女王陛下と誘拐事件:第八話:~後宮の異変~
フレイジア達が、最後の乗合馬車に乗車した頃、近くの森から後宮の様子を監視していた騎士師団副団長ハサードは、これといった変化の起こらない屋敷の様子を不審に思っていた。無人の屋敷の一角だけ明りが灯り中に大勢の騒がしい気配がしているそれだけであった。その時、数名の騎士がハサートの方へ向かって来た。
「副団長、ただ今戻りました。」
「して、どうであった?」
「はっ!どうやら賊と思われる男が30名ほど広間におりました。それが、どうやら酒盛りの真っ最中のようで・・・」
数名の騎士が、月明かりの無い闇に乗じて、後宮の庭園を密かに突破し屋敷の偵察を終え戻ってきた。その報告を受けたハサードは少し頭を抱えた。
「どういうことだ、見張りも立たせず酒盛りとは、警戒感が全くない・・・それで、人質の姿は見えたか?」
「一階の窓のある部屋は、一通り確認しましたが発見出来ませんでした。」
「ふむ・・・陛下も仰っていたが・・・賊の意図が読めん・・・」
「はい、罠でしょうか?・・・しかし、なんの意図があっての罠でしょう?」
「そうですね・・・酒盛りも我々を油断させる為かとも思いましたが・・・あれは、演技ではなく完全に酔っ払って出来上がっている感じでした。」
ハサードは、悩んだ・・・しかし、いくら考えても酒盛りをしている賊の行動、その意味に納得のいく答えが思い浮かばなかった。
「仕方が無い、危険だが蜂の巣を刺激してみるとするか・・・屋敷を強襲すると全員に伝えよ!」
「はっ!」
ハサードが強襲を決意した頃、誘拐犯の子分達30人は、広間でピルゲが用意した酒樽6つの最後の1樽を開け始めていた。酒盛りは、大盛況で誰もバルトスやマッディーそしてピルゲの事など忘れているかのようであった。そんな、広間の片隅でメイド達に水を差し入れた青年は、一杯の酒の入ったジョッキを片手に酒盛りを傍観していた。酒のあまり得意でない青年は、一杯の酒をちびちびと舐めるように呑んでいた。
「そ・・・そう言えば・・・また、喉かわいいてたりしないかな・・・もうすぐ帰してあげられるから・・・最後に・・・最後だから、もう一度あの黒髪の女性に・・・」
青年は、そう呟くように言うと、半分も減っていない酒のジョッキをその場に置いて広間から出て行った。
青年が広間を出ると時を同じくして、騎士達が屋敷の数ヶ所の入り口の前で突入の合図を待っていた。
ハサードが、合図を上げようとしたその時、パンパン!と微かな花火のような破裂音が屋敷の中から聞こえた。その瞬間、屋敷のあちこちから火の手が上がり、広間も一瞬で炎に包まれていいた。可燃性の液体、油のような物に火がついたように一気に、巨大な火柱が上がり、幾つかの窓を吹き飛ばすように炎が噴き出してきた。続いて火達磨になった子分達が何人も悲鳴を上げ、勢いよく窓から飛び出し地べたで転げ回っていた。
「な、なにごとか!ぬぉ!?炎が・・・罠か!くっ・・・退却だ!!一度、退却しろ!!」
阿鼻叫喚の事態にさしもの副団長ハサードも想像していない事態に慌てて退却を命じる事しかか出来なかった。
青年は、一瞬のうちに炎に包まれた屋敷1階の廊下を3人のメイド達のいる二階を目指し急いでいた。
「か・・・火事・・・火事だぁ!!火事だぁ!!」
そのころ、監禁されている3人のメイド達は・・・まだ、屋敷に火が付いた事に気が付いていなかった。
「もう無理出る・・・漏れる・・・限界!ボーコーが弾けちゃうよ~!オシッコ!オシッコ!オシッコさせてぇー!!」
手足を縛られ芋虫状態で床に仰向けに寝転んていたモカが、モジモジと激しく左右に体を転がす様に揺すり大声で叫ぶように尿意の限界を訴えてた。
「オシッコ!オシッコ!騒がしですわ!私まで催してしまいますでしょ!!」
モカの叫びに、イラッとしたようにミュールが声を上げた。そんな、ミュール自身も激しい尿意を感じ始めていたのであった。
「ミュール、モカ!そんな事より外が変よ!」
「そんな、事ではありませんわ!」
「そうだよ!このままじゃ・・・」
「いいから、窓を見て!」
「なんですの!窓っ・・・あら、なんだか明るいわね?」
「ほんとだ・・・夜明け?」
「そんなはず無いでしょ・・・それに、焦げ臭い・・・まさか!」
ジェーンが、窓の外を照らす赤みのあるオレンジ色の揺れる光の正体を言いかけたときガチャッ!バンッ!!大き音と共に部屋の扉が勢いよく開いた。
