第八話 魔法実習での惨事
次の授業は魔法実習だった。
魔法実習は広大な学園の広場で、1組から3組まで合同で行われた。4人ずつ班分けをされ、私はラグエル様、ミッシエル侯爵令息、ワイマール侯爵令嬢と同じ班だった。
「マクレイン様、よろしくお願いします。
私のことは『フロレス』と呼んで下さいませんか?」
フロレス様は人懐こい笑顔で挨拶して下さった。
「はい!それでは私のことは『ビアンカ』とお呼び下さい!」
フロレス様、可愛いらしい人!
「はじめまして。マクレイン様。
僕のことは『オリヴァー』とお呼び下さい。」
オリヴァー様も笑顔で挨拶して下さり、班の方々が良い方々で良かったと安心した。
「さあ、今日はスライムボールを1人1つずつ出すので、魔法で破壊してみなさい!」
魔法実習担当のイル先生がそう言い、杖を振るわれると皆の前にブヨブヨとした球が現れた。まるで生きているかのように動き回っている。
「このスライムは動き回るが攻撃はしてこないので安心するように。」
攻撃はしてこないのか……でも、私まだしょぼい魔法しか使えないけど大丈夫かな?
ふと隣をみると、フロレス様が真剣な表情で術を唱えていた。冷たい空気が辺りを覆い、スライムを包み込む。
凄い!フロレス様、かっこいい!
スライムが固まったところで、氷の塊を作り、スライムにぶつけている。それでもなかなか破壊出来ない。
「何で割れてくれないの!」
スライム手強いわね…。
私はまだ氷魔法は出来ないし…。得意といえば風魔法だけど…。どうしようか…?
考え込んでいると、突然近くで炎の爆発が起きた!
ババーーーーーン!!!
「きゃー!!」
辺りが煙で真っ白。
「やりすぎてしまった…!皆、大丈夫か?」
どうやらラグエル様が火属性魔法でスライムを破壊したらしい。
凄い…………けど、びっくりしたーー!
フロレス様も驚かれ、氷漬けにしたスライムが溶け始めている。
「あーーー!もう!」
フロレス様が悔しそうに叫んでいる。
「僕もいくよ!皆離れていてね!」
オリヴァー様はそういうと両手掌を天に向かって上げている。土や石が空中に舞い上がり、両手を振り下ろすと、一気にスライムに向かってそれらが叩き込まれた。そしてスライムは消滅した。
皆すごいわ。私も頑張らなくては!
風魔法で真空の刃があるけど、まだ成功したことないのよね。一か八かやってみよう。
私は詠唱を始めた。私の周りに風が渦をつくる。
「ビアンカ様!頑張ってください!」
フロレス様が応援してくれている。
両手をあげると、風の渦が上に上がり、上空で刃を作り出す。
よし!これをスライムに叩きつけるわよ。
「皆!離れていて下さい!」
両手を一気に振り下ろす。刃はスライムに向かっていったが、スライムが急に早く動いた為にそれてしまった!
「危ない!」
ラグエル様が咄嗟に結界を作り、防いでくれたが、それた刃は、別グループの生徒に当たってしまった!
「うわっ!」
倒れた生徒は………アラン様だった!!
「いやー!!アラン様!!!」
アラン様は右足から血を流していた。
すぐさまイル先生が駆けつけて治癒魔法を施して下さり、その後すぐに医務室へと向かった。
「アラン様ごめんなさい……。」
「アラン……すまなかった……。」
私とラグエル様は何度も謝り、アラン様を医務室へと運んだ。ラグエル様は悪くないわ…私が辺りに注意していなかったから…。涙が溢れて止まらなかった。
「大丈夫だよ。」
アラン様は笑っていた。
本当にごめんなさい……。
アラン様を無事医務室へと運び、呆然としたまま、教室へと向かった。
「それにしてもビアンカ様の風魔法、凄い威力だったね。」
「……ええ。私もあんなのが出来るとは思いませんでしたわ……。」
「……………………………………。」
「大丈夫だよ。コントロール出来るよう、これからもっと練習していこう。」
「…………………はい。」
一歩間違えれば、アラン様を重傷にしてしまうところだった……………!
恐怖で体が震えた。
ラグエル様は震える手をそっと握って下さった。
安心する手だわ……。
2人で教室へ向かっていると、誰かにふいに声をかけられた。
「…随分仲が良いんだね。」
目の前には、ジェラルド・フィロスト第一王子殿下が立っていた。