9 うたた寝してしまいましたわ
シャルとのお茶会を終えるといつものように馬車で帰るわ。帰る先は王都の屋敷で、正直学園とそれほど離れているわけでもないのだけど、貴族としてはあまり自分の脚で歩き回るのは望ましくないわ。
休みは一ヶ月もないので、前世の感覚で言うと短い気がするわね。それでもお父様と領地に帰るのは楽しみよ。帰るというよりお母様に会いに行くと言った方がしっくりくるわね。
「さすがに領地のダンジョンに一人で潜りには行けないわよね……」
学内の管理ダンジョンではそろそろレベル上げも頭打ちなので本当はもう少し高難度のダンジョンで鍛えたいのだけれど。
「でもタイミングとしてはこの帰省の行きか帰りよね……」
私が本来目覚めるはずの、ゲーム開始前のストーリー。でも。目覚めるきっかけはともかく、私の中にあるこれは何なのでしょうね。お母様かお父様に聞けばわかるのかしら。知りたいような、知りたくないような……
「でもまあまずは、帰省準備ね」
ふぅ、とため息をつくと私は馬車の中でうたた寝をしてしまったみたい。
~・~・~
「だから男には興味がないって」
「いいじゃないですかーみんなそのうち女の子になるんですよ?」
「それがまず理解不能なんだが?」
後輩は信じられないという顔をする。
「シュリンプバースですよシュリンプバース。おねショタからやがて百合に至る、一粒で二度美味しいシュリンプバースですよ?今一番ホットなジャンルじゃないですか!?」
「その割にこのゲームぜんぜん売れてないらしいじゃないか」
人の的確な指摘を完全にスルーして後輩は続ける。
「タラバエビ属はオスとして生まれて、成長するとメスになるんですよ。エロでしょう?人間がそうだったらもうそんなのえちえちじゃないですか?」
「落ち着け、IQが3くらいになってるぞ」
取りあえず何が言いたいのかわからないという事しかわからない。ああ、性転換するエビがどうやらいるらしいことはわかった。
「だからですね!先輩わかろうという意志はありますか?わかろうとしなければわかるものもわからないままですよ!」
うん、そんなふうに誰かに説教食らったんだな。ほんと良くない環境だよなぁ……
「したかないですね、先輩には先にシュリンプバースの参考書としてこちらの同人誌五冊と商業アンソロジー三冊も貸してあげます。まずはこれを読んで十分に脳をエビにしてからこのめくるめくおねショタ乙女ゲーの世界に思う存分ダイブしてください!」
「えぇ……」
~・~・~
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