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第七十三話 書店にて


 見覚えのある古びた書店が見えて来た。


 …やっと着いた。


 「いらっしゃいま……あっ、君はこの間の子だね!?」


 以前、ジョスト・ワイマール様に取り押さえられてしまった二十代位の店主が嬉しそうに話しかけて来られた。


 「…この間は失礼致しました…お怪我はございませんでしたか?」


 「大丈夫ですよ。僕こそ、いきなり触れようとしてしまい申し訳ありませんでした。それより、また来て下さって嬉しいです。」


 「今日はお聞きしたいことがあるのですが、少々お時間を頂いても宜しいでしょうか?」


 「構いませんよ。この店はお客さんが来る方が珍しい位ですからね!」


 店主はにこにこと楽しそうにこたえた。


 …一体どうやって生活しているんだろう?


 「中へどうぞ。」


 「ありがとうございます。失礼致します。」


 促されるままに中へと入った。書店はこじんまりとしているが、奥は広々としていた。テーブル席につき、店主と話をしていると、奥様がお茶を持って来て下さった。


 !?


 「…これ…緑茶ですか?」


 久し振りに熱い緑茶を飲んだ。とても美味しく、ほっとした気持ちになった。


 「これが分かるということは、やっぱりあなたも異世界から来られたんですね?私の祖父も異世界の日本という国から来たと言っていました。そして、この緑茶は祖父が苦労して探して栽培したものです。お米も作っています。この書店は祖父と私が集めた古書を売っている趣味の延長みたいな店で、本業は農業をしています。祖父は生前教師もしていて兼業農家でした。」


 「…それでは以前私が購入した本はお祖父様のものだったのですね?」


 「そうです。あなたはあの本が読めるのでしょう?」


 「……はい。実は……。今日も持って来ています。」


 そう言って、本をテーブルに置いた。


 「やっぱり読めないな…。」モリス先生が本を手にしながら呟かれた。


 「私も読めないんです。でも祖父は読めて、同じ異世界から来た者なら読めると言っていました。」


 私には普通に文字が読める…只、これは日本語で書いてある。この世界には無い文字なので他の人には見えないんだろうか…?


 「この本は異世界の日本語で書かれています。お祖父様がイジメられっ子だったライランと言う子供に転生してから教師になるまでの過程が書かれています。よく緑茶が飲みたい!米が食べたい!というワードが出て来ますよ!」


 「…ふふっ!そうですか。祖父らしいですね。ライランに転生した話は祖父からもよく聞いていました。でも貴方が現れるまでは半信半疑でした。祖父の話は本当だったんですね。」


 「お祖父様は最後までライランとしておられたのですね?元の世界に戻る方法は探しておられませんでしたか?」


 …元の世界にはやっぱり戻れないのかしら…?


 「…それがよく分からないのですが、本物のライアン自身が自分がいた別世界で幸せに暮らしているし、自分も今の生活に不満はないので、このままこの場所で生きると言っておりました。」


 ………………?


 「それではライランとお祖父様が入れ替わっていたということか?」


 モリス先生は顎に手を当て考え込まれている。そして「…禁呪法というものを知っておられるか?」と問われた。


 「……聞いたことはありませんね……。祖父は教師もしていましたし、魔法にも長けていましたから、知っていたかもしれませんが……。」


 「……ふむ。そうか……。知っていた可能性は大いにあるな……。」


 「…………………………………。」


 …ちょっと待って下さい…!?ということは、私はビアンカと入れ替わっている可能性があるということ!?


 !?


 「あっ!!」


 急に大声を出した私に2人が驚き、こちらを訝しげに見つめる。


 ……もしかして、もしかして、あのおかしな夢は私に乗り移ったビアンカなの!?

 


 

 



 


 

読んで下さり、ありがとうございました!

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