「火事・・・今、逃がすから・・・ま、まってて!!」
先ほどの水を差し入れた青年が、慌てたように部屋に駆け込んできた。
青年は、女王陛下・・・ミュールではなく一目散にジェーンにまず駆け寄った。
「いま、縄を切るから・・・じっとしてて!」
そういって、青年は腰から短いナイフを抜いた。まず、後ろ手に縛られた手の縄を切ろうと背後に回ろうとした。
「いっ・・・いやぁぁー!!!やめて・・・やぁ・・・・」
ナイフを見たジェーンは、突然、悲鳴を上げ半狂乱で泣き叫んで身を必死で振り暴れ始めた。その様子は、ナイフを激しく拒絶し怖がっている様に見えた。
「な・・・なにもしない・・・縄を切るだけ・・・落ち着いて!!」
オロオロとジェーンを必死で宥め様とした青年であったが一向にジェーンが落ち着く気配は無かった。
「ご、ごめん!時間がない!!」
そういって、青年はジェーンを背中側から強引に押さえつけ手の縄を切ろうとナイフの刃を当てた。
「ひぃっ!!」
その時、青年のナイフの腹が少し手に触れたようで、その冷たい金属の感触に悲鳴のような声とビクッと大きく震えたジェーンの手から縄がブチッ!と音がして切れた。
「つ・・・次は、足・・・いいね?・・・あっ!」
押さえつけていた手を離し、足の縄を切ろうとしてジェーンの前に回った青年は、ジェーンに起きた異変に気が付いた。
「・・・ううっ・・・いやぁ・・・私また・・・見ないで!!」
「こ・・・これって・・・お、おしっ///」
「ち・・・ちが・・・・ううっ・・・」
三角座りで座るジェーンのお尻の下からジュワッとゆっくり液体が染み出してきた。突きつけられたナイフの感触がトラウマになっていたのか青年のナイフが手に触れ、その冷たい金属の感触に恐怖を思い出したジェーンは自分の意思とは関係なくショロショロと秘所から力無くオシッコが漏れだしてしまった。じわじわと溢れ出たオシッコをジェーンは、慌てて必死で隠そうとお尻と縛られた足を使って拭くようにして激しく捩ったり、擦り付けたりと動かした結果ジェーンのスカートは、ビッショリとオシッコが染み込み濡れてしまった。
「なっ・・・やっ!やめて!触らないで・・・汚いから・・・オシッコだから・・・だめっ・・・」
「・・・いまは、そんなこと・・・大丈夫・・・君の・・・綺麗だから・・・」
青年は、顔を赤くして・・・ジェーンの足を片手で押さえブチ、ブチッ!とナイフで、足を縛っている縄を切った。縄を切り終えた青年は、少し呼吸が乱れているように感じた。
「つ・・次は・・・女王陛下・・・」
「うわぁぁぁん!!うえぇぇーーーん!!」
そういって、青年がミュールの方を向いたときモカが突然大泣きを始めた。
「ど・・・どうしたのモカ?あ・・・貴女・・・まさかそれ・・・」
「ううぅ・・漏れた・・・!ぅあぁぁぁーん!オシッコ出たぁー!うぅはぅ・・・気持ちいぃ・・・でもオシッコ漏らしちゃ・・・ぅうえぇぇぇぇん!!」
ミュールが、泣きだしたモカの方を見たとき、床で芋虫の様な状態で仰向けで寝転んでいたモカのお尻と腰の辺りの下の床には、すでに水溜まりが出来ていた。そして、モカの大きな泣き声にも負けないジョォォォォー!!という豪快な音を縛られたスカート中で響かせ、モカの秘所から噴き出した激しいオシッコはどんどん勢いを増し溢れ出していった。その音が勢いを失いショォォー・・・シィロロッ・・・と治まる頃には、相当な量のオシッコを我慢していた証拠である水溜まりは、モカの臀部を中心に半径1メートを越えるかという大にまで広がっていた。
どうにか、青年が人質となっていた3人のメイド達の縄を切り終えた青年が、付いてきてと3人を案内して廊下に出たときには、既に2階の廊下も火の海になり始めていた。迫る炎に青年は、慌てて扉を閉めた。
「熱ッ・・・どうしよう・・・逃げ道が・・・」
「ふふっ・・・よかった、焼死体なら”おもらし”したってバレないわね・・・」
「ジェ・・・ジェーン何をいってるのさ!”おもらし”ぐらいで・・・そりゃあ・・・漏らした時は、死ぬほど恥ずかしかったけど私、生きていたいよ!!焼け死にたくないよ・・・ううっ・・・うわぁぁぁーん!!」
「モカの言うとおりですわジェーン!私もまだ死にたくありません!冗談でも馬鹿なこと言わないで!!」
「モカ、ミュール・・・ごめんなさい・・・そうよね・・・」
