちになって頂けるかしら?・・・ギロッ!」
「ひっ・・・わ、かった・・は、早くすませろよ!」
「えぇ、わかりましたわ。あ、それと御者さん・・・メルのことお願いね。もし、変なことしら八つ裂きにしますわよ。ふふふっ・・・」
「し・・・しないです・・・いたしませんです・・・ご、ごゆっくり・・・」
フレイジアの丁寧な口調とは、裏腹に凄みのある威圧感と恐怖を感じた御者は、怯えながら馬車の方にオズオズと戻っていった。
フレイジアとアイギスは、森の中に少し入っていった。
「く、暗いですね・・・ハンナさん・・・」
「明るいよりは、目立た無くていいのじゃないかしら?」
「で、ですが足元も・・・よく・・・見えませんし‥・」
もう馬車の魔素灯ランタンの灯りは見えない。真っ暗で静かな森のなかだった。
「そう?そうね・・・少し明るくする?(確かに真っ暗じゃ・・・アイギスがしてるとこ見えないわね・・・)」
「で、出来るのですか!?」
「えぇ、見てて!(本人が明るくていいというなら・・・ちょっとラッキーかしらね。)」
アイギスがパッと明るい声を出すのを聞いてフレイジアは、ルクステルを詠唱する。小さな妖精型の発光体が森の暗闇をオレンジがかった温かい淡い光で中和していく。
「どうかしら?光度は、少し落としてあるけど。」
「はい!十分です!!ありがとうございます!!」
「そう、よかったわ。(もしかしてアイギスったら・・・)」
アイギスは、周囲が明るくなったことに安堵したような表情を浮かべ嬉しそうに笑えんでいた。
「さ、アイギスこの辺でいいかしら?メルの事も心配だから急いで済ませてしましましょう?」
「はい、申し訳ありませんハンナさん・・・・」
「ここなら、聞こえないだろうしフレイジアでもいいわよ?」
「はい。」
アイギスは、メイド服のロングスカートを捲りあげ、その内側のドロワーズとショーツを下ろそうとするも、普段着慣れていない服に悪戦苦闘し限界の迫る尿意に足をバタバタさせ慌て始めた。
「ほら、アイギス落ち着いて・・・裾を持っててあげるから。そう、ドロワーズを下ろして・・・・そうよ、ショーツもね・・・」
「す、済みませんフレイジア様にこのようなこと・・・・スカートは、余り履いたことが無くて・・こんな長いのなんて・・・」
「いいから。そしたらスカートを捲くり上げて前で束ねて抱えて。そうそれでいいわ。」
「こ、こうでいいですか?」
フレイジアは、幼い子供に仕方を教えるようにアイギスに指示を出した。素直に支持に指示にしたがったアイギスが、ロングカートを臍の辺りで丸めて束ねているとドロワーズが足首の辺りまでパサッと落ちてシュとした長い足の膝の辺に下ろした白と水色の横縞ショーツが引っ掛かっていた。後ろにいたフレイジアからは、アイギスの形の良いプルっとしたお尻が丸見えであった。
「ええ、大丈夫よ。そのまま、しゃがんで・・・(アイギスのお尻・・・プリっとして可愛いっ!明かり灯して正解だわ!眼福!!)」
「は、はい・・くっ・・・ぅぅ・・・」
「まだよ・・まだ出しちゃダメよ!下げたドロワーズとショーツを汚さないように膝の辺りでまとめなさい。」
「あ、あっ・・・うぅ・・・」
「いいわ・・・もう大丈夫よ。ほら・・・って女同士でもこんな近くじゃ落ち着いて出来ないわよね?ごめんなさい少し離れてるわね。」
「あ、あの・・・そ、そこにいて・・・くだ・・・さい・・・・お、おねがい・・・です・・・いかない・・・・で・・・あぁっ・・・」
「ア、アイギス?」
フレイジアが、アイギスに背を向け離れようとするとアイギスは、近くにいて欲しと懇願してきた。
同時にプシッと吹きだすような音が聞こえたかと思うと勢いの強いジュォォォォォーという流水音、そして森の落ち葉の上にパシャパシャと水が跳ねるような音がだけが静かな夜の森響ていた。ルクステルの薄明りにてらされながら尿意から開放され気持ち良さそうに座り込んでお花を摘むアイギスの後ろ姿をフレイジアは、ドキドキしながら眺めていた。やがで、ショロロロ・・・・ピタピタと森に響いていた音が消えていった。サァーと森を流れた風にフワッと少しアイギスのオシッコの香りが混じっていた。
この大人びながら少女の面影を残す女騎士、今は、メイド姿が可愛らしいアイギスのお花摘みを堪能したフレイジアは、満足そうな顔でスッと静かに息を吸った。
「んっ・・・ふぅ・・・・はぁ・・・・」
「終わった?はい、コレ。」
「あ、はい。」
フレイジアは、お花詰みを終え気持ち良さそうな吐息を漏らしたアイギスにさり気なくハンカチを渡した。アイギスもその流れで受け取ったハンカチで自然にオシッコで濡れ汚れたアノ場所を拭きとってしまった。
「あ、えっ!?あわわわっ!!ハンカチ///フレイジア様の///」
