7 闇属性は嫌なのですわ
勿論先生の言う属性には心当たりがあるわ。できればそれを目覚めさせずに、ほかの力を得たいと思っていたもの。無理ならそれで行くのもやむなし、とも思っていたけれども。
それは、闇属性。ゲーム開始前に私が目覚めることになっている力。最近は……最近かな、前世の記憶での最近は、闇属性も悪いものではない、みたいな扱いが多かった気がするし、実際属性に善悪は関係ないのかもしれないのだけど、周囲からの扱いがすこぶる悪い、というのは充分に使いたくない理由になるわ。そして、その悪い扱いに対して何をどう返しても、悪役令嬢としての評価が固まることは想像に難くないわ。
「……ありますわ」
「魔女であれば、すべての力を等しくふるうのであれば、そんなコトは気にしなくてもいいんだけどね」
ゲーム世界だと言われるとそれはそれで腑に落ちるぐらいには、この世界の人間の目と髪の色は多彩なのだけれども、そんな中で私のは目も髪も真っ黒。それで奇異の目で見られるとか、前世で読んだファンタジーで良くあるように差別の対象だとか、そういったことは無いのだけど、さすがにこの見た目で闇魔術を使うと似合いすぎるのよ。
「ま、お嬢さんの意志はわかったよ。つきあってくれてありがとうね」
つきあっても何も、いくら書類に不備がなければ申請は受理されるはずだからといって、先生からの呼び出しを無視なんてできるわけがないわ。
「いいえ。あの、これ……ありがとうございました」
それとは別に、胸に手を当ててお礼を言う。何といえば伝わるのかわからなかったけれども、抑えてもらった力を胸の内に感じているわ。
「魔女になりたくなったらいつでもお言い」
「弟子は取らないのではないのですか?」
コシオリ先生は今までに一人の弟子も取っていないはずよ。ほかの有名な魔女は皆何人もの弟子を育てているのに。
「取らないと言った覚えはないよ」
先生の声に寂しさとも悲しさとも違う、不思議な感情が乗るのを感じた。先生の立場だといろいろなしがらみや忖度があるのかもしれないわね。私が知っているはずのない話だから、不用意なことは言えないけれど。
「それに、魔術クラスの生徒達なんて、みいんな弟子みたいなもんさ」
少なくとも先生が世間で言われているような、一人で魔術研究に打ち込みたいから弟子をとらない、研究者タイプの魔女ではないことはよくわかったわ。
そうして私は一年次の前期に、必修の授業と併せて魔術基礎の授業を受けることになった。