「ここ、二階だから・・・飛び降りよう!・・・できる?」
「無茶言わないでいでくださる!ケガでは、済まないかもしれませんわ!」
「ううっ死にたくない・・・そうだ!カーテン・・・カーテンを縄にするのってどう!私、前に劇で見たんだよ!」
「や・・・やって見よう・・・けど、ここのカーテンだけじゃ無理だ・・・待ってて!!」
「あ・・・貴方!ちょっと何処へ!?もう無理よ!!」
モカの咄嗟のアイデアに青年は、カーテンを取りにまだ火の回っていない部屋へ向かおうとした。ジェーンが慌て止めようとしたが青年は聞く耳を持たずに、炎の海となりかけた二階の廊下へ駆け出して行った。
青年を待った1,2分程が永遠にも感じたときバッ!扉が開き、火傷しそうなほどの熱い空気と共に煤まみれの青年が息を切らし部屋に飛び込んできた。カーテンの束を守る様に抱きかかえてゼーゼーと荒い呼吸をしてその場に座り込んだ青年にジェーンは、そっと寄り添うように手を触れた。
「よかった・・・無事で・・・」
青年が部屋を飛び出してからソワソワ落ち着かない様子だったジェーンは、安堵したように小さく呟いた。
「こ、これ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・結んで・・・・早く・・・ぜぇ・・ぜぇ・・・」
息を切らした青年の訴えにジェーン達は、カーテンをキツく結んでロープにした。
「ロープにしたのですが・・・モカ・・・これをどうすのかしら?」
「・・・モカ・・・これを縛りつけるものが無い・・・のだけど・・・」
「えっ・・・・えぇっーーー!!」
「心配ない・・・僕が持ってる・・・みんな降りたら飛び降りる!急いで扉から煙が出てきたから!」
青年は、自分の腰の辺りにカーテンの端を巻き付け、窓からもう一方を垂らした。カーテンの端は、地面まで少し届かないが降りられそうであった。青年は、カーテンのロープをしっかり握り、窓の下に座り足を壁に押し付けアンカーのように降りる人の重さに耐える姿勢をとった。
「早く・・・降りて!!」
「わかりました・・・降りますわ!きゃぅ!滑りますわ・・・でも・・・何とか・・・」
青年の叫びにミュールがまずカーテンのロープを降りて行った。途中何度か手を滑らせそうになりながらもミュールは、無事地上に降りた。
「大丈夫ですわ!思ったより丈夫よ!きゃぁ!?まずいわ、隣の部屋が!!急いで!!」
そういって、手を振ったミュールであったが、ジェーンとモカのいる隣の部屋で窓がバーンと割れ煙と炎が噴き出したことに驚き慌てて急ぐよう叫んだ。
「じゃあ、先に降りるね!よっ・・・うぁっと・・・よいょ!!」
モカは、意外と器用にスルスルとカーテンのロープを降りて行った。青年がミュールの時より少し辛そうな顔をしていたのにジェーンは気が付いたが・・・モカには内緒にしておこうと思った。
「助けてくれてありがとう・・・チュッ!・・・また地上でね。」
ミュール、モカが地上へ降りたの見計らいェーンは、膝を屈め青年の頬へ軽くキスをして恥ずかしそうに微笑んた。青年は煤まみれの顔を真っ赤にして頷いた。
「ジェーン急いで!!もう隣も燃えてるわ!」
「何してるのさ!早く降りてきなよ!!」
「今、行くわ!!・・・よ・・・よいしょ・・・きゃぁ!!」
ジェーンは、途中まで順調に降りたが地上までもう少というとこで手が滑ってお尻がらドシッ!と地面にお尻から落下した。
「ゔっ!痛っうう・・・」
「「ジェーン!?」」
「な、なんとも無いわ・・・平気よ!」
急にカーテンのロープから手応え消え、ジェーンの悲鳴を聞いた青年は、慌てて窓がら下を見た。
「平気よ!ケガもして無いわ!!だから貴方も早く!!」
窓から心配そうに眺める青年に気が付きそう叫んだジェーンは、両手を振って健在をアピールした。
「よかった・・・今、飛び降る・・・少し下がって危ないから・・・」
青年は、カーテンのロープを体から外し窓枠によじ登ると、少し躊躇ったように何度か体を前後に揺すると勢いよく2階飛からび降りた。ドサッ!という音とともに着地した青年は、上手く着地したように見えた。だが、その衝撃の為か上手く立ち上がれずその場に尻餅を付いた。
その様子をジェーンは、ミュールとモカと共に少し離れたところで見ていたが、青年が着地すると同時に慌て彼の元へ駆け寄った。