アイギスは、あの場所を丁寧に拭ってから気が付いたのかボンッ!と顔を真っ赤にして慌てふためいていた。
「あ、洗って返しま・・・いや、私のを拭いえて汚れ・・・あの、べ、弁償します!!!」
「ふふっ。気にしないで大丈夫よ。借りたメイド服に入っていたのだから。多分、備品でしょ?その辺にポイでいいんじゃないかしら?」
「で、でしょうか・・・」
「それより、そろそろもどりましょうかアイギス?」
「え、えぇ・・・そ、そうですね///」
アイギスは、ハンカチを少し躊躇いながら地面に置くと恥ずかしそうに立ち上り、自身のお花摘みの跡を避けるように少し横へ移動してスカートを広げると同時に中に手を入れショーツを上げ直した。その時、アイギスは、冷たい感触を敏感な部分で感じピクッ!と震えた。
「アイギス?」
「い、いえ・・・」
アイギスは、ドロワーズを履き直しながらショーツがグッショリ冷たく濡れているのを改めて実感する。たしかに、馬車で尿意に耐えていたとき我慢できずにチョロっと極少量を漏らしてしまったのは、自覚していた。だが自分の想像より遥かに大量のオシッコがショーツに浸みていてドロワーズの方も若干濡らし汚してしまっていた。これは、”おもらし”じゃないと強く思い込みたかったのだが敏感な部分に冷たく張りつく、漏らしたと言ってもいい惨状のショーツにアイギスは、非常に情けなくなり泣きたくなる程の羞恥を覚えた。
同時に、この”おもらし”がフレイジア陛下に気が付かれていないことに安堵する気持ちが強く湧き上がってきていた。
その時ふと・・・アイギスは、自身が昨晩のフレイジアにかけた言葉が脳裏によぎった。
「よくある事だから・・・気にすることない・・・なんて・・・」
そう、アイギスは、ぼそっと呟き何て無責任な心無いことを言ったのだろうと・・・アイギスは、強い後悔を感じた。
「え?何か言った?」
「なんでもありません・・・戻りましょう・・・」
「ええ。あ、明かりを消さないと・・・・ただのメイドが魔力を使うなんて知られちゃまずいわ。」
フレイジアがルクステルの魔法を解除すると発光する妖精は、パッと細かい光の粒になって霧散した。
明かりが消え真っ暗になる瞬間、アイギスがビクッ!と震えた気がした。その、隙にフレイジアは、自身の欲望に抗えず先ほどアイギスの使用したハンカチをサっと回収してメイド服のポケットへ押し込んでしまった。
最悪感とドキドキとした高揚感・・・フレイジアは、女の子のオシッコとオモラシに興奮しエッチな衝動を抑えられない自分自身の性癖を改めて自覚し呪った・・・
「ねぇ?アイギスってもしかして暗い所が怖いの?」
「い、いえ・・・そういうわけでは///」
「良いのよ恥ずかしい事じゃ無いわ。苦手なことなんて誰でも色々有るもの。そうそう、ギルドの知り合いで強面のゴツい戦士がいるだけど、彼なんてAランクのくせに毛虫が失神しかける程嫌いで・・・」
馬車の方にアイギスを連れて戻ろうとしたフレイジアは、何か微かな気配を感じ足を止めた。
「アイギス!」
「はい!気付いてますフレイジア様・・・3人程でしょうか?攻撃の意思は、無いようですが・・・」
「3人?もしかして・・・」
「フレイジア様なにか心当たりが?」
フレイジアとアイギスが身構えているとアイギスの言った通り3人の男たちが暗闇から出てきた。
暗闇に溶けこむ夜間迷彩の動きやすそうな軽鎧と短めの刀剣で武装した男達は、フレイジアに向かいザッ!敬礼する。
その立ち振る舞いから3人とも相当手練れの戦士だとわかる。
「安心して下さい・・・敵では、ありません。任務の性質上を身分証明ものは、基本持つことが無いのですが・・・」
そう言って男の一人が、騎士団の身分証を見せた。
「そう、じゃぁ貴方たちがボイドの言っていた・・・ヴァレンシア王家の牙 ・・・護衛ってわけね。」
「あの、フレイジア様・・・VKFって?その様な部隊、私は存じ上げ無いのですが・・・それに確かに騎士団の身分証ですがこの男たちにも見覚えがないです。」
警戒を解いたフレイジアとは、対象的にアイギスはフレイジアを庇うように一歩前に出ると落ち着いた様子に見えるものの、その実全身に生命力を急速に循環させ完全に臨戦態勢であった。アイギスは、目の前男達一人ひとりが自分と同等以上の手練れで軽装とはいえ武装している。勝ち目がないと自覚しながらもフレイジアを守るため瞬時に全戦闘力を発揮出来る状態まで生命力の循環を高めていた。
「落ち着きなさい。アイギス・・・説明するわ。VKFは、ヴァレンシアの騎士でありながら騎士ではないの・・・警備部隊長ボイドの直轄部隊といってもいいわ。」
戦闘態勢のアイギスを宥めるように言うもフレイジア自身 その存在を知ったのは、今日メイドに扮して城を出る直前の事であった。