第七十四話 入れ替わってる!?
「……最近、私おかしな夢をみるんです。」
店主とモリス先生に夢の内容を詳しく説明した。
「……それはビアンカ嬢の現在の様子かもしれないな……。」
モリス先生は考え込みながら言われた。
「私はこの世界に来て、温かい家族や友人に恵まれて、魔法まで使えるようになって幸せなんです。出来れば、このままこの世界にいたい。だけど、夢の中のビアンカは幸せそうには見えなかったわ……。ビアンカと通信したりは出来ないのかしら……?ビアンカの気持ちが聞きたいわ……。」
「「うーん……。」」
皆、黙り込んでしまった。
「……夢の中のビアンカ嬢は辛そうだったか?」
「……辛そうではなかったです。いつもテキパキ動かれていて、所作も綺麗で、とにかく堂々とされていました。私とは大違い……きっと頭のキレる方なのね。」
「それではビアンカ嬢はまだあちらの世界で諦めず頑張っているのではないか?」
「そうかもしれないですね……。」
…山口遼が最低な奴だから、ビアンカが可哀想だわ。だけど、ビアンカならうまく乗り越えてくれるかもしれないわ…。
「……そう言えば、祖父は紙に大きくメモを書いてはよく眺めていました。もしかして、夢の中での通信に使っていたのではないでしょうか?ビアンカ嬢もこちらの世界の様子を夢の中で見ているかもしれませんよ?試してみてはどうでしょうか?」
「……今、やってみましょうか?見てくれているかどうかは分かりませんが……。」
私は白い紙に『ビアンカへ。元の世界に戻りたい?元の世界に戻る方法は知っている?』と書いた。ビアンカがいつ見てくれるか分からないから、公爵家の目につくところにも置いておこう。
…何か返事があるかな…?
「ビアンカ嬢、あまり長くいても営業の邪魔になる。そろそろ失礼しよう。」
「そうですね。ご主人、今日は時間をとって下さり、ありがとうございました。また何か進展があれば来させて頂きます。」
「いつでもどうぞ。でも農作業でいなかったら許して下さいね!」
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「先生、今日は来てよかったです。少しずつ謎が解けて来ましたし…。」
「そうだな。私も今までかなり勉強した方だが、異世界のことは知らなかった。実に興味深い。」
グゥー……
!?
お腹が鳴ってしまった!?恥ずかしいっ!
「お腹が空いたのか?折角だから外食していこう!」
…本当に!?
「はい!嬉しいです!」
…モリス先生と外食する日が来るだなんて!?
先生と下町の食堂に入り、いつもとは違う庶民的な食事をした。とても美味しくて、先生も沢山食べておられた。先生は食材について店主に尋ねたり、他の平民のお客様とも気さくに話されていて、違った一面を垣間見た気がした。思ったより、とても楽しかった。畏まった食事より、こんな食事の方が楽しいわ!
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先生に転移魔法で公爵家のエントランスまで送って頂いた。
「先生、今日は楽しかったです。ありがとうございました。」
「私も良い気分転換になったよ。それではゆっくり休みなさい。」
そう言って先生は優しく微笑み、魔法で帰られた。
…また先生とお出掛けしたいな…。
読んで下さり、ありがとうございました!