「怪我は無い!!」
「大丈夫・・・少し足が痺れてるだけ・・・」
「よかった・・・」
お互いの無事に安堵し合うジェーンと青年を眺めていたミュールとモカであった。
「ねぇミュール?気が付いたジェーンの唇・・・煤が付いて黒かったの?」
「モカ・・・それを言うのは、野暮ですわ!気が付かない振りをしてさしあげましょう・・・」
「そうだね!」
「見てられないわ・・・モカ、私は少し辺りを見て来ますわ。」
「え!?危ないよ!あ、待って!!」
ジェーンと青年の様子に目のやり場を失ったと理由を付けてモカが止めるのも聞かずミュールは、何処かへ足早に行ってしまった。
「それにしても広い庭園だわ・・・これなら何処か物影で用を足せそう・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁーーー!!!」
ミュールは、少辺りをキョロキョロ見回しながら用を足せそうな場所を求め庭園をウロウロと歩き回っていたが突然大きな悲鳴を上げた。驚いたモカとジェーン、そして青年が悲鳴の聞こえた方へ慌てて駆けつけた。3人が見たのは、腰を抜かして尻餅をついて震えるミュールと、それを取り囲む数人の武装した騎士であった。
「おい、おい・・・いきなり凄い声を出して、驚かせるなよ・・・ってなんで、こんなとこに貴族の?・・・あ、もしかして陛下が仰ってた誘拐されたメイド達の一人か?おい、副団長を呼んで来てくれ!」
「俺たちは、ほら見ての通り王国騎士団だから安心してくれ!今、保護するからな、怪我とか無いか!!あれ・・・どうした?腰が抜けたか?ほら手をかすから・・・・ん?なんだこのジョォーって感じの籠った音?」
ミュールは、差し出された手を取ろうともせず俯いて臀部を地べたに付けペタンと力無く座っていた。だが、自身の股間の辺りからシャァァージョワァァァー!っという音がしている事に気が付きミュールは、慌ててドレスのスカートの上から秘所の辺りを両手で強く抑えてた。押し付けた手の平がスカートから染み出す液体で、段々と温かく濡れていく感触をハッキリ感じていた。止めようとしても勢いを増していく生温かい液体の流れは、ショーツを濡らしながらお尻の方へも広がるように流れて生暖かいものが纏わりついて撫でてくるような感じであった。
「あ・・・あぁ、なんですの?この手が濡れていく感じ・・・この私が粗相なんてオシッコを漏らすなんて・・・まさか、あり得ませんわ・・・いや・・・いやですわ・・・そんな、”おもらし”なんてあり得ませんわぁぁぁぁーーー!!!」
ミュールは、自身が”おもらし”してしまったことを受け入れことが出来ず大声で絶叫してしまった。ミュールのその叫びに騎士達も駆け寄ってきたモカとジェーン、青年も驚いていた。
ミュールの叫びが止んだ頃、副団長ハサードと数人の騎士がメイド達3人の前に現れた。
「私は、騎士団副団長のハサードと申します。陛下の命をうけ誘拐犯の捕縛と誘拐されたメイド達の救出に来たのです。・・・たしか、ミュール、ジェーン、モカでしたね?見たところ目立った怪我は無いようですが、ご無事ですかな?」
3人は、陛下の命令で救助に来たという老紳士のような騎士の穏やかな言葉に唖然としていた。無事かどうかを尋ねなれてもただ頷て答えただけであった。
「・・・あれ?じょ・・・女王陛下じゃないのこの方は?」
青年は、ミュールを見て驚いた顔をしていた。
「おや?貴方はどなたですかな?」
そんな青年に騎士団副長ハサードは、何者かを尋ねた。
「こ、この方は私たちを助けくれたんです!!」
「ちよっとジェーン貴女!?こいつは・・・この人は・・・」
「助けてくれたのはホントだけど・・・でも、ジェーン・・・」
「ありがとう・・・いいんだ・・・悪い事をした・・・・正直に言わないと・・・僕は、誘拐犯です。申し訳ありません。」
青年を庇うようにジェーンは、副団長ハサードに青年の事を伝えようとしたが青年は、正直に誘拐犯の一味であると認め両手を差し出しハサードの方へ歩み出た。
「そうか、とりあえず捕縛させてもらうが君は、火傷をしているようだ・・・まずは、手当をしよう。詳しい話は城に戻ってから聞こうか。君たちも城へ送ろう。」
こうして、3人のメイド達は、騎士団副団長ハサードの指示で同行した3名の騎士そして、捕縛された青年と共に無事に城へ戻ることとなっのだった。